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言葉の宝箱 0149【愛しているからこそ、まちがってしまう。踏みにじってしまう。押しつけてしまう】

『正しい愛と理想の息子』寺地はるな(光文社2018/11/30)


ハセ32歳は陰気な男。相棒の沖は30歳だけど可愛い。
コンビを組む二人は違法カジノで働いていたが、
どんくさい沖はバカラのルールが覚えられず失敗ばかり。
ついに200万の損失を返済するよう迫られ、偽宝石売りを始めた。
漸く200万というところで、騙した女に騙され無一文に。
切羽詰まったハセは商店街にたむろする老人たちを見て閃いた。
32歳と30歳の崖っぷち男二人が騙すのは年寄り。寂しさは利用できる。
歪んだ愛を抱え、ジタバタする悪党コンビの切なく泣ける詐欺師小説。

・どんなに良い人でも、今更他人と暮らすのは気づまり P116

・関係ない。その言葉に、鼓膜の奥がきんと鳴った。
誰に殴られた時より強く、大きく P132

・認められたいという感情は、俺にも理解できる。
誰だって持ってる、ごくあたりまえの感情だ P157

・子どもを愛していない親なんていないとか、
親に愛されたくない子供なんていないとか、
そんなのはたわごとだと思ってきた。
けれども、それもまた違ったかもしれない。
愛しているからこそ、まちがってしまう。
踏みにじってしまう。押しつけてしまう。
俺もまた美しく崇高なものこそが愛だと勘違いしていた(略)
すべての愛は正しくない。正しい愛などというものは存在しない。
この世のどこにも P162

・感情をあらわにしている人間を目の前にすると、
かえって冷静になれるものだ P181

・『お年寄り』なんていう生きものはいない。
それぞれ違う心をもって、
それぞれに違う長い年月を生きてきた人たちがそこにいるだけだ P207

・思いやりだとか親切だとか愛だとか、
そんなあやふやなものに寄りかからずに生きていけるんなら、
私はそのほうがいい。シンプルでしょ? P223

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