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言葉の宝箱 0162【人を愛さない人間なんかいやしない。愛し方が分からない人間はいるがね】

『燃ゆる樹影』藤田宜永(角川書店2009/8/25)

八ヶ岳の麓にある赤松の診察を終えた樹木医の沢村は
自身のホームページを通して知り合った陽子という若い娘を見舞うため、
諏訪湖畔にある病院へ向かった。
和やかな面会の最中、陽子の母親が病室に入ってきた。彼女は20数年前、
愛し合い、片時も離れたくないと思っていた美枝子だった。
運命の再会を果たしてしまった55歳の樹木医と46歳の画廊喫茶の女店主の
情趣豊かな風景の中で燃えあがる恋情を描いた小説。

・心の傷を笑顔に変えることができるようになるまでには、
かなりの時間がかかったのかもしれないが、
苦労の跡が顔にまるで見られないのは、育ちの良さが育んだ、
誇りとおおらかさのせいかもしれない P59

・見たくないものを見ないようにできる術を心得た P69

・女っていうのは、ものに凝らない生き物 P89

・孤独を友にしてしまえば、自由を手にすることができる。
そうすれば、社会と繋がっている紐をゆるめて、
その日、その日を好きに生きられる P90

・世の中には上手な恋というものもある(略)
不器用な恋だけが本当の恋だとはまったく思わないが、
不器用な恋は若いときにやることだ P101

・遠い間柄の方が、本音を語れることがあるもんだよ P196

・興味がなければ残酷なことが平気でできる P203

・掛け替えのないものとは、
言い方を変えれば、どうしても失いたくないものである。
しかし、生活の手段、家族を養っていくための金は、
掛け替えのないものとは言わない。必要なものというにすぎない P248

・人を愛さない人間なんかいやしない。
愛し方が分からない人間はいるがね P278

・恋は日常に殺されていくものなのかもしれません。
しがらみを抱えた私の年代の恋は、
特にそういう運命にあると思います P383

・人は、老いることで、死から生を見るようになる場合がある。
体験しようのない死だが、
勝手に想像を巡らせ、死を我が物にしたような気分になり、
それでもって心を鎮められることもある P388

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