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優しさが詰まったホスピスに適応できない母。

「ここでたい。うっとおしい」

ほとんど聞き取れない声で母がそう訴えたのは、ホームホスピスに移って半年のことでした。

「みんないい人、親切すぎて、息が詰まる。」

なんじゃそりゃ。
前の施設で嫌な思いをした母に、必死で探した施設、ここならきっと大丈夫。そう思って選んだ施設です。

部屋は狭い、しかし〝おーい〟と声をかければすぐ誰かが飛んできてくれる。

台所のトントンと言う音が聞こえる。

誰もが優しく声をかけ、そしてそばに寄り添ってくれる。

こんな温かい場所で死を迎えられたらどんなに幸せだろう。

全ての〝よかれ〟が詰まった場所でした。 


ただ、その〝よかれ〟の嵐は私にとってはすごくしんどく重かったのも事実です。


まさか、母もそれを感じていたなんて。

勝手に介護が必要な母=弱者で優しさが必要
と思い込んでいた自分に気づきます。

よく考えてみれば、母は自由な人で、1人を愛し、孤独を楽しむ人です。

しかし、ここへの引っ越しは姉を説得し、沢山の申請をし、本当にハードな引っ越しだったのも事実です。

住所、保健証、介護保険証、指定難病申請書、障害者手帳、かかりつけ医、在宅医、ケアマネージャー、デイサービス、薬局、、、、


書ききれないほどの手続きがあります。

そして何より、遠い。
私の家から1時間半、遠いです。

姉に、「母ココでたいって言ってる、どうしよう?」と相談すると、すごく真っ当な答えが返ってきました。

  • 前回も半年で移動した、きっと半年くらいで嫌なところが見えてくるのでは?

  • あなたは改善病、ベストなところなんてない。これだけ考えて良いと思ったなら一度は信じてみるべき

  • 母は息が詰まるというが、それくらいケアが必要になった〝自分〟を受け入れるべき

  • 自宅で介護するわけじゃないんだから何か諦めなきゃいけない

あなたがこんなに必死で向き合ってるのよ、悪いところもあるだろうけど、良いところもたくさんあるんじゃない?

あのしんどい引っ越し、またやるの?他に良いところなんてあるの?

そんなところがあったら、ここに来る前にあなたが見つけてるって。

半年間、母の施設のことを考えることを禁止されました。禁止するくらいにしないと、私がまた、答えのない施設探しにのめり込むことを姉は知っているのだと思います。
姉なりの優しさです。

あぁ、介護って難しい。
あぁ、終の住処って難しい。

半年後、私はやはり動き出すのでした。

つづく

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