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Q.行政書士を取ったら、何年か事務所勤めで修行をして、実務を覚えたら開業したいです。

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Q.行政書士を取ったら、何年か事務所勤めで修行をして、実務を覚えたら開業したいです。

現在行政書士を目指して勉強中の者です。試験に合格したら、行政書士事務所に勤務し、実務を覚えたら早めに独立開業したいと考えています。行政書士の求人はどこで探せばよいでしょうか?

行政書士事務所に就職するのは難しい
結論からいえば、行政書士事務所の就職口を探すのはかなり難しいというのが現状です。

私も平成14年の大学在籍中、幸運にも行政書士試験に合格することができ、就職活動の際に行政書士事務所を探したのですが、各種の就職情報サイトに行政書士事務所の採用情報はありませんでした。実際のところ、新卒採用はもとより採用そのものを行っている事務所が極めて少ないのです。

そして、採用活動も縁故を中心に行う事務所が多く、行政書士事務所の求人に巡り会うことは極めて希です。もし仮にあるとしたら数多く発刊されている求人情報媒体などよりも、ハローワークなどの求人情報機関のほうが就職先に出会える可能性は高いといえます。

どちらにせよ、試験合格後、事務所に数年勤務して実務を覚え、独立開業するというキャリアアップは理想的ではあるのですが、現実的ではないといえるでしょう。さらに加えていえば、行政書士事務所の給与や福利厚生はあなたの想像よりもよいことが少ないのが現状です。

行政書士事務所の給料は、月給で20万円を切る事務所も比較的多く、「それなりの給料をもらいながら実務の勉強をして、独立に備える」というのは、広大な砂漠で一粒のダイヤモンドを見つけるような確率だと考えたほうが、現実的な行動ができるといってもよいくらいです。

もしあなたが理想とするような行政書士事務所に就職できたとしたら、それは本当に幸運だと思ってください。

社会保険労務士、税理士事務所は比較的門戸が開かれている
これに対して、社会保険労務士や税理士事務所は比較的求人募集があるといえます。

社労士事務所、税理士事務所の採用に特化した求人情報サイトもあるくらいです。そのため、社会保険労務士、税理士でキャリアアップしたいという場合は、地道に求人情報を探すことによって就職が可能です。

しかしながら、専門スタッフの場合、未経験・無資格で誰でも入所できるというわけでもなく、税理士事務所なら簿記1級など一定の資格や具体的な経理経験などが問われます。そのため、縁があったとしてもすぐ職に就けるわけではないことは事前に押さえておきましょう。

特に税理士事務所の場合は、税理士試験を受験しながら税理士事務所に勤務し、数年経ったのち独立開業するのが一般的なので、事務所それぞれの状況にもよるものの、退職から独立開業への流れは、一般の企業よりはスムーズに行く場合が多いといえます。

ところで、あなたが就職する前にぜひお伝えしておきたいことがひとつあります。それは、「実務を覚えたらすぐに独立開業したい」と考えている点についてです。

私たち士業は、日々法改正や手続きの運用の変更などに追われ、その中で実務の能力を高めています。時にたったひとつの案件に数日かかってしまうこともあるでしょう。何年もかけ、あるいは何百万円という自己投資をし、知識や経験を積み重ねてきているのです。そして、もしあなたが就職すれば、どこの事務所でも先生が丁寧に教えてくれるでしょう。「実務を教わる」ということは、そういった先生方の知識と経験をもっとも効率よく教えてくれるということです。もし事務所に就職できたら、先生方はそういった「知恵」をあなたのために分けてくださっているということをぜひ理解して聞いてほしいのです。少なくとも、「教えるのが当たり前」とは多くの士業は思っていないはずです。

それでも「仕事の内容は上司が教えるのが当たり前」と思うのであれば、独立開業した後、「実務だけ覚えたら早く辞めて独立したい」というスタッフに気持ちよく仕事が教えられるか考えてみてください。おそらく、私が伝えたいことがわかってもらえるはずです。

実務は独学で習得可能である
社労士や税理士などとは異なり、研修や実務経験が開業要件ではない資格の場合、士業の仕事をやったことがなくても、開業することが可能になります。行政書士がその典型例です。

この行政書士を例に挙げましょう。このように就職が難しく、実務経験を積める機会に恵まれない士業はいったいどうしたらよいのでしょうか。正解は「実践する中で覚えていく」です。しかし、まったく実務の経験がなくても、本当に仕事ができるようになるのでしょうか?

いうまでもなく、実務経験なしにはできない仕事もあります。しかしながら、見方を変えれば経験がなくてもできる仕事はあるのです。実際、私が23歳で開業した当時がそうでした。

社会人経験もほとんどない状態にありながら、それでも会社の設立手続き、車庫証明、宅建業の免許申請、内容証明、契約書などの仕事をこなしてきました。

結論をいえば、未経験でも真剣に勉強し、取り組めば実務は独学で学ぶことが可能です。ここでの回答の最後に、独学で実務を学ぶ場合の注意点をいくつか挙げておきます。

ポイントは3つです。

ひとつ目は相談できる同業者の先輩、仲間をつくっておくこと。書籍だけの情報や知識は、劣化していることも多く、最新の情報でないことも多いといえます。そのため、最新の情報を押さえたり、イレギュラーなケースを相談したりするために、同業者のネットワークをつくっておきましょう。

ふたつ目は役所に指示を仰ぐこと。独自の判断で書類を作成するよりも、できる限り役所と相談しながら書類をつくる習慣をつけると間違えのない書類作成ができます。担当者の名前もおさえて「言った、言わない」の水掛け論にならないように配慮することも重要です。

最後のポイントは、本だけでなく研修を受けることです。各書士会などでは必ず研修を実施しています。法律や手続きは毎年変わるものですから、いつでも生の情報を入れられるように研修で情報を仕入れておくことが肝要です。

以上の3つのポイントを押さえれば、難解な実務を除けばできるようになります。法律は基本的には答えのある世界です。ぜひ怖がらずに実践してみてください。

【POINT】各士業によって、就職の状況は異なるので事前に調査をしよう。実務は独学でも真剣に取り組めばできるようになるので、諦めず取り組んでみよう。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

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