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若手・中堅社員が描く読売新聞の「未来予想図」

 こんにちは、人事部の城殿恵です。読売新聞は2024年で創刊150周年になります。それに合わせて、若手・中堅社員たちが約1年かけて、働くうえでの心の拠り所になるものをまとめる活動をしてきました。全社員アンケートをしたり、役員に話を聞いたりして、社員や経営層が大切にしている価値観を聞き取りました。そうした思いを文章にして、1月には「読売行動指針」と名付けて公表しました。内容はずばり、「新聞社を超える新聞社を目指す」というものです。活動を振り返りつつ、その意味するところをお伝えしたいと思います!


1:暗中模索

 読売新聞では入社10年目に研修を行い、その中で未来の読売新聞についてグループディスカッションをすることが慣例となっていました。今回の取り組みは、その延長として、2024年が読売新聞の創刊150周年にあたることから、未来の読売新聞のあるべき姿を会社や読者、関係者にも広く伝えてみてはどうだろうか、という有志の考えがきっかけでした。

 そして、23年2月、同じ考えを持つ仲間がいろいろな職場から集まりました。メンバーは若手・中堅の14人で、会社からもお墨付きをもらって日々の仕事と並行して議論を始めました。2013年入社の私もそのメンバーに加わりましたが、当初はどんな方向を目指すのか、どこまで会社に提言するのか、対外的に公表するのかなどはまったく決まってなく、暗中模索だったことを思い出します。

2:経営層とのディスカッション

 そんな中、転機になったのは4月下旬、山口寿一・読売新聞グループ本社社長ら経営層に自分たちの考えを伝える機会を得たことでした。部数の減少傾向やフェイクニュースの氾濫、生成AIの出現による虚実の境目がわからなくなる混沌とした社会を前に、新聞社はどうあるべきかーー。山口社長からは、会社の歴史とともに、歴代の経営者たちがいかに危機に立ち向かい、どのような行動をとったのかを解説してもらいました。負の側面に目を向ければ様々なことを語ることもできますが、逆に、そうした世界、社会情勢であるからこそ新聞社の価値は高まるのではないかと感じました。山口社長ら経営幹部の方々が、私たち若手・中堅からの質問にもフラットな立場で応じてくれ、実りある対話となりました。

 以降、全社員を対象としたウェブ・アンケートを実施し、①働くうえでのモチベーション②会社の好きなところ③会社の課題ーーなどを尋ねました。短期間の聞き取りで、強制ではないにもかかわらず、全社員の約半数にあたる2000人以上が回答してくれました。役員計17人にもインタビューし、大切にしてきた価値観などをざっくばらんに語ってもらいました。先行事例の研究として、経営ビジョンなどの策定をボトムアップで行った住友商事、三越伊勢丹ホールディングス、九州電力、阪急阪神ホールディングスなどにも赴き、担当者から話を聞かせてもらったことにも、大いに勇気づけられました。
 夏にはメンバーらで1泊2日の合宿を行い、お酒の力も借りて、夜中までそれぞれの生き方、働き方、これからの会社について時に楽しく、時に熱く語り明かしました。

メンバー同士で「大切にしたい価値観」などを話し合った夏合宿の一コマ。付箋にはその後の検討で重視されることになったキーワードがいくつも並んだ

3:見えてきた「行動指針」

 秋までに多くの議論を重ねる中で、会社の目指す姿、あるべき姿、社員の大切にしている価値観というものが、キーワードとして浮かび上がってきました。大別すると11個あり、中でも、「挑戦」「信頼」「謙虚」というものを多くの社員、役員が大切にしていることもわかりました。

 多くの企業では経営理念やミッションが定められています。読売新聞で言えば2000年に制定された「読売信条」がそれにあたります。自由主義、人間主義、国際主義に基づき、公正な報道と責任ある言論への決意を示したものです。毎年1月1日の朝刊に掲載されているので、見たことがある人もいるかもしれません。

句読点を含め103文字からなる「読売信条」

 読売信条は会社としての考え方、存在意義、経営理念を指すものです。これに対し、私たちが策定したいと考えていたものは、社員が行動する時に拠り所にする価値観でした。メンバーの中では、こうした考えをリンゴの木に例えて、木の幹は読売信条(ミッション)であり、そこにリンゴ(木の実)を実らせることが会社のあるべき姿(ビジョン)であると考え、それを生み出す根っここそが、大切にしたい価値観(バリュー)であると整理していきました。
 そして、多様な価値観は木の根っこから幹を通り、樹冠に送られて多くの木の実をつけ、より多くの人がこれまでにはない利益を享受できるーーそんな共通認識を持つことができました。

 読売新聞では、野球のWBCを始め、将棋の竜王戦、よみうりランドやその周辺で進められている「TOKYO GIANTS TOWN」(東京ジャイアンツタウン)構想、新聞とデジタルの双方に力を入れる「新聞withデジタル」など、21世紀に入ってから新たな価値を読者や関係者に享受してもらえるよう、総合メディア企業として進化を続けています。メンバーでは、こうした取り組みの一つ一つこそが、「新聞社を超える新聞社」であるという結論に至り、考えを文字にしてまとめる草稿作業に取り掛かりました。

4:発表、そして浸透へ

 冬に入り、「挑戦」「信頼」「謙虚」という3つの価値観と、残り8つの価値観(誠実、敬意、自律、つながり、相互理解、好奇心、自己成長、公私の調和)を言葉に落とし込んでいきました。
 新聞社だけではなく、関連会社計約150社の社員とも思いを共有したいと考え、「読売行動指針」と名付け、グループ全員の力で新たな価値を生み出す決意を前文に込め、推敲を重ねました。前文と6項目からなる指針が完成した頃には、年の瀬を迎えていました。

共に行動することを念頭に置き、「〇〇しよう」という呼びかけが多用されている

 私たちは24年1月5日に発表会を行い、その模様は全社に中継されました。仕事が忙しい時も、同じ職場の仲間が活動をサポートしてくれてこの日の発表会にまで漕ぎづけることができました。あらためて、会社の仲間には心から感謝をしています。そして、11か月余りの活動を通して、社内にこれまでの縦(職場の先輩後輩)、横(同期入社)だけではなく斜めの関係ができたことが、私にとっては大きな財産となりました。苦楽を共にした他の13人のメンバーとの友情は私の宝物です。今回の「行動指針」が読売新聞グループに根っこを張るように浸透し、「新聞社を超える新聞社」と言われるような壮大な各種取り組みが実るよう、私も人事部の立場から応援し続けたいと思っています。さぁ、行こう!

皆が緊張して臨んだ発表会の様子(24年1月5日、東京・大手町の読売新聞ビルで)

人事部・城殿恵