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「コーダ あいのうた」(シアン・ヘダー監督、2022年日本公開、アメリカ・フランス・カナダ合作)

豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるがー


『虫眼とアニ眼』(養老孟司、宮崎駿)という本で宮崎駿が「官能性」って話をしてるんです。彼の言う官能性ってエッチだとかエロいとかそういうものではなくて、例えば、アニメーションの中で、女の子が素足で森の中を走っているとして、女の子が感じているであろうその土の冷たさとか、風を感じて走っているとか、見ている人がそういうことを感じられるということが官能性だと。

それでですね、この『コーダ あいのうた』という作品にはたくさん官能性が込められていました。その中でも2つ。


その①「声、歌声、音楽といったものを、振動、響きとして主人公たちが感じている」官能性

主人公の家族が、主人公以外全員聴覚障碍者ということもあり、「音」というものが映画の大切なテーマになっていて、音というものが「振動」だということをものすごく新鮮に感じることが出来ます。背中を通じて響く音、ケツに響くベースの音、その振動がどのようにそれぞれのキャラクターに伝わるのか、また、その振動がそれぞれのキャラクターに与えている感情はどういったものなのか。振動による官能性の表現が凄まじい、素晴らしい。 


その②「聴覚障碍者と健聴者との間の壁を乗り越えようとする」官能性

聴覚障碍者は耳が聞こえない、声が出せない。何がどうなっても健聴者との間には、音を聞く、発するというところに壁が存在します。それはどうすることも出来ない、として、この映画ではどうやってその壁を乗り越えようとするのか。何故その壁を乗り越えようとするのか。詳しくは…書け…ない…泣く…


あとは、フレッシュな水に触れる官能性とかも綺麗に描かれてました。もしかしてもしかすると、その感覚の呼び方は違うかもしれませんが、監督も官能性を一つのテーマとして映画を作ったのかなぁ、なんて。実際に映画を見た方は、いやそっちの官能性もありましたやん!!!とかツッコんで欲しいです。

音がこの映画の大きなテーマになっていることは明らかですから、ツイッターでフォローしている方もつぶやいてましたが、是非是非映画館で観ないともったいない作品でございました。


今年、一番、泣きました。


(了)

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