見出し画像

涙の理由は一つじゃない それが夏なら尚更だ

今年も夏がやってきた。

夏が来れば冬がいい。
冬が来れば夏がいい。

そんな思考がこの先ずっと続けばいなと思う。

その思考はとても有難いことで、夏から冬、冬から夏の6か月間を

楽しく過ごさせてくれる。

何事も、楽しみがないとやっていけないのが僕の性格。

逆に言うと、楽しみがあればどんなことも乗り超えられる。


僕の楽しみはいろいろあるけれど、

やはり大切な人に会えることが僕の幸せなのだと
この季節はより感じる。


僕も彼女も決してアクティブではないけれど、今年は夏祭りにやってきた。

彼女と夏の思い出を作りたいと思うことは必然なのだ。

駅で待ち合わせをして、川沿いで開かれる夏祭りに歩いていく。

彼女は見慣れないポニーテールだった。服装はいつも通りのお嬢様感満載の綺麗めファッション。

隣を僕が歩いていいのかと時々思うが、それを掛け替えのない幸せだと捉える。


祭りはやはり人込みでごった返していた。

僕らは手繰れないように、しっかりと手を繋ぎながら歩く。

何か欲しいものはないの?

買ってあげるよと、人混みでも聞こえるくらい、大きな声で言う。

彼女は静かに微笑みながら、首を横に振った。

それよりも、この先にある神社に行きたいようだ。


祭りなら金魚や水風船、美味しい食べ物が多いのに、彼女はなにも望まなかった。

僕もそこまで欲が多いわけではない。ましてや祭りなら尚更。


10分ほど歩けばすぐに神社に着いた。

神社の横にある公園のベンチに二人で座る。まさかこんな日がこようとは、大学入学時には思わなかった。

彼女はまた静かな笑顔で、祭りの灯りを見ている。

楽しいのかなと不安になりながら、

本当に何か欲しいものはないの?と問いかける。

すると、彼女はこちらに振り向き、また僕の大好きなその笑顔で微笑んだ。


こんな日々が永遠に続けばいい。そう感じた。

この人を失いたくない、必ず幸せにしたいと、初めて思った。

目の前が暗闇に包まれ、再び灯りが目に差し込んだ時には、彼女が泣いていた。

きっと、幸せの涙なのだろう。

僕も泣いていた。


#夏祭り #夏 #小説 #ショートショート #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?