3月上旬発売予定の新刊の未収録原稿の一部をご紹介いたします(第2回)

すべての部下を自分の先生にする

 人は誰しも得意分野を持っています。
 たとえば、ご自分のチームのメンバー1人1人のことを考えてみてください。
 エクセル関数に詳しい人、デザインセンスがあって魅力的なプレゼン資料を作れる人、ある特定の商品に非常に詳しい人など、さまざまな人がいるのではないでしょうか。
 その人たちから教えてもらいましょう。
 先生になってもらうのです。
 たとえば、A君は「エクセルの先生」、B君は「パワーポイントの先生」、Cさんは「文章作成の先生」、Dさんは「飲食業界の先生」など、部下をどんどん自分の師にしていきましょう。
 このようにしていくと、部下のことを自然に肯定できるようになります。
 ただ、そうはいってもなかなか長所を見つけづらい部下もいるでしょう。
 そのような部下に対しては、業務の一部分、あるいは業務にはつながらないけれど、人柄など、ご自分から見て「いいな」と思う部分を探すようにしましょう。
 人は自分のいい部分を認めてくれる人に対して好感を抱き、その人のためにがんばろうと思うものです。
 そのためにも、リーダーは部下を先生にするべきなのです。
 たとえば、私は会社員時代、次のような先生がいました。

----------------------------------------
・資料の間違いをチェックしてもらうなら「石山君」
・為替のことで困ったら「島村さん」
・宴会の進行役なら「柳田さん」
・モチベーションが落ちている人を見つけてそっと教えてくれる「平野さん」
・それぞれの目的に合ったいい飲食店を知っている「田村さん」
・スポーツの話題に詳しい「長谷部さん」
・ちょっと最近食べすぎているなと思ったら栄養士の資格を持っている「八田さん」
・最新のSNSのことを教えてもらうなら「内藤さん」
・取引先に手土産を持って行きたいときは、スイーツに詳しい「伊藤さん」
----------------------------------------

 こうすることで、先生にされた部下にとってもメリットがあります。
 人に教えることは学ぶことでもあります。
 人に教えることで、頭の中が整理され、その人自身の理解が深まります。
 かつて私はミーティングのときに部下全員に「先生役」をしてもらっていました。
 ベテラン、若手を問わず、エクセルやパワーポイントの使い方、営業で相手を饒舌にさせる雑談のテクニック、相手の沈黙への対応方法、商品知識などをそれぞれ得意な人に教えてもらっていました。
 こうすることで全員が主体性を持つようになるので、チーム全体のモチベーションも上がります。
 実は、このチームの全員を先生にするという方法は、幕末にも行なわれていました。
 吉田松陰の松下村塾がそのような指導方法をとっていたそうです。
 のちに内閣総理大臣となった伊藤博文や山縣有朋など、松下村塾が多くの偉人を輩出しているのを見ると、「人に教える」ということは教える人自身を大きく成長させるということがよくわかります。

(3月上旬発売予定 リーダーは9割任せる! 吉田幸弘)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?