存在を知らなければ、恋に落ちることもできない

友人のアリスは顔が可愛い。性格も良い。とても魅力的な女性だ。

だけど、彼女は22歳~29歳まで7年間も彼氏がいなかった。

共通の友人たちはみんな

「なんでアリスはいい子なのに彼氏ができないんだろー?」

と首を傾げた。

けれど、私はアリスに恋人ができないのは不思議なことではないと思っていた。

社会人になってからのアリスは、極端に異性との出会いが少ない生活をしていたからだ。

特にここ数年の彼女は、半年に1人ペースでしか異性と出会っていなかった。

もしもアリスが年間30人の異性と出会っていて彼氏ができないなら、私も「なんでこんな素敵な子が?」と首を傾げただろう。

だけど、出会う異性の数が少ないぶん、恋人ができる確率も低い。なんていうか、当たり前のことだと思う。

半年に1人ということは、1年で2人。3年で6人。

アリスの存在を知る異性の数は、とてもとても、少なかった。

いくらアリスが魅力的な女性でも、世の男性のほとんどは、彼女の存在を知らない。知らなければ、恋に落ちることはできない。

どんなに面白い本でも、その本の存在を知らなければ「読もう!」と思うことすらできない。

◇◇◇

考えてみてほしい。

中学生の頃、同じクラスに異性は何人いただろう?

私の学校は人数が多かったので、たぶん17人くらいいた。

じゃあ、その中で「好きな人」はいただろうか?

これは個人差があると思う。私の場合は中2で不登校になっているので正確なことは言えないけれど、おそらく3年間通っていても、「好きな人」は1人くらいだと思う。

毎年クラス替えしたとして、51人と出会って1人。二度以上同じクラスになる男子がいることを考えても、40人くらいとは出会う。好きになれるのは、その中で1人くらいなのだ(あくまで私の場合です)。

仮に「40人と出会えば1人くらいは好きになれる」としても、「40人と出会えば彼氏ができる」とは限らない。

「好きな人に好かれるかどうか」は、個人のスペックもあればタイミングもある。それに「好きじゃないけど告白されたから付き合う」パターンもあるので、「X人と出会えば彼氏ができる」という確率論は極めて難しい。

だけどやっぱり、4人と出会うのと40人と出会うのでは、彼氏ができる確率は変わってくるんじゃないだろうか。

◇◇◇

話をアリスに戻すと、一年ぶりに再会した彼女には恋人ができていた。

転職した先で出会いがあったのだ。

私はアリスに「良かったね」と言った。

ふと、思う。

「良かったね」と祝福されるべきなのは、アリスだけじゃない。アリスの彼もだ。

もしもアリスが転職していなければ、彼は同じ市内に住んでいながら、彼女の存在を知ることはできなかった。当然、恋をすることもできなかった。

みんなが「なんでアリスには彼氏ができないんだろー?」と首を傾げていた7年間、「出会えない」のはアリスだけじゃなかった。

彼もまた、アリスに出会えてはいなかったのだ。

「アリスの存在を知ることができた」というのは、彼の日常に突然訪れた奇跡のような幸運じゃないか。

その人の存在を知らなければ、その人と恋愛をすることはできない。

ということは、すべての恋人たちはまず「相手の存在を知る」という幸運に恵まれたのだ。それって、なんて尊くて幸せなことだろう!

ブラーボー!

心の中ですべての恋人たちに祝福の拍手を贈った。

アリスはワインで真っ赤になっていた。きっと、私はそれ以上に真っ赤になっていたことだろう。

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吉玉サキ

ライター・エッセイスト/著書『山小屋ガールの癒されない日々(平凡社)』http://urx2.nu/Vmkr 複数のwebメディアで執筆中/有料記事は知人に読まれたくないものであり、有益な情報とかじゃないです/お仕事のご相談はsaki.yoshidama@gmail.com

何度も読み返したい素敵な文章の数々vol.10

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