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幸福の哲学 ~どうすれば人は幸福になれるか~

デザイナーの吉川雅彦(@masahiko888)です。最近は「Pen」という「行程表をテンプレートから簡単に作成できるサービス」を作りました。

この記事は、私が4年間に読んだ本・論文・経験をもとに、自分なりに「幸福とは何か」「幸福になるためにはどうすればよいか」をまとめたものです。

なぜ幸福をテーマに考えるか

私たちがやっていることを抽象化していくと、すべて「幸福になるため」だと思っているからです。

「お金がたくさんあれば幸福になれる」「夢が叶えば幸福になれる」のように、ある目的を達成すると幸福になれると思っている人が世の中にはたくさんいます。しかしそれは正しいのでしょうか。

2つの幸福

幸福を英語でいうとき、2つの言葉があります。

  • ハピネス

  • ウェルビーイング

ハピネスは一時的なものに近く、ウェルビーイングは持続性を重視した言葉です。WHO(世界保健機関)の定義では、“健康・幸福(ウェルビーイング)とは身体的・精神的および社会的に良好な状態であって、単に病気ではないとか、虚弱ではないということではない”とされています。

幸福(ウェルビーイング)な状態になるには

  • 幸福感を上げる

    • 快楽を増やす

    • 没頭を増やす

    • 意味・意義のあることを増やす

    • ポジティブな関係性を増やす

    • 達成感を増やす

  • 不幸感を下げる

    • 現実を良くする

    • 理想を下げる

    • ネガティブ感情を抑える

「幸福になる」ためには、このように分解していけると考えています。

「快楽を増やす」は分かりやすいと思います。友人とおしゃべりしたり、お風呂でゆっくりしたり、好きなテレビを見たりなどです。

幸福感を増やすためには「快楽」「没頭」「意味・意義」「関係性」「達成感」のそれぞれを増やしていけばよいわけです。これらの5つはポジティブ心理学でいわれていることです。

この5つの分け方ではなく、「快楽とやりがい」や「短期的な幸福と長期的な幸福」のような2つの分け方もよく見ます。

ちなみに、具体的に何をすれば幸福になるかは参考文献も多いですし、色んな本を読んでみることもオススメします。一冊オススメするとすると、『実践ポジティブ心理学』をオススメします。

また、深津さんの記事も大変参考になります。具体的に何をすればいいかがまとまっています。

幸福になろうとするときの注意点

上記のように5つのことをバランスよくすべて満たせれば幸福になるかというとそうでもないようです。なぜなら、心が健康的であることが前提だからです。

心が健康的ではないとはどういうことでしょうか。認知の歪みなどが起き、過剰に不幸感を感じている状態だと思っています。特に「自分は悪くない。相手が悪い」と他責になっている状態でもあります。これを変えるためにはカウンセリングなどを受けることが大事です。

ちなみにカウンセリングに似たものにコーチングがあります。コーチングは、コーチに導かれながら自分で答えを見つけていくもので、心が健康的であることが前提です。心が健康的でない場合に受けるものはコーチングではありません。

では、カウンセリングを受けなければ治らないものなのでしょうか。私はそうではないと考えています。逆にカウンセリングを受けても自分から行動しなければ何も変わらないこともあります。

ではどうすればいいかというと、「不幸感を下げる」です。これは最初の画像に提示した「幸福感を上げる」と対になっていたものです。

こんな経験はありませんか? たくさんのいいことがあっても、1つの不幸なことですべて台無しになってしまう経験です。例えば、よい家に住んでいて年収も良くて妻とも子どもともうまくいっているけど、仕事で人間関係ですごく傷ついている。そんな状態です。1つの不幸を埋め合わせるためにはその5〜6倍の幸福がないと埋め合わせられないといわれています。また、配偶者の死別や離婚など、世の中のイベントの中でもストレス上位をしめるイベントなどもあります。

では、どのように不幸感を下げればよいのでしょうか。

不幸感を下げるには

初めに断っておきますが、不幸感を下げることはとても難しいのです。外的要因(お金があるとか地位が高いとか)ではなく、内的な意識の変化が必要だからです。

不幸な状態とはどういう状態でしょう。理想と現実のギャップがネガティブ感情を生み出し、それが不幸感に繋がっていると考えています。ちなみにこのギャップは「課題」や「問題」といわれています。

これらを解消するためには、「現実を良くする」「理想を下げる」「ネガティブ感情を抑える」の3つが重要です。

現実を良くする

まず多くの人が考えることが、現実を良くする方法です。理想に手が届くと幸福になれると思っています。だから現実を良くします。「筋トレをする」「お金を稼ぐ」「頭を良くする」「昇進する」などです。

これは一見正しいのですが、落とし穴があります。

現実を理想まで持っていくと、今度は次の理想が芽生えることがほとんどです。特に承認欲求などで起こりがちです。また、企業が新しい製品を出すたびに欲しくなってしまう物欲もそうです。

理想を求めて現実を良くすることは大事です。それは否定しません。ただ、それだけではダメなときもあるということです。そこで、「このままでもいいんだ」と思えることも大事になってきます。それが「理想を下げる」ことです。

理想を下げる

多くのビジネス書では「人と比べるな」「自信を持つことが大事」などと書かれていますが、私からいわせれば「それができれば苦労しない」です。

ですので、なるべく再現可能なことを以下に書きます。

  • SNSをやめる(比べることをやめる)

  • 成功体験を積み上げる(自己肯定感を上げることに寄与する)

  • 親しい友人を作る(自己肯定感を上げることに寄与する)

  • カウンセリングを受ける(認知の歪みを治す)

  • 異質なものに触れる体験をする(世の中の現実を知り視野や懐が広くなる)

これらは難しく時間のかかるものが多いです。これ以外にも方法はあるのでしょうけど、なかなか参考文献も見当たりません。

また、理想を下げることと少し違いますが、考え方次第で問題状況自体を消滅させてしまうことも有効です。

なんにしても、色んな体験の積み重ねをして、心で感じる部分に変化を起こすことで、理想を下げていきます。

ネガティブ感情を抑える

根本的な解決にはなっていないですが、即効性があるものもあります。それが「ネガティブ感情を抑える」です。

例えば以下のようなものです。

  • アンガーマネジメントを行う(ネガティブな感情が芽生えないようにする。若干、対処療法的な感じはする)

  • 良かったこと日記をつける(1日の終りに3つの良かったことを書く)

  • サイコセラピーを受ける(私もよくわかっていません……)

  • 強みなどを思い返す(レジリエンスマッスルをする)

  • ストレス発散を行う

不誠実なやり方でネガティブ感情を抑える

上記で記したやり方はしごく真っ当なやり方です。しかし、「理想が高過ぎる」もしくは「理想を叶えるスキルが低い」場合、安易で不誠実なやり方で不幸を埋めようとする人が出てきます。

依存したり、犯罪を犯したり(窃盗や浮気)、嘘をついたり(承認欲求のため)、人を馬鹿にしたり、他人への要求が多かったりなどがあります。

これらは楽にストレスから解放され、楽に幸福が得られます。例えば、「人を馬鹿にする」ということは相対的に自分が上だと思う行為です。承認欲求などはすぐに満たしやすいです。そのため、スキルが低いことが原因の場合、根本的な解決をしなければまた同じことを繰り返す可能性があります。

幸福感に関わる性格因子

何度か「心」という言葉を使いました。それに似た概念で「性格」があります。不幸になりやすい性格、幸福になりやすい性格というものがあると考えています。性格には5つの因子で決まると心理学ではいわれています。その中でもっとも幸福感に影響を与えそうな因子が情緒不安定性(神経症傾向)です。

感情的になりがちで情緒が安定しない、何にでも神経質になってしまう。そんな性格のことを指します。なんでも気にしがちで、常にストレスを感じてしまう状態にあります。この性格は、何万年も前、動物などの敵の驚異にさらされていたときであれば意味のあったものですが、現在では情緒不安定性が高すぎてもあまり意味のないことだといわれています。高いことのメリットとしては、仕事に役立てられるなどです。何にでも気にしがちということは細かいことに気を配れることなので、それが向いている仕事につけると給与が多くなり相対的に不幸を埋められる可能性はあります。

しかし、やはり情緒不安定性は低いほうが良いと考えています(極端に低いのも問題らしいですが)。「私が不機嫌なときは話しかけないでほしい」「電車の吊革には触りたくない」などの欲求(理想)が人より高くなるうえに、現実をどうにかする術もあまりないからです。

性格は、半分が先天的に決まり、半分が後天的な環境で決まるといわれています。後天的な環境も、子どものころの環境が大きく関わり、大人になってから変えるのは難しいです。ほぼ変えられないといってもいいでしょう。もし変える場合でも10年や20年はかかってしまうでしょう。

ですので、根本的に変える(性格を変える)のも手段のうちのひとつですが、その他の部分で補っていくのも大事になります。また、性格が変えられないのであれば、性格特性が発現しない環境に身を置くのも手です。たとえば、イライラする人とは縁を切るなどです。

幸福感・不幸感は伝染する

幸福感・不幸感は伝染します。つまり一緒にいる人を選ぶときには不幸感であふれている人と一緒になると自分も不幸になってしまう可能性が高いです。

幸福度は生涯変わらない?

「幸福感は実はずっと変わらない」という研究結果もあります。快楽順応といって、生物学的特性により、幸福感は生まれ持ってレベルが決まるというのです。幸福度が10段階中8の人は、起伏はあれど、まるで空調システムのように8に落ち着きます(ちなみにここでいう幸福はハピネスに近いと思います)。

例えば、配偶者の死や離婚などは、ストレスのかかる上位のライフイベントです。回復しない場合もありますが、大体の場合は回復します。大きな怪我をして足を失っても、それに慣れていくので幸福度は元通りになります。宝くじで大金持ちになっても同じです。

それでは私たちは何をしても無意味なのか? そうではないと考えています。例えば明確に幸福度と相関関係にあるものもあります。幸福・不幸が元に戻ってしまう例を以下にいくつか提示します(ウェルビーイングというよりハピネスに近いものになります)。

例えば騒音。騒音のようなものがずっと続く状況は次第に不幸になります。

例えばブータン。ブータンが幸福度が高いのは、他との比較をしなかったからだといわれています。

例えば年収。ある一定の年収までは一次関数のように幸福度も上がっていきます。不幸をお金で解決できるからです。

例えば結婚。結婚すると(直後は)幸福度は高まります。

例えば出産。子どもができると幸福度は下がります。しかし、子どもが増えると3人目までは幸福度は上がります。

例えば子育て。子育てを放棄するネグレクトや、過干渉になって何でもかんでもやってあげる。それらのちょうど中間が一番子どもの幸福度が高まります。

ちなみに年収が上がれば幸福度が上がるのは、お金でストレスのない暮らしができるからだと考えられています。そのため、ある程度までいくとなかなか幸福度は上がらないと考えられています。おそらくある程度ストレスのない生活ができるからなのでしょう。

結婚にも言及すると、あくまで相関であり因果関係ではないため、結婚をすると幸福感が高まるというより、幸福感が高い人が結婚しやすいともいえます。

これらを総合すると、何かしら幸福になる行動をしている人や環境がある人は幸福度が上がるのではというのが私の考えです。また、こういう考え方もできます。常に一定に戻るのであれば、常に小さな幸福を追い求めていれば常に幸福な状態でいられる、と。

まとめ

快楽だけを求めても幸福になることは難しいでしょう。特にネガティブ感情が大きい人はなおさらで、根本的な解決をはかりたいところです。それをするには現実を変え理想を下げることが大事です。

参考文献

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