仕事や人生に役立っている私の本の読み方
ウェブサービスを作ったり、UXやUIのデザインをしたりしている吉川雅彦です(Twitter: masahiko888)。
2018〜2020年はたくさん本を読んでいたので、自分なりの読み方と役立ったことをまとめてみました。一般的なアウトプットやインプットの話は良質な本がおそらくあるはずなのでそちらを参照ください。今回はあくまで私自身がどう読むかの話です。
この記事の対象読者
- 本を読みたいがどうすればいいかわからない人
- 他の人がどう本を読んでいるか知りたい人
- 本を読む意味がよくわからない人
1. 目的を明確にする
本を読むことは目的を達成する手段として位置づけています。問題や目的が先にあって本を読むと効果が高いです。主に以下のような目的があります(一例です)。
本を読むことは、自分自身のデータベースを更新するイメージです。「問題をどう捉えるか」「どういう手段を取るか」「どう行動するか」などを決めるために参照するデータベースです。
解決方法がピンポイントで書かれたものだけを読むことはあまりオススメできません。知らないことを知らない可能性があるからです。
2. 視野を広げて書籍を探す
知らないことを知らない可能性があるため、視野を広げてから自分に合った本を選んでいます。
買うかどうかを決めるために、本屋で中身を確認したり、Kindleのストアでサンプルを読んだりしています。
本屋は都内に住んでいるので近くの大型書店に行ったり、時間があれば新宿の紀伊國屋書店や池袋のジュンク堂、東京駅周辺などに出かけたりします。書店(MARUZEN・ジュンク堂・文教堂、紀伊國屋)によっては本の在庫がわかるので、アプリやサイトなどから検索して出かけることもあります。
本を読んでいるとき、今まで聞いたことのない単語や気にかけたことがなかった事柄が出てくることがあります。そういうときは、その関連書籍を探すということをよくやります。
3. 本を買う
紙と電子版、どちらで読むかは以下のように分けています。
本を買うときの心構えとして「買ってしまってもったいないから全部読む」というのを辞めるようにしてます。結果的にほとんど読まなくても必要なのに買ってなかったときの機会損失の方が高くつく気がしています(正直なところ家計的に自己投資費として月に5000円を設定していたのですが、費用対効果あると感じてからは5000円の制限を辞めました)。また、買う本の吟味はしますが、迷うようであれば買うようにしてます。それでも読むかどうかわからない本にお金をかけたくない場合もあるので、そういうときはAmazonでサンプルだけダウンロードしています。
4. 内容によって読み方を変える
基本的にはAのものを1〜2冊並行して読みながらBもCも読みます。並行して読む理由は、1冊だけだと飽きるからです。1冊すべて読み終わるのに軽めの本で1〜2日、重めの本で1〜2か月かかっています。平均で2週間程度。コスパがあまりよくないのが課題です。
5. メモを取る
参照用として使うもの以外はほぼ必ずメモを取りながら読んでいます。主に外部記憶の役割として機能します。
新しい発見が多い本ほどメモが多くなります。メモは今はNotionに書いています(下の画像はその一例)。Notionにした理由は、パソコンからでもケータイからでも「チマチマした編集」が楽だったからです。書き方は基本的には「気になったことを抜き出して要約してメモするだけ」です。メモには自身が思った「感想」「疑問」「仮説」「反論」「適用できそうな場面」などを書く場合もあります。
上記は『正義の教室』という本を読んだときのメモ(の一部)です。このメモをする行為の前後には以下のような過程を経てます。
本を読むたびに自分の中の真理を再構築していきます。
ひとつの問題を解決するために、(問題の大きさや種類にもよりますが)関連書籍を数冊買って自分なりに咀嚼して必要な解決方法をさぐるということもよくやります。一冊の本の中ではひとつの視点でしか語られてないことも多いためです。この読み方もコスパがあまりよくないのが課題です。
紙で読む方が記憶の定着がいいというような話も聞きますが、私の場合はメモを書くことでそれの代用をしているといえるので、それを理由に紙を買うことはありません。
速読はやろうとして挫折しました。
メモを取る以外には、気になった言葉をつどつど調べることをします。本はテーマに沿って書かれているので、それ以外のことを深掘りしていないことも多いためです。気になった言葉は調べたり、別の本を読んだりすることで補完します。
6. アウトプットをする
メモを取る行為もアウトプットかもしれませんが、もう少し自分なりに咀嚼した結果をアウトプットします。
アウトプットすることで抽象化したり、実践することで具体化したりするスキルも身につきますし、より理解が深まります。
アウトプット先は、他人にきちんと見せようと思うほど質が高まり理解が深まります。この記事を書くのも色んなことをネットや本で調べたりレビューしてもらったりしながら書いているので、自分の中の答えの解像度が高くなります。ただ、8時間以上かかっているのでコスp(略)。
7. 読書を習慣づける
習慣化は色々やり方がありますのでこれも専門書にゆずるとして、私は上の2つがあるので習慣化できています。
1つめはモチベーションが高まります。2つめは「スマホのホーム画面(かつ一番初めに表示されるところ)に置くアプリは基本的にはKindleだけにする(それ以外はメモなどのウィジェットを配置しています)」「読まなければいけない物理本は手の届く範囲に置く」などです。物理的にも心理的にもアクセスしやすくします。
これはおそらくこのまま真似るものでもないと思いますので、色々試してみてください。
よく読む本と読まない本
例として『ファスト&スロー』(上下巻ある)や『サピエンス全史』のような本です。
自分と価値観や脳内構造が違うために再現性が低いなと思うものはあまり読みませんが、違う価値観に触れてみたいと思ったり考え方が広がりそうだと感じたりすれば読んでいます。たまに食わず嫌いしていたなと思うときもあります。
なるべく根拠がはっきりしたものを好んで読みます。
最後の自己啓発的な本ですが、いくつか読んでも結果的に自分の行動が変わることが少なかったので今は読むことは減っています。その原因は主に「脳内構造が違う」ことと「自分なりに考えて出した答えではない・経験をしていないので納得感がない」ためです。後者の例をひとつ挙げます。「無理をして人から好かれようとしない」と本に書いてあったとします。しかしそれを実行することは難しいです。何かの行動と比較しようとしたときに、その重さがわからないため比較できないのです。人生での選択は常にトレードオフであるのにその判断がしにくいのです。また、実際の具体例を簡単に出すことができないですし、それを実行するメリットも納得感がいっていないのです。ですので、周辺知識を取り入れ抽象化と具体化を繰り返し自分なりの真理を追求することや強固な信念を形成することが大事です。
「いつか痩せるかもしれない」と思いながらダイエットをしてもなかなか行動が伴わないですが、根本の原理(脳内構造や人のバイアスなど)を知って「○○すると必ず○○になる」くらいまでわかると、不確定なものが不確定ではなくなります。ですので、結果的に行動が変わるのかなと思っています。それが「よく読む本」の類の本です。抽象化されすぎた(または個別化されすぎた)フレームワークでは行動に移せないことが多いと思います。
本かウェブか
要点だけをとりあえず知りたいときはウェブ、理解を深めたいときは本を読むことが多いです。
「本に出てくる時点でその情報は市場に合わなくなってきている」という意見も聞きますが、出版から10年ほど経っても名著があるのも事実です。
ウェブと本とをうまく組み合わせることが大事だと感じています。特に論文はウェブ上の方がすばやくアクセスすることができます。
なぜたくさん本を読むのか
「子どもが生まれたこと」「起業をしたこと」がきっかけでよく読むようになりました。それまでにはなかった解決方法がすぐにわからないような問題が出てきてからです。ネットで溢れる知見ではなかなか自分の価値観を変えることは難しく上質な情報も少ないことに気づきました。大学時代は「技術寄りのことをしていた」のと「大きな問題にぶつからなかった・または問題を認識していなかった」のであまり本は読んでいませんでした。
上記の問題にぶつかって本を読む大事さに気づいてからたくさん本を読んでいます。先人の知識の結晶が数千円で手に入るなんて素晴らしすぎです。若いときに読んでいればよかったなという本もあれば、若いときに読んでもよくわからなかっただろうなという本もあるので、読むタイミングも大事そうです。
仕事や人生にどう役立っているか
仕事でどう役立ったかは「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」が驚くほどできるようになったことです。あくまで相対的にできるようになっただけでまだまだですが。ロジカルシンキングとクリティカルシンキングは相反する考えという認識で世の中に広まっていますが、私はロジカルシンキングはクリティカルシンキングを包含すると考えていますしそういう論文もあるのですがここでは割愛します。
「○○の方法でユーザーに質問をしたとしても無意味なことに気づく」「正論で殴ろうとしている人には倫理的な観点が抜けていることに気づく」「バイアスに気づく」「いいアイディアが出る」「相手の気持ちをおもんぱかることができる」などです。解決策を考えるときに要素を分解するときにその分解の仕方は知識が必要ですし、漏れに気づくのも知識があってこそです。気づくというのは、場合によっては手戻りの発生を防いだり間違った方向性に進む前にそれを食い止められます。それが上流工程であればあるほど与える影響も大きいです。考える仕事であればあるほど顕著です。
なぜ「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」ができるようになるかというと、それらのフレームワークを知って使いこなせることは大前提として、知識量とそれを抽象化して具体化させるスキルがあればあるほど最適な解が出せるからです。
「なぜあの人は私をイライラさせるんだ」という経験が昔からありました(おそらく誰でもあると思いますが)。「私は間違っていない。私が正しい」という価値観もありました。本を読むことでその考え方が変わり、建設的な解決方法に焦点を置くことができ、結果としてストレスコントロールがうまくなりましたし、何が幸福度に影響を与えるかもわかってくるようになりました。ちなみに「心が健康ではない人」が本を読んでもほとんど何も変わらないかもしれませんので、まずはカウンセリング等に行くったり簡単な本から読んでみることをオススメします。
他に役立ったことは、単純なフレームワークで生きていけるようになったことです。それは真理だったり信念といってもいいかもしれません。事象が発生するたびにどちらを選択するべきかを迷うことが減りました。
まとめ
人生でAとBの道があってどちらも困難な状況だったとき、「楽にAに行ける方法」を知ったり「実はBの方が幸福度が高い」ことを知ったり「第三のCという道」を知れたりするのが本です。大事なことなのでもう一度いいますが、「Bの方いい」ことを知ったり「Cという道」を知れるということは、それを知らないと数十年分くらい遠回りをしてしまっていた可能性があるということです。
余談ですが、この記事で何度か「正しい」という単語を出してるのでもしかしたら「正しいことなんてない」と反論したい方がいるかもしれません。ですが、「『正しいことなんてない』のが正しい」と思っているということなので、その矛盾に気づかせてくれるのも知識(つまり本)です。私は正しいものを探し続けることが(少なくとも自分にとっては)正しいと思っています。
本を読むことは、仕事にも生かせますし自身の幸福にも役立ちます。ただ、読んで「知っているだけ」では自分のスキルとして生かしにくいので、それとは別にアクションを起こすことも大事です。
また時間があるときにオススメ本の記事を書きたいと思います!
Twitter: masahiko888
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