見出し画像

漫画キングダムから学ぶ会社経営 #48:出る杭の育て方

本記事は、「漫画キングダムから学ぶ会社経営」と題し、毎回、様々な視点から漫画キングダムとビジネス(特に経営)での共通点及びそこから得られる学びについてまとめていきます。今回は48回目の記事になります、過去の投稿はこちらからご覧ください。(各記事は基本的に、キングダム最新巻までのネタバレを含みますのでご了承ください。)

前回前々回と2回続けて「小国が生き残る手段」として、戦国七雄の中で最小の国、「韓」やさらに小さな一城からなる国「徐」や、「汨」についてまとめました。小国の戦略というのは、現実的で現代ビジネスと照らし合わせても応用が効く内容になるので、まだお読みでない方は、上記リンクよりお読みください。

さて、今回は、組織における重要な個性について考察します。個性は欧米では他人とは違う、優れた点として捉えられますが、日本の組織では否定的な意味合いが強く「出る杭」などと呼ばれており、「出る杭は打たれる」ということわざにもなっています。

なぜ、日本の組織では出る杭は打たれてしまうのかという問いに関しては、変な意味でみんな等しく成長しましょうという文化的、歴史的な背景があります。これは戦後急に生まれた考えではなく、もっと昔からある日本(東洋)の文化にあると思います。また、この考えは100%悪い訳ではなく、全員が同じ足並みで、追いつけ追い越せの高度成長期は、この文化のおかげで日本は加速的に成長できたと言えます。しかし、ご存じの通り、アメリカに次ぐ経済大国になり、自分達で新たな価値を生み出さなけらばならなくなった1990年代以降は、この個性を殺した文化が足かせになり、日本の成長を止めてしまっています。

同じ東洋で、しかも紀元前の話になりますが、キングダム内でも出る杭は打たれて残念だなと思う例があったので、今回焦点を当てたいと思います。その人物とは亜花錦です。

亜花錦はご存じの通り、最近までは、王翦軍第一軍の亜光軍の千人将でしたが、王賁が将軍に昇格してからは、亜花錦自身も三千人将に昇格し、王賁軍に移籍しています。亜花錦と言えば、先の朱海平原右翼の戦いでは、瀕死の亜光将軍を助けたり、信、王賁と共に、寸前の所で右翼を支えたりと、MVP級の活躍でした。何よりも、戦術眼が優れており、王賁や信並みに戦の戦況が見えており、また、行動力と突破力にも優れており、そこらの将軍よりは遥かに優秀です。しかしながら、亜光軍では「悪童」と呼ばれ、千人将止まりでした。具体的な悪童たる悪事については描写されておりませんが、恐らく、あまり上司のいう事を聞かない、軍律に反するなど、その程度だったと思われます。これは、いかにも規律に厳しそうな体育会系の亜光将軍や、自分を王と崇める事を求める王翦将軍の下だからこそ、出世できなかった理由かもしれません。しかし、ここぞという時に、必ず活躍するので、なんとか組織に留めていたように感じます。もし亜花錦が、桓騎軍にいたらどうでしょう。自由と才能を重んじる桓騎将軍は、恐らく雷土などと同じく五千人将クラスの幹部にしていた事でしょう。

亜花錦 3

王翦軍は良くも悪くも、カリスマ経営者がいる日本の組織に似ていると思います。カリスマ将軍の指令の下、部下達は足並みをそろえて、その命令を遂行する。王翦将軍が、軍才だけで旧六大将軍に入るくらいの才覚があるので、これは成り立っていますが、#16: 後継者問題でも触れましたが、優れたリーダーと言うのは、自分がいなくなった後の事も考えなくてはなりません。しかし、現王翦軍には王翦将軍の後を継ぐような存在はおらず、持続性のない組織だという事がわかります。本来ならば、それこそ亜花錦のような悪童でも才能がある若者をどんどん成長させ、軍としての強化を図るべきですが、そのような事はしません。子である王賁にも同じような扱いです。王賁と王翦の親子関係に関しては、複雑な事情もあるので、致し方ないとは言え、そのような事を何十年も引きずっている時点で、融通の利かない将軍だと言わざるをえません。しかも、王翦将軍は昭王時代日の出を浴びなかったので、自分が受けたような仕打ちを若い世代に同じようにしているとしたら、尚更良くありあません。自分が酷い仕打ちを受けたのならば、それを後世に残さないようにするのが、優れたリーダーになります。

話を戻して、亜花錦のような才能を組織としてどのように伸ばしたらよいのか。亜花錦は細かい規則や、重要でない(命にかかわらない、大きな損害を出さない)約束などは破っていても、要所は押さえていたと思います。組織に属する以上ルールを守らなければ統率は取れません、しかし、それらの規律は本当に全て必要なのでしょうか?重要度の区別がつかない人達全ての行動を見張る為に、規則を細かくしすぎているのではないでしょうか?

これは、現代の社員管理と似ていると思います。コロナ禍で在宅勤務が普及しましたが、日本の多くの会社は在宅勤務によって挙げた仕事の成果よりも、社員の就業時間やサボってないかを見張る事に必死になり、そのようなシステムやルールの導入ばかりに時間を割いてしまっています。その結果、コロナ禍だろうが自粛せずに会社で今まで通りの仕事をしている人達が評価され、在宅勤務を続けている人達が悪者のような風潮が出来ています。なんとも目的と手段を間違えている印象を受けます。

以前も書きましたが、Googleという会社は以前(今もやっているのかわかりませんが)、勤務時間の20%を今の業務とは関係ない事に費やす時間が与えられていました。出る杭を打つ、日本の組織では考えられない発想です。その結果、多くの新たなサービスが生まれて今のGoogleという会社を作っています。

亜花錦のような人間は多かれ少なかれ、必ず組織にいます。そのような人間を活かす事ができるのは、在宅勤務の勤務状況を監視する会社ではなく、Googleのような会社です。しかし、みんなが亜花錦ではなく、平均を好み、言われたことを誰よりも真面目にこなす事が好きな人もいますし、そういった人材も会社には必要です。ですので、結論を申し上げると、どちらにも対応できる組織の仕組みが重要になります。何かと偏りがちな日本人ですが、多様性を受け入れ、長所を伸ばす人事戦略があれば、どのようなタイプの人にも活躍の機会が与えられ、また会社にとっても有益なwin-winの関係ができるのです。

今回は亜花錦を例に、会社のルール作りや規則の在り方を考察しました。経営に近い立場になればなるほど、人事戦略の重要性に気付いてきます。結局組織は人で成り立っているので、その人達を最大限活用できる会社が成長できるのです。

それでは、また次回。

注)写真はすべて漫画キングダムより引用

この記事が参加している募集

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?