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もしもHIVだったら誰に言う?

5年くらい前に自分がHIVに感染していることが分かりました。
パートナーに勧められて郵送匿名でできる検査キット使って検査したところ、陽性の結果が出たのです。
その後、検査キットの会社と連携されている近くの病院を調べて、再度検査をして、陽性であることを確定しました。

ショックではありましたが、「ひょっとすると。。」と思っていたので、「あぁ、そうだったか」と少し落ち込んだ程度でした。取り乱したり、泣きわめいたりということもなく、病院の先生の話を冷静に聞いていたと思います。
無表情で話を聞いている自分に気づいて、「もう少しショックな感じを出した方がよいかな」とか、「こういうとき、どんな表情をするのが正解なのかな」とか考えていたと思います。

思い返せば、受験で不合格だった時なんかも、これまでの努力やこれからのことを考えれば、すごいショックな出来事なはずだけど、「あぁ、そうか」ってすんなり受け入れてしまうところがあったので、そういう性格なのかもしれません。

次に僕が思ったのは、「さて、この話を誰にするべきだろうか」ということでした。
パートナーには検査を受けることも伝えていますし、これからのこともあるので当然伝えるとして、その他は誰に言うべきなのだろうか、と。

家族に言うか

まずは家族に伝えるかどうかです。
僕は大学生から一人暮らしを始めて親元を離れて暮らしています。ゲイであることも家族にはカミングアウトしていません。
田舎で暮らす両親にとって、自分の息子がゲイだなんて夢にも思っていないことでしょうし、ましてHIVに感染しましたなんて伝えたら、どうなるか想像もつきません。
病院で「家族に伝えるべきでしょうか?」と聞くと、医師や看護師さんは「これからの治療や手続き上、家族に言う必要は全くない。君が決めることだけど、どうしても伝えたいという思いがないのであれば、言わない方がいいと思う」とまっすぐ目をみて言われました。
大きな病気をしたら家族に伝えるべき、というような変な家族観(?)みたいなものを持っていたのですが、ハッキリと「言わなくてよい」と言ってくれたことで凄い心の荷が下りた感じがしました。

今も家族に病気のこともゲイであることも伝えていません。
人によって色々な環境や価値観があるので、絶対に正しい選択というものはないと思いますが、少なくとも自分にとってはこの選択は良かったと思っています。
HIVに感染していることを、遠くの故郷で暮らす両親や兄弟に伝えて何が変わっただろうかと想像すると、余計な心配をかけてしまうだけだったのではないかと思うのです。
特に看病をしてもらう必要がある病気でもなく、薬を飲んでさえいれば通常どおりの日常を過ごせます。
僕にとってHIV感染者であることは、自分の本質ではないので知ってほしいとも思いません。
一方で、ゲイであることは自分の本質にも関わってくることなので、いまだにカミングアウトしたいと思うときもありますが。。

友達に言うか

友達に関しても、誰にも言っていません。
パートナーはHIV感染者ではないので、病気のこと、治療のことを話し合える友人がいたほうが良いのかなと思った時もありますが、
今のところはそういった友達はいませんが特に問題ないです。
逆にあまり親しくない人に話してしまうと、どこかで言いふらされたりするんじゃないかと疑心暗鬼になってしまいそうで、正直怖いという思いもあります。
これまで付き合いがあった友達とは、これまで通り何も変わらず食事したり、旅行したりしていますが、病気のことを伝えたいと思ったことはないし、伝えたほう良いと思ったこともないです。
ただ、周囲に一切話相手がいない場合は辛い時もあるかもしれません。話したほうが心が落ち着くこともあると思います。感染者同士で会話できる会なども開催されているようですので、周囲に話せる人がいないという人は、そういった場に参加するのもよいのではないかと思います。

職場に言うか

最後に職場ですが、言っていません。
特別な事情などが無い限り、一般的な企業に勤めるサラリーマンが会社にHIV感染を報告する必要は無いと思います。
病院への通院は必要ですが、落ち着いてくれば2,3か月に一回の通院ですし、僕の場合は土日に病院に行っています。仕事に支障をきたすこともありません。
健康保険などの関係で会社に知られるのではないか、と心配したこともあったのですが、健康保険組合には守秘義務があるので、会社に知らされることはないようです。僕は、HIV発覚時に勤めていた会社と、その後転職した会社のどちらにも伝えていませんし、会社に知られて何かを言われるというようなこともありませんでした。

啓蒙活動などのおかげでゲイの多くはHIVに関してある程度の知識を持っていて、普通に生活を共にしても、感染するような病気でないことは知られています。
一方で、あまり身近にそういった情報が無い人にとっては、未知の病気であって、どんなリスクがあるのかも分からないということが多いと思います。
余計な心配をかけたり、無意味ないざこざを生むことを避けるという意味で、この病気のことはあまり人に話す必要はないかなと思っています。

定期的な検査と早期発見が大事

ただ、僕の場合はまだAIDSの症状が出る前の段階で検査で見つけることができたおかげで、病院で適切に管理された状態で服薬を開始して、日常生活に大きな支障をきたすような事態を避けることができました。
AIDSの症状が出て、病院に緊急入院などをすれば、不本意でも家族に病気のことを知らされる場合もあると思います。
そういった意味で、検査を進めてくれたパートナーにはとても感謝しています。

もしも、HIVに感染しているのではないかと、少しでも心配なことがある方には、検査をすることを心から勧めます。
検査をすることが怖いと思う方もいるかと思いますが、検査をしないままでいることの方が自分にとっても、周囲の人にとっても大変な事態をもたらす可能性が高いです。
陰性だったら安心できて良かった、陽性だったら早期に治療を受けられてよ良かった、ということで、検査を受ければどっちの結果でも良い方向に向かうのではないでしょうか。

ケンゾー・JG

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