脊髄損傷患者の歩行予後3

脊髄損傷患者の歩行予後3

先日話した予後予測を用いて実際に歩行予後を確認していきたいと思います。

回復期転院時評価
60歳、L3?レベルの不全損傷、認知機能問題なし、損傷レベル以下でも筋出力あるが過半数が2以下(改良フランケル分類C1)、寝返り軽介助

まずは、麻痺がどの程度まで改善してくると予想されるかです。

改良フランケル分類で予後予測ができます。

改良フランケル分類C1から歩行が可能される改良フランケル分類Dに移行する確率は61%となっています。

また、実用的な歩行が可能とされる改良フランケル分類D2以上まで改善する確率は36%となっています。

ただしこちらの評価は急性期での評価を元にするので、回復期に転院してきた情報ではなく、急性期でのデータを参照していく必要があります。

実用的な歩行は3分の1程度かと予想されます。ただし、回復期時点での評価なので、実際はもっとシビアかもしれません。


もう一つの評価法を用いて、さらに制度を上げていきましょう。

P=1/(1+exp(15.906-1.584x1–0.958x2-0.19x3-0.225x4))

この数式に当てはめてばPが求められます。
Pが0.5より大きい場合は87.3%の確率で室内歩行が可能となるとしています。

expは数式なのでexcelを用いて計算した方がいいです。

x1はAISです。
A:1 B:2 C:3 D:4

x2は寝返り介助量です。
全介助:1、一部介助:2、口頭指示:3、自立:4

x3はFIM認知の合計点数です。

x4はWISCI Ⅱの点数です。
今回は
3:装具を用いて平行棒内で1人介助で10m歩行可能。
になります。

それぞれの評価から今回は
x1=3
x2=2
x3=35
x4=3
が代入されます。

そうしますと
P=0.1288となります。

Pが0.5より低いため、歩行は厳しいとなりそうです。

この場合実用的な歩行は難しい可能性が高いので、車椅子での生活も早めに考えて行かなければならないと思われます。

装具を作製するかですが、微妙なラインかもしれません。

しかし、退院後も患者さんのリハビリテーションは続きます。その際に装具がある事で確実にリハビリテーションの選択肢は増えます。

なかなか訪問や通所では十分な装具はありませんので、、、

また、自立レベルに達しないということは何か補助具を使用することを考えないといけません。

そんな事を考えると装具を作製して少しでも介助量軽減をしていく方が良いかなと僕は考えます。

先ほどの論文ほデータは回復期で十分なリハビリテーションを行なった結果の予測になります。そうなると装具は長期的に使用することになると思われます。そのため、装具はあった方がいいのではという考察になります。

作製時期は悩むところですが、経過によると思います。

長期的に使用するものなので、遅くなりすぎるのも避けたいところです。

どんな装具を作製するかですが、

今回のケースの場合は実用的な歩行難しい。つまり、訓練レベルでの装具になるかと思います。そうなると見た目よりも強制力の強さや、機能性が優先順位として高くなると思います。

そうなると金属支柱が一般的な選択になるかと思います。ただ、重さが良い方向にいくか、逆に降り出しの邪魔になるかは判断したいところです。何百gの違いがどこまで影響を及ぼすのか?


論文を参考に脊髄損傷の装具作製までの考察をしてみました。

このように考えていければ、自分の経験で言うより信頼度が増しそうですし、説得力も増しますよね。

参考にしてみて下さい。

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