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Autoportrait

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えかきが日々感じたことや、過去の記憶、出会った人の思い出話を徒然に書きつづる。不定期連載の自画像的随筆。
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美術部のM先輩

高校に入学してすぐ美術部に入った。
新入生では私のほかに男女5、6人が入部した。
美術部に集まった学生のうちの何人かは、
できれば美術大学に行きたいと言った。
芸大、多摩美、武蔵美、造形、女子美。
一年生のころから決めていた人もいれば、
途中から美大を目指す人もいた。
私は中学時代から、絵の塾の先生が卒業したのと同じ美大に行きたいと思い、
石膏デッサンと油絵を始めた。
しかし先生曰く、「いまごろこ

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りんごの絵

かすかに残っている記憶をたどると、あれはたぶん3、4歳ごろのことだ。
赤いクレヨンでりんごを描いていたら、そばで見ていた母親が、
「もっといろいろな色を使って描くんだよ」
と言った。母親はほかの色を赤いりんごの絵に重ねて描いてみせた。
そうなのか、と幼い自分は言うとおりに別のクレヨンを手に持った。
うろ覚えの記憶はそこまで。
私の絵の出発点には母がいた、と長年思っていた。
以前その思い出を母に話し

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プログラミングを学ぶ​​

プログラミングを学ぶ​​

 先日、米国のオバマ大統領がすべてのアメリカ人に向けて、コンピュータープログラミングを推奨するメッセージが公開された。その内容の一部は、以下のようなものだ。

「我が国が最先端をゆく国であり続けたいのであれば、私達の生活を変えてくれるような、ツールや技術を習得した、あなたたちのような若い人が必要なのです。
だから、私はあなたたちにやってほしい!
新しいゲームを買うだけではなく、つくってみよう!

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高橋悠治のピアノ・リサイタル​​

高橋悠治のピアノ・リサイタル​​

 木曜日の夜、浜離宮朝日ホールで「高橋悠治ピアノ・リサイタル」を聴く。
この人の演奏を生で聴くのは今回で二度目。最初に聴いたのは新宿ピットインでのライブだった。富樫雅彦の追悼ライブで、山下洋輔などさまざまなジャズミュージシャンが順に演奏した最後のほうに高橋悠治が登場し、その音を聴いて驚いた記憶がある。もちろんジャズ畑の人ではないし、ジャズミュージシャンとは経歴も異なるが、フリーなどいろいろなジャズ

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3年目の黙祷​​

3年目の黙祷​​

 職場で仕事をしていると、同僚のM君がやってきて「神社に行きましょう」という。なんのことか分からずに、「彼女でもつくりたいの?」と聞き返した。会社から歩いて3分ほどのところに、縁結びで女性に人気の東京大神宮がある。時計を見ると時刻は2時半。それで気がついた。二人で大神宮に向かう。
 境内にはやはり若い女性の姿が多い。本殿に参拝したあと、時刻がくるのを待った。私は一昨年昨年とも3月11日は、社内で腰

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