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舞台『ファウストの悲劇』を紹介したい【ぱちぱちレポート企画】+もっと私的な話

昨日、演劇ネットワークぱちぱち内部限定イベント、河野桃子さん企画「演劇を紹介しよう!」が開催されました。

これは、これは、テーマは演劇に関係していればなんでもOKで、短いレポート(批評)を書いて紹介してみようという企画です。

各自文章を提出して、参加者同士でシェアして、フィードバックをもらったり、オンライントークで意見交換したりしました。

文字数は自由でしたが目安を1000字とされていたので、できるだけそれくらいを目指しました。

似たような企画をする度に思いますが、文章って参加者それぞれの色が本当に濃く出てしまうので、逃げようがなくて誤魔化しようがなくて面白いですね。みんなそれぞれの人生を積み重ねて唯一無二の感性を持っていて、巧拙はあれど滲み出る「その人」をダイレクトに感じられる。

ぱちぱちサイドからもこの日のレポートは出す予定ですが、どのような形式になるか未定なので、ひとまず自分の文章だけ個人的に出そうと思い、この記事に初稿を載せます。

舞台『ファウストの悲劇』を紹介する

「ファウスト」と聞いて最初に思い浮かべるのは何ですか。多くの人はゲーテの『ファウスト』を思い浮かべるかもしれません。昨今は、アニメやゲームのキャラクターにもこの名前が使われていることもあるようです。
私にとって初めてのファウスト作品であり、今でも最も心を動かされる作品は、舞台『ファウストの悲劇』です。
この作品は、2010年にシアターコクーンで上演されました。演出は蜷川幸雄、原作はマーロウの『フォースタス博士の悲劇』です。私は2012年にテレビで上演映像が放映されたものを観たのですが、私が今、演劇を人生の軸にして生活しようと思っているのはこの作品があってこそと言っても過言ではないくらい、当時14歳の私にとっては衝撃的な舞台でした。
この物語のモチーフになった「ファウスト」とは、元はドイツの伝承上の人物であるファウスト博士のことです。彼は、あらゆる学問を修めて、有り余る知識欲をついに魔術に向け、悪魔メフィストフェレスと魂を賭けた契約を交わします。
この伝承から派生した作品は数多くあり、結末も様々に分岐しますが、『フォースタス博士の悲劇』では、魔法の力を手にしたファウストは放蕩の限りを尽くし、悪行三昧の末、契約の24年最後の夜には、後悔の嘆きとともに凄惨な死を遂げます。私には、因果応報的に滅びていくファウストの姿が、人間が誰しも持っているであろう愚かさや浅はかさを現前化しているように見えて、他人事には思えませんでした。
このような救済のないニヒルなプロットもさることながら、舞台での野村萬斎の演技も非常に魅力的です。狂言師としての体に裏付けされた、滔々とした台詞回しとどこか浮世離れした佇まいは、俗世から離れた知識人であるが故の苦悶に苛まれるファウストの姿に説得力を持たせているように感じられます。
そして、この作品を観た人なら語らずにはいられない、ファウストとメフィストフェレスがタンゴを踊るシーンがあります。契約を交わした直後、ファウストが自分のしたことに恐れる場面なのですが、原作では二人が踊る描写はありません。この官能的なダンスが入ったことで、ショーとしての見せ所というだけではなく、二人の結びつきがより強く表現されたように思いました。この結びつきは、ホモソーシャルとも取れるし、ホモセクシュアルとも取れるのが、物語に深みを増しています。
この作品に出会ってから、様々なファウスト作品を少しずつ追っていますが、結局『ファウストの悲劇』に戻ってきてしまいます。いつ人倫を外れるか分からないという爆弾を抱えながら生きている中で、愚かなファウストの姿を外野から見て傲慢にも慈しむということが私にとってある種の救済なのかもしれないと思い始めました。(1117字)


おまけ・派生して考えたこと

こんなことを中学生の時から考え続けているのに、未だに自分の中で答えが出ていないのが恥ずかしいけど、なぜ自分はこの作品に惹かれるのかということは年々変化している気がする。

大学のゼミでも取り上げていたし、卒論は少し方向を変えて、宝塚版ファウストである『天使の微笑・悪魔の涙』(※これはゲーテの『ファウスト』を原作としているけど)をテーマにしてたくらい「ファウスト」というものに取り憑かれているので、そのことを知っている大学時代のお友達とかには「まだ言ってんのかい」と思われるかも。

とにかく、昼間こんなことを考えていたり、自分の伝える力の至らなさに辟易したりしていたせいなのか、雨のせいなのか、それらの色々に影響された体の不調からか、原因はもはや分からないけど、夜には私が精神が疲弊しているときお得意のとすつい祭りが始まった(とすつい=tosツイの意味を知りたい人はググってください)。

以下、そのとすつい解説。とすついは随時いらなくなったら消すのに自らここに残して黒歴史作ってくのなんで??

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