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2021/08/04 19:00 劇団普通『病室』@星のホール(+雑記:嗾けられたこと。決断力なんか無い私。)

ものすごく、ものすごく前になってしまったのだけれど、一応記録として残しておきます。

劇団普通『病室』を観ました。

なぜこれを観ようかと思ったかと言うと、Twitterで評判の良いツイートをたくさん見たからです。

やっぱり良いと言われているものは観たくなる。評判が良いことと自分の好みに沿うか、専門家からの評価が高いかは全部別物だけど。

ともあれ、そんな理由で観に行ったので、あらすじや出演者、劇団についての前情報は皆無でした。

したがって、特に事前の期待が大きかったわけでもなく、行けるから行った、それだけだったんですが。

私が経験したことのある他のどの演劇にも似ていなくて、初めての感情にさせられました。

じわりと心に残ってそれを実感するまでが作品、みたいなお芝居でした。

・日常の心の機微こそ尊いと感じる人
・派手なものより地味で堅実なものに心惹かれる人
・職人技のような、リアルな演技を観たい人

こんな人におすすめだなと思います。

本当に唯一無二の質感なんです。それが劇団”普通”だなんて…。いや、限りなく普通の人たちを描いているという意味ではその通りなんだけど…、全然普通じゃないです。観賞後のこの震えるような感覚は。

以下、覚書。

冒頭から独特なイントネーションが印象的。

私がこれを観た当時、茨城出身の人と一緒に仕事をしていたので少し耳馴染みのある話し方でした。

私も方言を持つ者ですが、方言は温もりがあるのと同時に排他的でもあります。今回の作品では後者の性質が強いのかなと思いました。そのコミュニティ内だけで通用するルール。閉鎖的な地方の綺麗じゃない部分も浮かび上がるようでした。

もちろん、地方が全て閉鎖的な姿勢を取っているという訳では決してないけれども、物理的に他のコミュニティとの乖離があるということは、結果的に閉鎖している状態になることは往々にしてあると地方出身者として思います。

そんな印象から始まる作品ですが、開始5分で(とっても俗な言い方をしますが)「演技ヤバうま集団だ…!」と思わされました。

それは、台詞の言い方が上手だとかそういう上っ面のことではなくて。

まさにそこに存在している人の佇まいであり、声だったなあ…と。


嚙み合わない会話の覚束なさ。
話したいのに何から伝えたらいいのか分からずこんがらがる話。
絶妙な間。
余白だらけ、だからこそ考えさせる言葉と空間。


物語を見ているというよりは、ありふれた風景を覗き見しているような感覚。

それぞれに人生があって、でもそんなものはいつも透けて見えるわけでもないのに確実にその積み重ねがあって今のその人がいる。良い時も悪い時もあって、人を傷つけ人に傷つけられて、後悔や反省を繰り返しながら、生きて、そして例外なく死に向かって歩いている。人とはみんなそうだから。


こんなことを、もう5か月も前のお芝居について思い出しながら考えていました。

最後、映画『最高の人生の見つけ方』を想起しました。救いのような、当たり前のような、ささやかな絶望にも希望にも見えるものを抱いた人間がいたな。

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おまけ(以下の文章は、2021年9月頃に書いたものにこの記事の公開直前に加筆したものです。)

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