忘れもの 17歳
17歳の頃、思い出せますか。
あなたの17歳は、こんな感じ。
「あの頃、夢中になって夢を追っていた。
何にでもなれて、何処へでも行けると思ってた。」
私の17歳は、そんなんじゃなかった。
でも、ひとに見せたことなかったけど、文章は書いていた。なにか、そんな仕事に憧れていた。
ただやたらに、虫歯が痛かった。
成績が良くなかった。450人中350番目くらいだった。試験の前は、歯が痛かった。
友達が、いなかった。休みの日は、行くあてもなく一人で電車に乗っていた。ただ、歯が痛かった。
不条理に、父親に怒られた。耳鳴りがして、歯が痛かった。
あの子が、男子と歩いていた。走ったら、歯がガンガン痛かった。
夜、天井を眺めていた。ひとり歯が痛かった。
親不知を抜いた。
10年ぶりに親不知を抜いた。
妻の包丁、トントントントンが痛い。
娘が、階段をドンドンドンドンと降りてきて痛い。
テレビが痛い。
電話よ鳴るな。
ずいぶんと忘れていたよ、歯の痛み。
17歳は、痛かったんだ。
痛かった私は、夢中になって、夢を追いかけてたんだ。
思い出した。
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