見出し画像

森田芳光監督「シブがき隊 ボーイズ&ガールズ」は、意外とよくできた青春映画なんですよ。当時、劇場で観て、うまいなぁ森田監督は、と感心しました。

現在、“昭和ジャニーズ映画” の鑑賞は極めて困難だ。かつて販売されていたVHSを入手するか、一部の作品に限り極めて稀にあるCSでの放送、名画座での上映を待つしかない。

そんな状況下でBlu-ray化されている貴重な作品がある。1982年7月10日に公開されたシブがき隊(薬丸裕英・本木雅弘・布川敏和)の初主演映画『シブがき隊 ボーイズ&ガールズ』(以下、ボーイズ&ガールズ)だ。

画像1

1982年5月に歌手デビューしたシブがき隊は、たのきんトリオ(田原俊彦・野村義男・近藤真彦)に続く存在だった。ところが、『ボーイズ&ガールズ』は、それまでのたのきん映画とは異なる部分が実に多かった。

まず、配給先や監督のキャスティングに違いがあった。『青春グラフィティ スニーカーぶる~す』、『ブルージーンズ メモリー』、『グッドラックLOVE』(すべて1981年)と82年7月時点で公開済みのたのきん映画はすべて東宝の制作・配給で、河崎義祐が監督を務めている。河崎監督は、黒澤明、岡本喜八らの助監督を経て、山口百恵や三浦友和の主演映画で実績がある人物で、堅い人選だといえる。

対する『ボーイズ&ガールズ』は東映の配給で、監督には自主映画出身で1981年に『の・ようなもの』で商業映画デビューしたばかりの森田芳光が抜擢された。こちらは若い感性が試されたイメージだ。

画像2

◆◇◆

■制作予算に差? 過密スケジュールながらシブがき隊の出番はたっぷり

また、たのきん映画と『ボーイズ&ガールズ』とでは、制作予算に差があったことも明白だ。

たのきん映画はいずれも撮影場所やシチュエーションが多彩で、登場人物が多く、ギャラが高そうな大物俳優が助演し、スタントマンが必要なアクションシーンがあり、大きな事件や発生するのが毎回の基本パターンだ。

その点、『ボーイズ&ガールズ』はすべてがミニマムでシンプルであり、コストカットが徹底されている。3人の男子高校生が海沿いのリゾート地で過ごす夏の数日間を描いたストーリーなのだが、彼らが海でヨットに乗る、サーフィンやダイビングに興じるといったシーンはない。夜空に花火は上がらない。また、登場人物は最小限で、重鎮的大物俳優の出演はナシ。アクションシーンもなければ、事件も起きない。せいぜい、薬丸と本木がケンカをして、布川が財布を紛失する程度である。

画像3

劇場パンフレットによれば、撮影地は伊東(静岡県)で、期間はわずか15日間。しかも、その間、多忙なシブがき隊はたびたび帰京していたという。金だけではなく、時間もなかったのだ。その厳しい条件下で、若き日の森田監督は、枝葉を広げず、あれこれ盛り込まないことでなんとか作品を形にすることに成功した。

結果論として、ミニマム&シンプル化はアイドル映画としてファンのニーズを満たすことにもつながっている。他の出演者の見せ場やサイドストーリーが僅少なので、シブがき隊は出ずっぱりとなり、終始彼らを見ていられるのである。

◆◇◆

■たのきん映画が避けてきたテーマに真っ向に挑んだ

『ボーイズ&ガールズ』は一方で、たのきん映画がそれまでスルーしてきた、“若者同士の恋愛” を取り入れた意欲作でもある。

本木、薬丸、布川が演じる “ボーイズ” の相手役として、宇紗木千恵(のちに尾高千恵として歌手デビュー)、吉田麻子、河上ゆかり(のちの橘ゆかり)が演じる “ガールズ” が登場するのだ。

グループアイドルの主演映画で、メンバー全員に同年代の恋愛対象が登場するケースは極めて珍しく、そこにこの作品の独自性があるといえるだろう。

画像4

◆◇◆

この映画のラストシーン。遠景で、シブがき隊のメンバーが乗った列車が東京へ帰っていくのだが、シブガキ隊の「さようなら〜」という声が聴こえるのだが、おそらく列車の中にはシブガキ隊はいない。アフレコで声だけいれたのだろう。こういう「節約撮影」というが「忙しいシブがき隊のスケジュールに合わせた撮影手法」を観て、「森田芳光監督ってのが、映画といういうものを良く知っているなあ」と劇場で観た私がひどく感心したおぼえがあります。

この作品のブルーレイ、単品では発売させておらず、『生誕70周年記念 森田芳光 全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』という商品に、森田作品の一本として収録されている形式だからだ。

最後に、上記商品はBlu-ray27枚組の豪華版であり、希望小売価格は11万円(税込)と、購入にはシブがき隊に対する “ZOKKON 命” な気持ちが求められることを付け加えておきたい。

(Re:minder 7/10(日) 6:00配信より引用)

個人的に印象深かったのは、テニススタイルのかたせ梨乃が颯爽と登場するシーン。そのグラマラスな肢体は、まだ、ヌードを披露する前であり、シブガキ隊の連中も「お〜!」と目が釘付けになるのだが、私の目も釘付けになった。

画像5


この記事が参加している募集

映画感想文

最後までお読みいただき誠にありがとうございます。私の記事はすべてが「無料」です。売り物になるような文章はまだまだ書けません。できれば「スキ」をポチッとしていただければ、うれしゅうございます。あなたの明日に幸せあれ。