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あなたの沖縄・読書会レポート〜〜『cocoon』から沖縄戦を考える

西由良(94年生まれ 那覇市首里出身)

 あなたの沖縄・東京メンバーで月に一度開催している読書会。メンバーが読みたい沖縄に関する本を一冊取り上げ、みんなで感想を言い合っています。
 先日の読書会で今日マチ子さんの漫画『cocoon』を取り上げたところ、大変盛り上がりました! そこで、今回は『cocoon』の内容と、当日の様子をレポートします。
(半年前に公開した読書会レポートはリンクより)

沖縄戦下の少女たちの日常『cocoon』

 『cocoon』は、沖縄戦が激化する中、学徒隊として戦地に動員された女学生たちのお話です。沖縄戦下を生きる少女たちの「日常」にフォーカスを当てています。

 物語の始まりは少女たちが戦地に向かう直前。「髪型が決まらない」「あの先輩かっこいい」など、女の子たちの間で交わされるたわいもないやり取りが描かれます。柔らかく、温かみのある絵なので、戦争が迫っていることを忘れそうになるほどです。しかし、彼女たちの「日常」は、少しずつ戦争にむしばまれていきます。どんどん貧しくなる食事、増え続ける負傷兵、撃たれて亡くなる同級生──。次第に戦争が「日常」となっていく様子が、史実をもとに克明に描かれています。

 私が初めて『cocoon』を読んだのは、高校生の頃。それまでに読んだ沖縄戦の漫画と違って、女の子たちの青春が描かれていることにどきっとしました。友達とおしゃべりをしたり、おしゃれをしたり、恋をしたり。彼女たちは普通で、私と何も変わらない。読んだ後は、怖い、というより悲しい気持ちになりました。大人になっていく彼女たちに、感情移入していたのでしょう。友達とあとどれくらい一緒に過ごせるのかな、と、少し不安な気持ちになったのを覚えています。お家の隅っこで、膝を抱えて小さくなりながら、明日、友達に何を話そうか考えました。

 大人になって、読書会のために読むと、また印象が変わりました。今回は、悲しいとは思いませんでした。あの頃の私は、もう居なくなってしまったのだろうか。そう思うと少し寂しい気持ちになります。今の私には、地上戦が始まる前の彼女たちの日常がキラキラ光ってみえました。自分の学生時代を思い出して、なんだか懐かしい気持ちがします。あの頃、永遠に感じていた友達と過ごせる時間はもうないなぁ。そんなことを考えて読み進めると、だんだんと戦争の足音が近づいてくるのです。少女たちの、貴重な甘酸っぱい時間が奪われることの残酷さ。悔しさ。無念さ。大人になって読むと、悲しさより、生活が壊れていくことへの怒りや憤りを感じて苦しくなりました。

読書会の様子──それぞれの距離感から沖縄戦を考える

 そんな『cocoon』の読書会には、9名のメンバーが参加しました。沖縄から進学をきっかけに上京した人、沖縄にルーツがある人、進学で沖縄に住んだことのある人など、多様な出自のメンバーが集まりました。

 感想では、まず、読んで感じた素直な気持ちを話してもらいました。「少女たちに自分を重ねて怖く思った」「自分の祖母のことを思い出した」「物語を通して、県外に生まれてリアルに感じにくかった沖縄戦が少し身近になった」などなど、本当に感じたことを話してくれたと思います。

 話していくうちに話題は広がっていき、3時間のあいだにたくさんのことを語り合いました。中でも印象深かったのは、戦争体験を直に聞いた経験があるか、その時に何を感じたかという話。沖縄出身のメンバーは、「学校の授業で聞いたことはあったが、真剣に聞けていなかった、ちゃんと聞いておけばよかった」と話します。一方で、県外出身のメンバーは、「あったかもしれないが覚えていない、テレビを通してしか聞いたことがない」と話しました。それぞれの場所から、感じたままの沖縄を語る。そして、他者の言葉を受け止め、自分の考えを深めていく。「個人的な体験から沖縄を語る」あなたの沖縄らしい読書会になったと思います。

 また、沖縄戦や戦争について理解を深めるために、みんなでおすすめ本を持ち寄り、情報をシェアしました。

 私が持っていったのは、アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』。第2次世界大戦で、戦争に参加した女性たちについて書かれた本です。看護要員や軍医としてだけでなく、兵士として戦った女性たちもたくさん出てきます。この本をきっかけに、戦争のグロテスクさや、幼い少女たちが戦争に駆り出される異様さ、女性たちの戦争について話が膨らみました。メンバーがお勧めしてくれた本もとても面白そうでした。次回以降の読書会で読めたらなあ、と思います。

みんなで沖縄を学ぶ

 同世代がもっと気軽に沖縄を語ってほしい。その思いから、あなたの沖縄では、個人の体験から沖縄を考え始めることを大切にしています。今いる場所から出発して、沖縄をめぐる様々な問題に考えを巡らせてほしいと考えています。しかし、自分の体験がどう沖縄と繋がるのかを一人で考えるのは、至難の業です。みんなと一緒に、沖縄で過去に何が起きたのか、上の世代の人たちが沖縄とどう向き合っていたのかを学ぶ。そうすれば、自分の体験と沖縄を結びつけられるのではないか。だから、あなたの沖縄で読書会を始めたのです。
 今後も読書会を続けていきますので、応援のほど、よろしくお願いします!

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