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おすすめの本

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文化・芸術・デザイン・宇宙・絵本を中心に、おすすめの本を紹介しています
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記事一覧

「見えない/見える ことについての考察」ダンサー森山未來の表現

国境やジャンルを超えた表現者:ダンサー 森山未來の果てない魅力にも書いたのですが、私はダンサー森山未來くんがとても好きです。 今年はコロナ禍にあって、各種イベントや公演などを開催することが難しい中、今年も森山未來くんの舞台を見ることができると知り、観に行ってきました! 「見えない/見える ことについての考察」というタイトル。 「私たちは見えなくなったんじゃない。もともと見えてなかったのよ」 ゆらぐ残像(ポストイメージ)、響き合う声、 森山未來が誘う「ほんとうに見ること」

東と西の植物図鑑

「世界で一番美しい○○」のようなタイトルで、動植物を扱った図鑑をよく見かけるようになり、図鑑好きのひとりとしては嬉しい限りですなのですが、その魅力は、植物図鑑なら、葉脈を忠実に捉えていたり、葉に生えている毛の一本一本までを生き生きと描いている様。 昆虫だったら、吸い込まれそうな眼球の細かな描写や、玉虫色の美しさをドラマチックに再現していたりする繊細なタッチと、どれも小宇宙に現れる神秘的な美しさに惹かれるのです。 そんな図鑑好きにはたまらない場所が、東京駅丸の内南口を出てす

"へたでいい":映画「モリのいる場所」より

映画「モリのいる場所」のワンシーン。 息子が描いた絵を見てくれ、と知り合いから言われたモリは「へただな」と答えます。そして、その後に続くセリフが以下。 へたでいい へたも絵のうち うまいと先がみえてしまう モリが朴訥とつぶやくこのシーンが、私は一番心に残っています。 とてもシンプルだけれど、強く心に響くこのことば。 うまいとか、へたとか、人それぞれの表現、受け取った人の感想は千差万別のはずなのに、いつの間にか評価や点数がつけられ、上下や優劣が決まってしまう窮屈な世界

13歳の時に出会っていたかった本!「13歳からのアート思考」

ここ数年、デザイン思考やアート思考という言葉がよく聞かれるようになってきたかと思います。私はグラフィックデザイナーで、アートが好きということもあって、これらの思考が認知され始めたことをとても嬉しく思います。 というのも、仕事や学びの過程で思ってはいるものの、説明が難しい概念を、論理的に体系立て、そして分かりやすく言語化されたことに感激するからです。 デザイン思考やアート思考について、これまで何冊か本を読んだり、トークイベントやワークショップなどにも参加して、より自分の中に

ハワイ語は音だけの言語だった:自然と響きあう優しい音

私は旅行に行くときに、その土地についてたくさん知りたいという思いが強いので、旅行前後で本を買ったり、インターネットで調べたりすることが好きなのです。2年前にハワイ島に行ったときにも色々と調べたのですが、とても興味深い文化だなぁ、と魅了されました。 世界のことばで「こんにちは」:そこにある共通点とは?の記事でも少し触れたのですが、今日はハワイ語についてです。 ハワイ島では、ホテルで、お店で、それからハワイアン航空のアナウンスでも、最初に「アロハ!」と挨拶をして、最後に「マハ

立ち戻るための本:「センス・オブ・ワンダー」

私の好きな英単語のひとつに、Wonder(ワンダー)があります。 Wonder(ワンダー)は、美しいものなどを見た時の、感嘆や驚きを表す英語です。感嘆、驚嘆、賞賛、奇跡、素晴らしい、極めて優れたと感じた時に表現する言葉です。それから、何だか分からないけれど、不思議で素敵な現象、みたいな印象があります。 有名なのは、Winter Wonder Land(ウィンター・ワンダー・ランド)がありますね。クリスマスソングで、雪がキラキラ光る夢のような冬の世界で過ごす、幸せな時間につ

よいデザインをしたい?それじゃあ、十五夜の月を眺めてみようか。DRAFT代表、宮田識さんから学んだこと

グラフィックデザインをお仕事にしている方は、DRAFT(ドラフト)という会社をご存知だと思いますが、そうでない方も、キリンの生茶、世界のキッチンから、ラコステ、モスバーガーの広告は見たことがある方が多いと思います。 DRAFTは、広告宣伝、販売促進の企画制作、CI、VIの企画制作、ブランドの開発を手がけるデザイン会社です。以前、日本を代表するデザイン会社の社長、宮田識さんのお話を聞く機会があり、とても勉強になったのでご紹介します。 お話のテーマは、「働くこと・生きること」

「一瞬一粒(ひとつひとつ)に想いを込めてつくる」。東京都大田区の和菓子屋さん:wagashi asobi

今日は、東京都大田区にある和菓子屋さん「wagashi asobi」のご紹介です。 「一瞬一粒(ひとつひとつ)に想いを込めてつくる」を理念にした和菓子職人3人のブランド。以前、代表の稲葉基大さんから、ブランドについてのお話を聞かせて頂く機会がありました。その時、このブランドを初めて知ったのですが、とても素敵な考えを持ってお仕事をされています。 稲葉さんは、虎屋さんで長くお勤めされていて、ニューヨーク支店での勤務もされていたそうですが、帰国後独立され今年で9年目。この「wa

夢二の夢はどんな夢?

竹久夢二のこだわり「浴衣は無雑作に着るべきもの」のnoteの続きで、竹久夢二についてです。 竹久夢二の世界観は、線が細くしなやかで、色鮮やかな世界はまるで夢のようですよね。西洋の文化が入り始め、和と洋が混じり合い、恋愛が謳歌され、大衆文化が花開いた大正時代。たった15年という短さに儚いイメージも重なって、何ともうっとりしてしまう、まどろみのような時代。 時代の雰囲気に見事にマッチしていた夢二ですが、今日は画家としてより詩人としての夢二に注目してみたいと思います。 実は、

おすすめ本:「光と窓」カシワイさん

私は読書が好きで、毎日何かの本を読んでいます。 多いのは、文化芸術に関するもの、解説本もあれば図録なども。他には、思想や哲学、宇宙論、精神世界も読みます。文学は今はあまり読みませんが、絵本を出版することもあって、最近は童話やおとぎ話も読んでいます。それから、絵本と詩も最近よく買います。 図録や絵本など、ヴィジュアルがメインの本は、デザインやイラスト、絵を目的として、それから、文字(情報)がメインの本は内容を目的にしているので、買うときは結構吟味します。なので、ジャケ買いは

シンプルだけれど、豊かさの最高の表現:"春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷しかりけり"

私は世界の様々な文化芸術に興味があり、思想や宗教の本も読んだりしますが、禅の教えはしっくりくるものがあって(芸術面でも素晴らしい)、色々と学んでいます。 禅に興味を持った理由は、一冊の本との出会いです。「道元「禅」の言葉 境野勝悟 著」という本。 本屋さんで特集コーナーがあったんでしょうか。何かのご縁でこの本を手に取ってみたのですが、とても分かりやすく身近に思えたので、購入しました。 4章にまとまっていて、全部で100話あります。 第1章 「本当に大事なもの」に気づく

読書感想:川端康成「美しい日本の私」

noteを書いている途中で、そう言えばあれもこれもと、連想ゲームのように書きたいことが増えていくのですが、今日は以下のnoteから派生した、続編のような内容です。 シンプルだけれど、豊かさの最高の表現:"春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷しかりけり" このnoteの補足で「美しい日本の私」という川端康成の本を紹介したのですが、今日はこの本をメインに書いていきますね。 1968年、川端康成は日本人として初のノーベル文学賞を授与され、ストックホルムでの授賞式には紋

世界的ロングセラー:絵本「おおきな木」を今ならどう読む?

私が「おおきな木」に出会ったのは小学生の頃。1964年にアメリカで出版され、1976年に日本で出版されました。30カ国以上で翻訳されていて、今なお売れ続けているロングセラーの名作です。10年前に村上春樹さんが翻訳をしたことで、再び脚光を浴びましたよね。 私とこの本との関係は、思い立ってふと読み返すような大切な絵本なのです。作者のシェル・シルヴァスタインさんが亡くなって21年経ちますが、今も売れ続けているということは、年代問わず、心に深く印象づけられている人が世界中にいるとい

気になる一文、どう訳す?絵本「おおきな木」より

前回のnote、世界的ロングセラー:絵本「おおきな木」を今ならどう読む?では、この絵本の全体について書いたのですが、今日はどうしても気になる一文があるので、ひとつの記事として書いていきます。 シンプルな表現ほど解釈の幅が広がるので、名作につながるんだろうな、と思うのですが、この絵本も例外ではないです。中でも、解釈が分かれるのがこの一文。 ”And tree was happy…. but not really”. ※原文(英語版)だと、りんごの木のことを”She”と表現し