(ソネット) 「鏡」




彼女の瞳は遥かな記憶を喚び醒ます
青く暗い輝きを湛えた池
不毛の土地を百合の生命 いのちで照らし
風が辿り着く場所までその葉を運ぶ

伝説の高貴な女王が 民にかけた
解けない謎のような言葉の数々は
あなたの水面に何を結んだのか
いや何を描かなかったか

彼女の隠れた眼差しの輪に
私は自分の古い傷痕を浸してみる
泉はやがて五月の香気で溢れ始める

猫のように俊敏で
氷のように冷厳な
あなたの鏡の淵に立ち尽くしながら