ありがとう　と言わない人は、
いつも泣いていました。

ありがとう　と言わない人は、
泣き疲れて眠りました。

眠って　眠って　眠りました。

目が覚めると　お腹が空いていたので、
また泣きました。

泣いて　泣いて　泣いていたら、
美味しそうな匂いがしたので、
反射的にしゃぶりつきました。

ごくり　ごくりと飲みました。

お腹はいっぱいに満たされて、
ほっぺたが　ゆるゆるしてきました。

それからしばらく宙を見つめて、
ぼんやり　ぼんやりしていたら、
覗き込む大きな顔が見えました。

大きな顔は笑っていたので、
なんだかとても安心しました。

安心したとたん、お尻がもぞもぞしてきました。
もぞもぞするので泣きました。

泣いて　泣いて　泣きました。

大きな顔も泣きそうでした。

お尻がもぞもぞするよと泣き続けると、
大きな顔はお尻のもぞもぞの正体を、
すっきりと取り替えてくれました。

それでも　ありがとう　とは言いません。

ありがとう　を知りません。

そして、微笑みながら言いました。

「まんま！まんま！」

（おわり）

🔸#シロクマ文芸部 に参加させていただきました。
「ありがとう」ありがとうございました♪
楽しかったです🍼✨

ありがとう。という言葉がまだなかった頃、人間はどうやって心を通わせていたのだろうか？と考えていたら、赤ちゃんになりました。
言葉がなくても心が通じる能力を、人間は生まれながらに持っている。それを強く信じたいと時々思います。
言葉があることで心を隠してしまう人間はとても複雑で面倒だなと思います。（自分も含めてです。）