見出し画像

採用はマーケティング④ ~どこまで言うのか、隠すのか~

転職して、「そんなの聞いてない」に遭遇するのはそれほど珍しいことではないと思う。そんな場面はなるべく少なくしたいけれど、そのリスクも含めて転職だと思っている。

ただ、今回の転職は、その数があまりにも多いと感じている。

■ リモートワーク
私はフルリモートが良かったので、面接で確認した。「必要に応じて出社することもありますが、フルリモートが基本です」。そう答えをもらっていた。

が、入ってみたら、週2回の出社義務。曜日も決められている。
聞くところによると、私が入社する前の月からそういうルールになったとのこと。でも、それが社内で発表されたのは私の面接の前。ということは、面接のタイミングで、既にこのルール変更は決まっていたということ。でも私がもらった回答は、面接時点での運用方法だった。
予定していた引っ越し、いったん白紙。

■ 休暇
面接で「弊社は有給休暇の数が多いんですよ」とアピールされた。確かに、入社1年目から付与される有休の日数は他社よりも多かった。お、良いね、嬉しいね、と思った。

が、入ってみたら、祝日が出勤日。
つまり、お休みは土日+多めの有給休暇。祝日は通常の出勤日で、有給取得推奨日となっている。祝日の日数を数えたわけではないので、手持ちの有給から祝日をひいたら何日残るか分からないが、それほど多くはないだろう。
え?と思って採用通知書を見てみたら、確かに「祝日休み」の記載はない。「会社と労働組合との年間休日協定による」とあった。あ、いや、それに気づかなかった私が悪いけど。業界的に祝日が出勤日というのは当然なのかもしれないけれど、他業界から来る人には一応説明しておこうとは思ってもらえなかったか。それくらい言ってよーと思う私は、求めすぎなんだろうか。

■ 評価
評価制度を面接で聞いた。上司からの評価のみですか、360度ですかと。「上司からだけではありません。他のメンバーの声も聞きます」と言われた。その時にいわゆる360度評価を行うか否かははっきり言わなかったと記憶している。

入ってみたら、上司による評価のみ。
360度評価が実施されることもあるが、それは何かが問題になったときや昇格の候補になったときなど、特別な事情があるときだけらしい。まあ、面接での回答は、間違っちゃいないけど。

その他、面接で「4月から解禁の予定」と言われた副業については、もう何年もそれを言い続けているらしいし、「ぜひ積極的に受けてください」と言われた昇格試験は、上が詰まっていて、受験さえできないらしい。

+++++
あぁ、採用活動ってマーケティングだ、とここでも思う。
入社候補者(=買い手)がネガティブに捉えるかもしれない情報をどこまで言うのか、隠すのか。嘘にならない範囲で「いい感じ」に伝えてアピールし、入社させる(=買わせる)。
入社したら(=購入したら)本当のことは分かるのだから、そのマーケティング行動が正なのか否なのかは場合によるだろうけれど、今回の場合は、私は会社(=売り手)の不誠実さを感じてしまった。

会社からしたら、入社(=購入)させることをゴールに据えるならば成功、でもブランディング強化、ロイヤルティの醸成は失敗。カスタマーエクスペリエンス的には最悪だ。

とにかく人を採用して、そのポジションをうめるのが人事のミッションなんだろうか。そのプレッシャーによってこういう策に出たのかもしれない。採用したら、その後のことは現場と当人で、ということなんだろうか。入社すればこっちのもの、的な?
事情は分からないではないけれど、あまりにも人に対して不誠実ではありませんか。

物やサービスを売るとき、買い手にとってのネガをどこまで伝えるのが良いのだろう。ネガばかり大公開すれば当然買わなくなる。でも本当のことは伝えたうえで、その人にとって合わないものなら、無理して売らなくて良いんじゃないかな。ごまかして買い手のテンション上げて買ってもらっても、本当のことに気付いたときの気持ちの落差はすごいもの。そしてその人の気持ちはもう戻ってこないだろう。

ここで重要なのは、予め本当のことを聞いたからといって、必ずしも買わない判断に至るわけではないということ。
つまり、前述の例で言えば、週2日出社・祝日は勤務日・評価は上司のみと知ったからといって、「なら入社しない」と全員が判断するわけではない。でもやっぱり、それを知った上で入社を決めるのとそうでないのは、気持ち的に大きな違いがある。

これ以上、「そんなの聞いてない」が出てきませんように。
いつか採用担当の方に、その背景をシンプルに聞いてみたいなと思いながら、新しい仕事を覚える毎日です。

今日も読んでくださりありがとうございました。

(今日の1枚は、2016年11月、ミャンマーにて。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?