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舞台 「熱海殺人事件」 観劇レビュー 2021/03/19

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【写真引用元】
うさぎストライプ公式Twitter
https://twitter.com/usagi_stripe

公演タイトル:「熱海殺人事件」
劇団:うさぎストライプ
劇場:こまばアゴラ劇場
作:つかこうへい
演出:大池容子
出演:佐藤滋、実近順次、高畑こと美、木村巴秋
公演期間:3/10〜3/21(東京)
上演時間:約110分
作品キーワード:つかこうへい、アングラ劇、会話劇、戯曲
個人評価:★★★★★☆☆☆☆☆


3度目のつかこうへい作「熱海殺人事件」の観劇だったが、普段私が観劇するのは岡村俊一さん演出の作品なので、それ以外のそして小劇場での当作品の観劇は初めて。青年団の佐藤滋さんを木村伝兵衛役に据えて、演出をうさぎストライプの大池容子さんが行うという「佐藤滋とうさぎストライプ」という普段のうさぎストライプとは一味変わった座組での作品。
どうしても岡村さん演出の「熱海殺人事件」と比較しての感想になってしまうのだが、今作品は予想した以上に4人の登場人物のバランスが整った作品に感じた。私が今まで観てきた岡村さん演出の作品は、木村伝兵衛役の味方良介さんと熊田留吉役の石田明さんの印象が強すぎて、婦人警官や大山金太郎役のキャストの印象が薄くなってしまう傾向があったが、今作品はそれが全く無く、むしろ大山金太郎役の木村巴秋さんの好演が光る作品になっていた点が凄く良かった。
また「熱海殺人事件」というと熱量、熱量といった熱苦しさを感じさせる印象(良い意味で)があったが、静かな会話劇を得意とする青年団・うさぎストライプが作品を作ると非常に脚本に忠実で安定感のある作品に感じられた。つかこうへいがこの脚本で訴えたいメッセージ性が凄く伝わった気がした。
ただ、個人的な好みで言えば岡村さん演出の方が良かったかなという所感。熱量みたいなものがあまり感じられないと終盤の大山と山口アイ子との海岸シーンは冗長に感じられてやや飽きてしまった。
「熱海殺人事件」という作品に過去触れたことがある方にはオススメしたい作品。触れたことない方には岡村さん演出の方をオススメしたい。

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【鑑賞動機】

普段岡村俊一さん演出の「熱海殺人事件」ばかりを観てきて、他の方が演出される「熱海殺人事件」に興味を惹かれたから。また、今作は静かな会話劇を得意とするうさぎストライプの大池容子さんが演出をされて演劇業界の著名人も注目していたこともあり観劇することにした。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

ストーリーについては、「熱海殺人事件 ラストレジェンド」でも記載しているので簡単に触れておく。

舞台は東京警視庁、刑事部長を務める木村伝兵衛(佐藤滋)はチャイコフスキーの「白鳥の湖」の音楽をかけながら電話をしている。
そこへ、富山の地方県警から赴任してきた刑事の熊田留吉(実近順次)が旅行カバンを持って東京警視庁にやってくる。熊田は、木村伝兵衛と彼と共に仕事をする婦人警官の片桐ハナ子(高畑こと美)のイチャつきぶりやいい加減な仕事の裁きぶりにタジタジとなる。
そこで、木村は熊田に対して東京警視庁へ赴任後の初めての事件捜査の依頼をする。それは熱海の海岸で山口アイ子という女性が殺害された事件で、死体の第一発見者は地元の消防員である山田太郎という人物で、どうやら犯行に及んだ人物は大山金太郎という男らしい。
熊田は早速、その容疑者となっている大山金太郎を逮捕して東京警視庁に連行する。

ここで、音楽「南から来た用心棒」が流れながら、木村伝兵衛がキャストを一人ずつ紹介する。


大山金太郎(木村巴秋)が東京警視庁に連行される。木村たちは熱海の海岸で女性を殺した犯人なのだから、たいそうイカした人物に違いないとそう思っていたが、大山のサングラスを外すに、黒メガネのかけた大人しそうな青年であることに驚く。
そこから、木村・熊田から大山に対する山口アイ子殺害までの経緯を尋問が始まる。そこで浮き彫りになったことが、山口アイ子が「海がみたいなあ。」と大山に言った場所が居酒屋ではなく喫茶店であったり、その時頼んでいた飲み物が紅茶であったりと殺人犯らしからぬシチュエーションであったため、熊田は喫茶店ではなくスナックだと証言させようとしたり、紅茶でなく酒を飲んでいたと証言させようとしていた。
また、そこからなぜ山口アイ子を殺害したのかについての尋問が始まるが、木村や熊田が期待していた展開に落ち着かず、山口アイ子が新しい恋人と2人で海岸を歩いていた嫉妬から大山が三角関係のもつれによる殺害に強引に着地させようとするなど、メチャクチャな展開となる。

大山が一人で寸劇を始める。熱海で山口アイ子と2人で海岸に来た時の寸劇。相手の山口アイ子役には、婦人警官の片桐ハナ子が入る。
大山は山口アイ子と熱海の海岸で良い感じになった所で、彼女に告白をする。俺の胸に飛び込んで来いと。しかし山口アイ子は彼をふってしまう。自分は東京に染まりたい、田舎地味た生活から逃れたい、だからいつまでも田舎者らしく振る舞っている大山とは付き合わないのだと。
大山は振られたショックから衝動的に落ちていた紐を取出して彼女の首を締めて殺害してしまう。
そんな寸劇の様子を見ていた木村は、大山を花束で叩きのめす。

木村は大山を検察庁へ送迎する車へと連れて行く際に、音楽チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第一番」を流す。大山は立ち去る。
婦人警官の片桐は静岡で結婚式を挙げるということで、東京警視庁を後にする。
一方熊田に関しては、地方の富山に戻ってささやかな犯罪を愛して働きたいと木村に告げる。最後に熊田は木村のタバコに火を付けて物語は終了。
最後に音楽「Let It Be Me」が流れる。


今作の「熱海殺人事件」は極めて原作の脚本に忠実に上演されていたという印象である。上記では触れていないが、大山と山口アイ子を演じる片桐ハナ子とのシーンでは、「偏見」を「ヘンミ」と誤読する描写もしっかり盛り込まれていた(岡村さん演出の作品ではなかった気がしている)し、片桐が山口アイ子を最初に演じた時に大山とのギャップがあって不釣り合いだった演出も入っていて、改めてつかこうへいの「熱海殺人事件」の戯曲について深く知ることが出来た。
そして、これは考察部分でも触れる話だが、木村と熊田が大山に対して事件について尋問する際に、明確な主従関係の構造が見られた点は凄く興味深かった。今まで岡村さん演出で作品を観劇していた時は気づかなかった点だが、その主従関係が「国家と国民」だったり「演出家と役者」だったりと、権威の強い人間が事実を虚構として片付けようとする構造が凄く今作は分かりやすかった。そこにこの作品の普遍的なテーマがあるのだと勉強になった。

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【世界観・演出】(※ネタバレあり)

個人的には「熱海殺人事件」での世界観・演出は物凄く大好きで、こまばアゴラ劇場という小劇場でも私の好みの演出がしっかり盛り込まれていて大満足だったので、舞台装置、照明、音響、その他演出の順に良かった点を書き記していく。

まずは舞台装置だが、客入れ時に舞台上にセットされている古めかしく存在感のある黒い卓と、天井で回っているシーリングファンのシンプルかつインパクト大な舞台装置に感激した。これから「熱海殺人事件」が始まるぞという感じがして凄く興奮したので素晴らしかった。
この木村伝兵衛の書斎の卓は、「熱海殺人事件」では必需品だと思うが、天井で回るシーリングファンというのはなかなか面白かった。たしか岡村さん演出の作品にはなかった舞台装置だと思っている。このシーリングファンが照明による影で舞台床で大きくクルクル回るシルエットが凄く好みだった。言葉に言い表せないが凄く素敵だった。
あとは、舞台奥に立てかけられていた正方形の板のようなタイルのような木造のものを一つ間隔置きに敷き詰められた壁のような装置。この装置は、物語後半で熊田が窓越しに外へ向かって言葉を発する際の窓として利用される。これも雰囲気に合っていて好きだった。
舞台上手にあった婦人警官片桐ハナ子用のデスクも年季が入っていて良かった。

次に照明だが、これはアゴラ劇場のそもそもの施設上の問題かもしれないが、岡村さん演出のようにカラフルな照明をガバーと舞台いっぱいに照らすド派手な照明演出はなく、会話劇出身のうさぎストライプ・青年団らしくひっそりとした演出が多かった。
例えば、大山が東京警視庁へ連行される直前の木村伝兵衛がキャスト一人一人を紹介する場面で、照明のスポットが木村にいい塩梅で当たる照明演出が良かったり、客席側にいた大山にスポットがフワッと当たるシーンも凄く良かった。これはこれでアリだなといった印象だった。
あとは、一番最後で暗転する時の暗転の仕方も素晴らしかった。じんわりじんわり余韻を残しながらの最後の暗転、この暗転に熊田と木村の別れを惜しむような寂しさも個人的には感じられて好きだった。哀愁漂う感じの暗転と言ったら良いのか、素敵だった。

音響に関してはもう素晴らしいの一言だった。戯曲に忠実に音楽を流していると思うので、いかにつかこうへいが選曲した音楽たちが戯曲にフィットしていたかを痛感させられる。
一番最初にかかるチャイコフスキーの「白鳥の湖」、あのかかり方が凄く良い。最初に木村伝兵衛が静かに登場して、卓に着いて、手を挙げて合図をした瞬間にフワっと優しく「白鳥の湖」が流れる。岡村さん演出にはないソフトなタッチによる演出がとても良かった。こんな「熱海殺人事件」もアリだなとつくづく感じる。
そして、劇中で度々流れる昭和レトロな歌謡曲や洋楽たち。これも全てがハマっていて良かった。岡村さん演出ではかなりアレンジが加わっていて、台本には書かれていない曲を流すシーンなどを観てきたが、シンプルに昔の歌謡曲や洋楽を流す音響演出も良いなと感じた。
最後の方にかかったチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲1番」は、音楽のきっかけを覚えていないがいきなり入った感じがあったような。ここは岡村さん演出の方がしっくりきた気がした。

「熱海殺人事件」には有名な演出が至る所にあるが、特に印象に残った箇所についてさらっていく。
まずは、チャイコフスキーの「白鳥の湖」が流れながら木村が電話で怒号をぶつけるシーン。あの曲の入り方的に想像のつかない展開だったが、佐藤滋さんの好演があってか違和感なく電話での怒号が舞台に乗っていたという感じ。
そして一番印象に残った、オープニング?シーン。「南から来た用心棒」「マイ・ウェイ」「タラのテーマ」が流れる中で、ゆっくりと木村がキャストを紹介し、やがて客席にいる大山へとスポットが当たるシーン。あそこの照明、音響、演出のバランスがなんとも絶妙だった。個人的に今回一番好きだった演出だった。
大山と山口アイ子を演じる片桐ハナ子の、体操着を着て最初は不釣り合いな大根役者のような寸劇から、徐々に2人の距離感が縮まっていってドラマチックになっていくシーンの演出。あそこは、ちょっと冗長であるようにも感じられるが、エモさみたいなものは凄く伝わった。それまで個人的には片桐ハナ子に対して異性としての魅力はあまり感じられなかった(失礼)が、このシーンで一気にエモさが唆られた。
そして、「熱海殺人事件」の中で有名な木村が花束で大山を叩きのめすシーン。正直ここに関しては、岡村さん演出みたいに花束まで粉々に粉砕しながら叩きのめして欲しかった、というかそれを観たかった。今作では花束の中に仕込まれていた金色の紙くずが叩きのめすことで飛び出す仕組みになっていた感じ、ちょっと残念だった。
そして最後の、木村と熊田がタバコの火を付け合うシーン。熊田が木村のタバコに火を付けてくれず「?」となる木村が凄く良かった。本当に、タバコの煙がこの作品には似合っている。タバコの煙が舞台上にモワッと蔓延して終わる辺りが凄く好き。「熊田君、もう少し人間というものを買いかぶってみたらどうかね。」この台詞は最高。

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【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

今回の舞台で初めて演技を拝見する4人、彼らについて思ったことを書き記しておく。

まずは、木村伝兵衛役を演じた青年団所属の佐藤滋さん。木村伝兵衛らしくカリスマ性に富んだ威圧感のあるキャラクターだった。どうしても岡村さん演出で木村伝兵衛役を演じる味方良介さんと比較してしまうのだが、味方さんの迫力がありすぎて佐藤滋さんの木村には迫力不足な部分を物凄く感じたが、全体的なバランスとしては丁度良かったかなという印象。
特に佐藤滋さんのたまに笑いを取りにかかるような、少し間の抜けた木村伝兵衛は味方さんにはない特徴。そして顔芸がお上手で、「?」ってなる表情だったりが凄く滑稽に感じる。うさぎストライプとしての「熱海殺人事件」ではハマり役だったと思う。

次に熊田留吉役を演じた実近順次さん。思ったより年寄りに見える熊田が登場したなという感じ。私のイメージだと凄く若い印象なので、実近さんが演じるとなるとオジさんのように見えるのが凄く新鮮だった。
そしてこちらも岡村さん演出で熊田を演じるNON STYLEの石田明さんと比較をしてしまうのだが、今回の作品の熊田は石田さんと比較して凄く控えめな印象で、より地方から赴任してきたという感じが強かったかなという感じだった。岡村さん演出での熊田は、割と存在感が強くてある意味圧倒的存在感を誇っている木村と釣り合っている印象だが、今作における熊田は個人的にはかなり薄い存在感だったと認識している。
そして、終盤の方で熊田がパンツ一丁になるシーンがあるが、この人そういう演技するんだ・・・という感じに見えてしまった。ギャップがあって良かったというよりは、違和感の方が強かった。

そして、婦人警官の片桐ハナ子を演じた高畑こと美さん。調べてみたらこの女優は、高畑淳子さんの娘さんであることに驚き。個人的には凄くハマっている役だと思ったし、こんな婦人警官もアリだなと思わせてくれるキャラクター設定で良かった。
岡村さん演出では、割と華のある女性キャストを抜擢(私が過去観たものでは、元欅坂46の今泉佑唯さんや元宝塚女優の愛原実花さん)する傾向だったが、高畑さんは大和撫子といったザ・日本人的な女優なので、日本風のお硬い婦人警官服が物凄く似合うし、凄く上品な感じも今作の「熱海殺人事件」には似合っていて良かった。原作自身もそういった婦人警官を想起して書き起こされたに違いない。
大山と山口アイ子の2人のシーンでは、凄く田舎娘感溢れていてお笑い芸人のいとうあさこに近いお転婆さを感じて良かった。

最後に、大山金太郎役の青年団所属の木村巴秋さん。個人的に今作のMVPはこの方だと思っている。非常に素晴らしい大山金太郎を演じられていた。
岡村さん演出での大山金太郎役は、いつも味方さん、石田明さんの迫力に押されてしまってインパクトが弱くて不釣り合いな感じに見受けられるのだが、今作では大山金太郎としてのキャラクターを存分に作品全体に発揮出来ていた印象だった。それは偏に、木村さんの演技力の賜物だと思う。
今作の大山金太郎には非常に愛嬌というものを感じた。どう見ても殺人を犯しそうにない優しい風貌がとても作品に合っていて、柔らかく訛りを話す演技が非常にナチュラルで素晴らしかった。
特に山口アイ子とのシーン。山口と徐々に距離を縮めていく感じが好き。
木村さん演じる大山金太郎がしっかりキャラクターを出せていたことによって、4人キャストで見た時の全体のバランスが取れていたように思える。

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【舞台の考察】(※ネタバレあり)

今回の作品は、静かな会話劇を主体とする平田オリザさんと、アングラ劇第二世代といわれるつかこうへいさんの2人にインスピレーションされたうさぎストライプの大池容子さん演出の作品で、この2つの静的、動的のような正反対の作風が融合することによって、どんな作品が生まれるのかという部分を期待しながら、多くの演劇界隈の人々が楽しみにしていた作品であると思っている。
そして私自身としても、今まで岡村俊一さん演出の「熱海殺人事件」しか観てこなかったので、アゴラ劇場という小劇場で「熱海殺人事件」をやったらどうなるか、青年団等の会話劇主体の俳優が演じたらどうなるかを期待して観劇した。

そして観終わった個人的な感想としては、やはり岡村さん演出の「熱海殺人事件」の方が好きだったかなという感じである。理由としては、私が「熱海殺人事件」で一番期待することは迫力と熱量であるからだ。岡村さん演出はそこをしっかりと答えてくれる。ガバーっとカラフルな照明を照らして、味方さん演じる木村伝兵衛、石田さん演じる熊田留吉が体を張って熱くつかこうへい戯曲の台詞を語る。その素晴らしさに勝るものはなかった。
勿論、今回の「熱海殺人事件」も良かった点は沢山あるが、イマイチ私の満足度を高めてくれるものではなかったという印象である。

ではここから、岡村さん演出にはなかったうさぎストライプの「熱海殺人事件」だからこそ良かった部分について触れていく。
まずは、4人のキャストのバランスがよく取れていたということである。今回の作品全体に流れるソフトタッチな演出に4人全員が上手くハマっていて、岡村さん演出以上にバランスの取れた作品になっていたかなと思っている。木村伝兵衛役を演じた佐藤滋さんも、たしかに舞台のムードを作っていくカリスマ性的な側面はあったものの、他の3人のキャストにも合わせて行き過ぎないようにしている感じが垣間見られた。その分、大山金太郎役の木村巴秋さんのインパクトがしっかり感じられて、上手く釣り合っていた。
次に、選曲が物凄くハマっていたということである。岡村さん演出であると、多少遊び心もあってかちょっとふざけた部分が垣間見られるのだが、今作は非常に忠実に脚本に書かれた音楽を流しているので、昭和レトロな雰囲気とクラシック音楽の持つ古くて力強さを感じられる箇所が上手く融合して、非常に洗練された印象を持った。
そして、つかこうへいさんの脚本が訴えるメッセージ性に気が付きやすかったのも大きな特徴だと思っている。特に、木村・熊田が大山へ事件について尋問する時の、事実を虚構に変えようとする力が、正に「国家と国民」「演出家と役者」という主従関係のような権威の振る舞い方を暗示していて、凄くこの作品が突いているメッセージ性は普遍性を伴っていると感じた。そのメッセージ性をしっかりと汲み取れるようなシンプルな演出だった点は、凄くプラス要因だと思っている。

こうやって、同じ戯曲に対して様々な演出家やキャストが演じる舞台を観劇すると、改めて戯曲としての良さであったり、作風の違いなんかが見られて演劇の面白さ、奥行きの深さを感じることが出来た。
「熱海殺人事件」は「ロンゲスト・スプリング」や「モンテカルロ・イリュージョン」など脚色された台本も他に沢山存在して、それらの作品についてもいつかは触れてみたいと思ったのと、初めて「熱海殺人事件」が上演された時の映像も観てみたいと思った。おそらく、このうさぎストライプ版「熱海殺人事件」の方が岡村さん演出より初演作に近いだろうと思いつつ、何か違いがあるはずなので。
3回観劇してみて、毎度新たな発見がもたらされる「熱海殺人事件」は素晴らしい作品である。

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