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読んでよかった!「ヒキコモリ漂流記(山田ルイ53世」


「ルネッサンス!」の山田ルイ53世の自伝。

スポーツもでき,勉強もできる。バレンタインデーには女の子からチョコレートももらえる。そんな完璧な山田少年にあるとき悲劇が起きる。

中学校の登校中,うんちをもらしてしまう。それ以来,学校に行けなくなる。ひきこもりになる。

その後,大検に合格して,愛媛大学へ。しかし,退学し,失踪。芸人を目指す。

なぜ引きこもりになったのか。なぜ立ち直れたのか。そんなことをいろいろ考えてみることはできる。たぶん,なんにでも原因はあるんだろう。でも,わかったからって,なんなんだろ。ドラマにみたいに,失敗した,そのときに戻って,人生をやり直すわけにもいかないし。過去は変わらない。

それより,どうして,山田ルイ53世はうんちをもらしたことやその前後を詳細に書くことができたんだろう。帯には,「神童の運命はウンコで変わった!」とまで書いてある。うんちをもらした当時の山田少年が,この本を読んだら,どう思うんだろう。怒り狂って,失神するんじゃないだろうか。

あれ?過去は変わるのかな?意味が変わってくるのか?

じゃあ,どういうふうに変わったんだるう。

帯には「やり直しのルール」ってあるけど,あるときがダメで,それを乗り越えて,よい今があるとか,そういう話でもない。いろいろあったけど,人間万事塞翁馬,みたいな話でもない。禍福は糾える縄のごとしというわけでもない。

幸も不幸も,禍も福もなくて,全部,山田少年の大切な美しい物語のように思える。

この本は,自分がヒキコモリをする前に読んでもみてもいいし,自分が引きこもっている,まさに今,読んでみてもいい。自分の子どもがヒキコモリをする前に読んでみてもいいし,自分の子どもがひきこもったあとに読んでもいい。いつ読んでもいいけれども,死ぬ前には一度は読むべき本だと思う。

自分の人生のどんな場面でもあっても,やっぱり,それは自分の人生なんだとわかる。いいも,わるいも,なんにも,ない。

この記事の英語版


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