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猫の命日

2017年3月7日に実家で飼っていた猫が亡くなり、もう2年が経ちます。折を見てはツイッターなどに猫の画像を上げていたので、何となく存在を知ってくださっている方もいらっしゃるかもしれません。

こんにちは、村谷由香里です。
noteをご覧いただきありがとうございます。

猫の名前はフランと言って、やたら身体の大きなキジトラ柄のメス猫でした。キジトラのメスは警戒心が強いという話をよく聞きます。フランは生まれが野良ということもあって、人間にあまり懐かない猫でした。初対面の人間にはびびり散らすし、抱っこなんて絶対させてくれなかった。

家族のことは一応認識していて、母や妹には甘えた態度を取っていましたが、わたしはどうも嫌われているみたいでした。多分べたべた構いにいくのが嫌だったんでしょう。わたしが寄っていくといつも臨戦態勢になるので、母はわたしたちを見て声を上げて笑っていました。

いつもわたしを邪険に扱う彼女は、家にわたししかいないときだけ、寄ってきてそばにいました。あくまで妥協してここにいるのだ、という感じで。
勉強の邪魔をしてきたり、ぎりぎり手の届かない場所に転がって撫でろと要求したり、冬場は布団に潜り込んできたりした。布団に入れると狙い澄ましたように胃にダイレクトアタックをかけてきた、あの重さは忘れがたいです。

わたしのカメラロールにはフランの不機嫌そうな写真が山ほどあります。そしてそれは、2017年の春を境に、一枚も増えなくなりました。
もう世界のどこにもいないのだとわかる、ひとつの不在のかたちです。
彼女が亡くなる直前に帰省したとき、わたしは彼女のために何の手土産も持って帰らなかった。世界でいちばん良い缶詰を買って帰ってやれば良かった。そんなどうしようもない後悔を、今も思うことがあります。

フランが亡くなって、母は祖父の家に引っ越しました。本当はずっと祖父の家に移る話はあったのですが、猫は家につく生き物だからと先延ばしになっていたんですよね。フランが繋ぎ止めてくれていた古い借家は、あっという間に空っぽになり、もうすぐ取り壊されてマンションが建つそうです。

最近Googleストリートビューで、以前住んでいた家を見ました。それは2015年の写真で、まだ猫もわたしも、あの家で暮らしていたころのものでした。色褪せたカーテン、古びた窓、勝手口のすだれ、フランの散歩道。外に遊びにいったフランは、名前を呼べば必ず、高い声で鳴きながら玄関に帰ってきました。
この写真も、きっと、近いうちに更新されるのだろうと思います。

あれからわたしは彼女のことを、何度も文字にしています。わたしの書く物語に出てくる猫たちはみんな、フランの面影を残している。わたしのつく嘘の中で、今はもうどこにもいない彼女に、ずっと不機嫌な顔をしていてほしい。書くたびにかたちは変わるけれど、抜け落ちるものは必ずあるけれど、それでも忘れないように、何度も何度も、わたしは彼女を文字にしています。

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