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希少な野菜源としてのサンドイッチ

1月の末から2月の雪の夜までロンドンに行っていた。理由はなかった。ただ、思い立ったのだ。

思い立ったが吉日にも程があるのだが、全ての始まりはゴミ出しのスケジュールを管理しているGoogleカレンダーを開いたことだった。
明日は燃えるゴミか…アレ?このへん休める……アレ??待って…そこそこ貯金ある……どっか行こ!!なんなら海外行こ!!となったのだ。

急すぎる。急が故に、休みも取れるとはいえこんなに急に長期はちょっとなと言う思いもあり、水木金、土日を挟んで月曜日のスケジュールでどこかに行くことにした。ちなみにこの時点で行き先は決まっていない。
その勢いのまま「急だけどどっか行かない?」と夫に問うと、その急さに戸惑いつつも合わせて休みを取ってくれるという。ありがたい。

ではどこに…ということで考えた選び方が、
・どうせならヨーロッパ圏
・直行便がある
・都市部
であった。

具体的にはローマやパリ、フィンランドなども候補にあったが、最終的に私も夫も興味があり、かつこれまで行ったことがないと言う理由でロンドンに決めたのだった。

ロンドン、イギリス。
今まで、ひとつとしてご縁はなかった。
…いや、ご縁がなかったは完全に嘘になる。なぜならハリーポッターやシャーロックといった素晴らしい物語たち、大好きな作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバー氏、美味しい紅茶やショートブレッド、アンティークの家具などに巡り合い、触れてきてはいるのだ。
しかしこの身で訪れようとしたことは行き先を決めたこの瞬間までなかった。それが選択肢を並べて5分で決まったのだ。人生不思議すぎる。5分後のこともわからない。

そして行くのを決めた日付は次の週だったので、こんなタイミングで受け入れてくれる旅行会社のツアーはない。従って個人手配のフリープランとなるが、インターネッツのおかげで指先で全て完結してしまった。良い時代に生まれた。現地に暮らす友人にその旨を伝えるとフッ軽すぎると笑われてしまったが、自分でもそう思う。ゴミ出そうとしてロンドン行き決めてんだもんね。

かくしてあれよあれよという間に出発の日は来て、気がつけば我々は羽田空港にいた。

さて、私にとって海外旅行とは憧れや未知との出会いのきっかけであり、それと同時に野菜不足と同義である。

私は元来米と肉を愛して生きている。幼い頃どれほど、お肉とお米だけ食べられたらいいのにと願ったことか。食の嗜好と言うにはちょっと好きすぎる。健康でいたいナ♪という気持ちの芽生え、そして自炊に慣れるに伴って野菜のおいしさに気づいてからというもの昨今はめちゃくちゃ食卓に野菜が上るが、本質的な趣味嗜好は肉と米なのだ。

つまり旅先で心動かされる食べ物(食指が動くって言葉あるじゃないですか、まさにアレです)は大概お肉っぽく、お炭水化物っぽい。もともと旅先の食として"そういったものたち"が美味しいよ〜と躍り出てくるのもあるし、また旅先ならではというのも心憎く、どうせ今しか食べられないからということで私は躊躇なく本能に従ってしまうのだ。もちろんそれは帰国後の肌荒れとセットになっていると分かっていてもやめられないし、やめる気もない。なんなら醍醐味として味わい尽くしてるまである。

一度賢い友人と長旅をした時に「バイキングっぽいホテルの朝食でサラダや果物が出ないことは稀だから、朝に野菜を摂るんだよ」と教わって、目から鱗を鮮魚店丸々一軒分くらい落としてからなるべくそうしているが、しかしそれでも難しい。嗚呼、旅行先でお野菜、皆さんどうされてます?私はもう諦めているのです…

なのでせめてこちらにいる間は悪あがきとして野菜を…と思ったものの、思うような野菜源はないのであった。ラーメン、お寿司、うどんそば、普段ならワイワイ選ぶそれらはちょっと野菜が足りない。なんか、ないかな〜〜と思いながらフラフラしていると、お弁当屋さんにサンドイッチがあった。あ、これにしよう、と希少な野菜源としてそのサンドイッチを確保した。

いただいたサンドイッチは一口サイズが6種類ほど入っていて、具材の組み合わせ、マスタードやソースの使い方などひとつひとつが丁寧にこだわられた味わいでとても癒された。レタスやトマト、辛味を除かれた玉ねぎなども嬉しい。サラダほど野菜に対する満足感は得られなかったが、サンドイッチへの期待値を遥かに上回る美味しい体験をいただいてそれはそれは満足感の高い朝食だった。

実を言うと普段、サンドイッチは好きではあったもののあまり食べなかった。急いで済まそうとするときはいつもおにぎりを選んでいたが、サンドイッチがこんなに美味しいと知らなかっただけだとわかった。し、これからはサンドイッチの棚も楽しく見たいと思う。

旅の喜びのひとつに、「知っていたけどその価値を知らなかったものの再定義がなされる」というところも、そういえばあった。しかし行く前から価値観に彩りを加えてもらって幸先の良い旅である!

次の記事もまだ現地に着く前の話を書くが、旅は行く前から始まっているということでご容赦願いたい。

サンドイッチ、大好き。

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