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#42 日本高校サッカー選抜チームにトレーナーとして帯同して感じたこと

Twitterなどでもご報告させていただきましたが、先日ドイツで開催されたデュッセルドルフ国際ユース大会にて優勝することが出来ました。

今回は、この日本高校サッカー選抜チームにトレーナーとして帯同して感じたことについてまとめてみたいと思います。


チーム構成


【選手】
その年の高校サッカー選手権に出場した中から選抜された選手で構成されますが、一部出場していない選手も含まれており、
私が帯同したのは主に高校3年生を中心としたU18チーム(U17のチームも活動している)で、U18においては高校卒業後にプロではなく大学に進学する選手のみで構成されます。

【現場スタッフ】
監督、コーチ、GKコーチ、トレーナーそれぞれ1名ずつで構成されており、海外遠征時はドクター1名も帯同されます。
団長や総務、主務、広報等のスタッフもいらっしゃいましたが、そのほとんどは高校の教師の方々でした。

主な活動としては、


1月:選手選考会

2月:合宿(ネクストジェネレーションマッチ)

3月:デンソーカップ

4月:合宿〜ドイツ遠征

といった流れで、各4〜12日間程度の活動となりました。


帯同することになったきっかけ


今回で昨年に引き続き2年目の日本高校サッカー選抜での活動

2年前、まだ私は福島ユナイテッドFCにてトップチーム専属のS&Cコーチとして活動していました。

ただ、翌年からユースチームが立ち上がることもあり、自分の中ではそのシーズン限りでトップチームの専属は辞めて、アカデミーを中心に活動していこうと考えていた時に、当時トレーナーとして一緒に活動していたAくんから、

来年の日本高校サッカー選抜チームの監督が尚志高校(福島県)サッカー部の仲村監督が就任することが決まり、

監督が

「出来れば福島県で活動するトレーナーを1名帯同させたい」

という、福島を少しでも盛り上げたいという想いがあるとのことで、帯同が可能なトレーナーを探しているとの話がありました。
※Aくんは尚志高校サッカー部OB

・アスレティックトレーナーの資格を保持していること
・現場経験があること

以上が主な条件だったのですが、

その条件を満たしていたことや、ちょうど翌年から同じユース年代に関わろうと考えており、実際にそういった選手達と関わることが出来る貴重な機会になるとも感じたので、その時点では前向きに検討させていただくことにしました。

その後所属チームにも許可が得られたことから、帯同することが出来ました。

高校選抜は、1月〜4月まで毎月5〜12日間程度活動することから、周りの理解がなければまず帯同することはできません。

チームや家族、仕事で関わる方々には様々な面でご迷惑をおかけしました。皆さまには本当に感謝です🙌

実際の活動で感じたこと①
各選手のコンディショニングの難しさ


こういった選抜チームに帯同することが初めてだったので、1年目は試行錯誤の連続でした。

その中でも苦労したのが、
各選手のコンディショニングです

選抜チームの活動が、高校生活最大の目標であった高校選手権を終えた後の活動であることから、

燃え尽きであったり、卒業後は大学に進学するとはいえ少しは休みたいと考えるタイミングだったと思います。

もちろん選考合宿に参加する選手達からはそういった雰囲気は感じませんでしたが、

実際には選手権を終えてから数週間空いてからの選考会となるので、上記のようなモチベーションなども影響して十分なトレーニングを積んだ良いコンディションで参加出来なかった選手もいたと思います。

また、選手権を終え部活を引退し、寮生活をしていた選手は退寮することによって、高校選抜活動以外で練習するチームや場所を確保することが出来ない選手もいました。

特に1年目は、練習するチームもなければ場所も近所の公園しかないという選手が数名いたので、そういった選手に関しては直接連絡をとり、最低限実施しておいてほしいトレーニングを共有していました。

ただそれには限界があり、選抜活動の際のパフォーマンスはご想像の通りです。

それが2年目の今年のチームにおいては1名のみで、それ以外の選手は高校や進学先の大学で十分トレーニングを積めていたことが、今回の良い成績を生んだ1つの要因であると感じています。

いくら能力が高くても、所属チームでコンスタントに試合に出場した上でより良いパフォーマンスが発揮できていなければ、各世代での日本代表には選出されませんし、その重要性を実際に感じることもできました。

1つのチームにS&Cコーチとして関わる立場からも、この内容は

「オフシーズンの選手の過ごし方」

にも共通する部分があると感じます。


実際の活動で感じたこと②
トレーナーに求められる業務範囲の広さ


トレーナーは主に

・メディカル(治療やリハビリメイン)
・コンディショニング(W-upやトレーニングなどチームや各選手のコンディショニングメイン)

以上の2つに大きく分類され、近年では大分その分業制は進んでいると思います。
実際にサッカー界においてコンディショニングは、

フィジカルコーチ
コンディショニングコーチ
S&Cコーチ

と呼ばれる役職が担当することが多くなっています。

その理由としては、

・それぞれの専門性を十分理解して遂行するためには、相当な経験、知識がないと難しいこと
・業務内容が多岐にわたること

などが挙げられますが、

今回の高校選抜活動のトレーナーには、この両方が求められていました。

主な業務内容は、

・練習、試合時のW-up、C-down
・コーチ陣とのトレーニング、試合出場時間など負荷調整の相談
・テーピング
・怪我発生時の応急処置
・怪我選手のリハビリ
・テーピングやトレーニング道具の発注・管理
・選手のケア(治療)
・選抜活動外の各所属チームトレーナーとの選手コンディションの確認

以上となります。

現場で活動していた方はご理解いただけると思いますが、

これは今回の選抜チームだけではなく、まだまだ多くのスポーツ現場においても、このような体制をとっているのが現状だと思います。

そしてこの全ての業務を、ある程度高い精度で1人で行うことは正直不可能です。

よって、いずれかの業務は、ある程度のレベル・範囲までで妥協をして進めていくしかないのが現実でした。

「トレーナー」といっても、それぞれの専門とする業務には大きな違いがあります

先ほど大きく2つに分類しましたが、その中でももっと細分化されているのです。

しかし、それはトレーナーに深く関わる人以外にはほとんど知られていないのが現状・・・

ここで誤解してほしくないのは、

この現状に対して文句が言いたいのではなく、

「こういった短期間で活動する選抜チームこそコンディショニングが成績を大きく左右するので、コンディショニングに精通した役職を設けることはチームにとって有益である」

ということをこの機会にあらためて私自身も感じ、発信しておきたいと思ったのです。

もちろん、長期間活動するチームも同様です😊

こういった活動の1つ1つが、実際に組織をマネジメントする側の方々にも届き、現場のスタッフ構成が変化していくきっかけになれればと願っていますし、私自身も更に精進していきたいと思っています💪


実際の活動で感じたこと③
欧州の選手と日本の選手の比較


今回のドイツ遠征においては、優勝という形で結果を残せたことは素晴らしいと思います。

各選手本当に素晴らしいパフォーマンスをみせてくれて、感動しました。

しかし、このようにユース世代までは勝つことが出来ていても、

A代表ではまた状況が変わっているのが現状です。

今回実際に欧州の同世代の選手を見ると、

日本の選手と比較して体の大きい選手が多い印象でした。

これはDNAの違いも関係しているのは事実ですが、

欧州においては夏や冬にはクラブでの活動を数週間〜数ヶ月休みにしていることによって、

・十分な睡眠によって成長ホルモンの分泌を促進することができる
・エネルギーを運動だけではなく、成長のために利用することが可能になる

といったことから、結果的に身体的な成長を十分促すことが出来ていると思われます。

つまり、欧州の選手達の大半はいまだに身体的な成長過程であるため、現時点では身体操作が効率よく出来ていない状態であり、今後その部分が向上してくることが予想される=伸び代が大きい

とも言えます。

日本においては、夏や冬に長期休暇を設けるチームは稀であり、

むしろ大会やフェスティバルなどによって、通常よりも多くの試合数をこなさなければならないような状況にあり、

ほとんどの選手が成長に利用させるためのエネルギーが枯渇してしまい、最大限伸びるはずであろう身長に達していないことが予想され、

高校年代ですでに身体的な伸び代が欧州の選手と比較すると少なくなっている(完成形に近い状態になってしまっている)可能性が考えられます。

この原因を追っていくと、

そもそもの環境(部活やクラブチームは選手の保護者から会費等を頂いて運営していることなど)による影響が大きいので、欧州と同じ形をとることは現実的に難しいと思われますが、

選手の未来を考えると、トレーニングにおいてしっかりと負荷をかけることと合わせて、身体的な成長を促すために、リカバリーの面も指導者側が十分理解してマネジメントしていく必要性がより高まっている

と、実際の選手を自分の目で見て肌感覚で感じることが出来たのは貴重な経験でした。


最後に


冒頭にも書きましたが、今回の活動において関わっていただいた関係者の皆さまや、私が不在の間にトレーニング等継続するために対応していただいた選手やスタッフの皆さまに感謝しております。

今回の活動で感じたことを3つに絞って書いてみましたが、

実際に1番大きかったなと思える経験が、


「長時間移動と時差ボケを体感できたこと」


だったりします。苦笑

代表の選手達は本当にタフな環境で活躍し続けているんだなと、

とても感銘を受けました。

今後はこの経験を今関わっているチームにも還元できるよう、コツコツと頑張っていきたいと思います。


最近は寒暖差が激しく、体調を崩しやすい気候ですから、みなさんお身体ご自愛ください!

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