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ネガティブな空気をどこで感じるか?

新年一発目のビジネススキルは、心理的安全性についての実例を話していきたい。これまでも僕のコンサルテーションの中で体験した実話からテーマを持ってきていますが、さっそく最近のコンサルで起こったことを紹介したい。


心理的安全性を題材にすることの背景

心理的安全性の学術的定義は結構難しいというか、ややこしい。英語の表現のモノだったりするからなのかもしれない。

ここ数年、心理的安全性という言葉は徐々に浸透してきているようにも感じると共に、まだまだ使うヒトによっては「表面的」だったり、「中途半端な理解」だったり、「間違った認識」をされている方もまだまだ多いと思います。

これまでにも紹介してきたように、皆さんも感じたことがあるような、
なるべく日常でも起こりそうなことを例に紹介していきたいと思います。

例えばこんな感じ



心理的安全性が高い状態と低い状態では使用される言葉が異なる


心理的安全性の高い職場づくりをしたいと思う中で、
自分の組織の心理的安全性は高い/低いってのは、わかりにくいものです。

心理的安全性チェッカーなんてのがあればいいんですが、今のところなくって、なんでかって言うとかなり個人が感じることの集合的雰囲気のことなので、個人のアンケート(主観)からはなかなか調査できないもんです。

なので、本当に組織メンバーとの対話が重要になってきます。
対話は関係性を保つと同時に健康診断にもなります。
今回紹介したいのは、対話の中で使用されている単語をチェックすることで心理的安全性は測定できるかもしれませんという話題です。


実際の事例1

組織構造としてはピラミッド型組織で、階層構造を取っています。

社長
役員
現場マネージャー
現場職員

社長は、現場の意見を参考にし、年度方針に反映させたいという想いがあり、役員に現場からの意見を収集してほしいと依頼しました。それに伴い、役員は現場マネージャー以下を集め意見を集約し、意見を役員会で報告しました。

まぁ、良くある話というか、普通のことです。

しかし、役員会で報告された「現場からの意見」を聞いた社長は違和感を感じたようです。概ねは理解・納得できたものの、現場の雑談から聞いたことと少しずれているように感じたということでした。そこで、社長は現場に確認することにしました。

すると、「えー!全然違うんですけど!」と現場職員から驚きの回答が得られ、役員があげてきた「現場の意見を収集した意見」と「現場の意見」にギャップがあることに気づきました。

コンサルテーションの現場から


こういった伝言ゲームのようなやり取り、どこの企業でもあるように思います。ピラミッド型のデメリットでもあります。
今回の事例は組織が小さく、社長が現場の声を直接取り入れることが出来る環境だから気づけた点だと思います。でも、ほとんどの会社では気づかないまま進んでしまい、「意見を収集するなんてのはウソ」とか、「聞かれてもどうせ反映されない」といった疑念諦めすら生んでしまうのではないでしょうか。

そうなると収集された意見は一次情報ではなく二次情報となるので、解釈が入ってしまう。
だから疑ってかからなきゃダメなんだなって思ったんです…。

コンサルテーションの現場から

僕は遮ってこう話した。

こういった事例はよくあることなんだけど、
気になったのは「疑う」という表現なんだよ。
なんだかネガティブなイメージを持つね。
集約された意見には嘘や恣意的な婉曲があるって思うってことかな?
多分ちがうよね、仲間を疑うような意味ではなく、信じているけど「そういうことってよくある」から心配だってことだよね。
そういう時は「確認する」を使うといいかもね。
「疑っているんですか?」に対して
「いや、確認させてほしいんだ」
そういうこと。

コンサル中の僕の発言


心理的安全性が低いと「確認」が「疑われている」ように感じる

正直疑ったという時点で、互いのコミュニケーションや信頼関係が築けていないと思った。

「曲解して悪いことに使おうとしている」
「現場の意見とは別に、自分の意見を通そうとしている」

そんなはずはないんだけど、
信頼関係が気づけていないとそういう疑いが発生してしまうもんだ。

こうやって人は疑心暗鬼になっていく。
こうやって組織へのエンゲージメントは低下していく。
こうやって疑っている時間が無駄になっていく。
こうやって生産性が低下していく。

人が会社を辞めることと、
企業の生産性が低いことは密接に関係している。


どうすればよかったか?

役員が職場の意見を収集するために職員を集めた。
そういう意見収集の場(ミーティング)の目的設定が間違っていた
もしくは不明確だったという点が原因だと考える。

今回の例で言うと、
目的は「役員が現場の意見を収集すること」だったと思う。
収集した意見をチームの意見として集約・解釈し報告するのは役員の仕事だった。

解決するためには、
設定する目的は「所属チームの意見をまとめること」にするべきだった。
つまり、「役員会に提出する意見のコンセンサスを得る」ことをしていないことが原因だ。

よって、
役員から「役員会で〇〇のように伝えますが良いですか?」
現場「OKです!」(議事録アリが望ましい)というやり取りがあれば良かった。


現場との距離がある役員であればあるほど、「コンセンサス」に重きを置くべきだ。どうせ現場なんて見てないんだから。
現場をろくに見ていない役員が集約して解釈したら、
間違えた結論に至るのは当然だ。

そのために仕組み(議事録)を作ってカバーするしかない。
役員も現場も、合意・合議に至っていないというのが
不和の起る原因
だったりするもんだ。


本質的に悪いこと考えている奴なんて、めったにいない

極力環境や待遇を改善したいと思っている仲間なはずなのに、ちょっとしたことを手を抜くと一気に信頼は失われ、破綻する。
疑いを持ち始めると、様々な行動に疑惑が生じる。
それが生産性を著しく低下させ、エンゲージメントを低下させる。

人事異動に関しても似たようなことが起こりがちで、
現在所属する企業で起こったことを紹介する。


実際の事例2(A side)

組織に所属していたり、
ある程度の大きさの組織になれば人事異動はつきものだ。

とある業務に当たっていた派遣社員の女性(相談者Aさん)
しかし、事業縮小のため、当面表立った仕事がなくなっていたので、
僕の手伝いをしてもらっていたんだ。(僕は直接の上司ではない)
そんな彼女からの相談があった。

会社で募集している新規事業のことは知っていますか?そっちにあまり募集が無いらしく、私が異動することになりそうで、今お手伝いしている業務はできなくなりそうです。
いまお手伝いしている業務も中途半端になるし、新しい事業は主に事務職であまりスキルを活かすことが出来ません。また、夜勤などもあるため働き方としてもマッチしていないんです。ただ、この条件を受けるなら正社員に切り替えることが出来ると言われ、なんだか交換条件のような、パワハラのようにも感じていて、不審感が強いんです。
正直に行きたくない理由、今の業務を続けたいと訴えたら、「会社でやっている事なんだからワガママ言ってはいけない。」と上司に言われ、人事にも相談しようと思ったんですが、別件でも相談していたこともあり「めんどうなやつ」と思われていると思うと、相談しにくいです。

相談者Aさんの声

この話を聴くと、条件をチラつかせて嫌な仕事を押し付ける
パワハラとか嫌な上司を思い浮かべます。

人事には相談していないんだね?
そうかぁ。
異動先には〇〇とか、△△みたいなメリットがありそうだけど、どうかな?
一度それを、じゃあ期限を決めて、そうだな、6か月とか?決めて
取り組んでみて、いやだったら辞めちゃえばいいと思うんだ。

僕の声(ジョブクラフティングの一部)

確かにそういうメリットもありますね。
ありがとうございます。
なんで、上司はそういう言い方してくれないんだろう。
少しポジティブになってきました。期限を決めて、やめてもいいやって気で取り組んでみたいと思います。でも、それでも今やっている業務が半端なので、心残りではありますが…。

相談者Aさんの声


今お願いしている業務は、異動までにある程度蹴りをつけましょう。
むしろ納期が決まったと考えようか。

あとね、Aさんは法則型じゃん。
上司のBさんは指令型じゃん。
指令型の人は、法則型ほど仕事に理由がいらないんだ。だから、僕ら法則型が納得できるような理由の説明をあまり考えたことが無いと思うんだよ。
基本的に仕事はやるって決めて、どうやるか、どう勝つか?に重きを置いている人たちだから、あまり僕らが心地よいと思えるほど理由を考えない
人たちだからだと思うよ。

僕の発言

欲求の4タイプはコチラを参照↓↓


Aさんだけでなく、Bさんの意見を聞いてみないと、
誰かを悪にして片づけては、疑念を生むだけ。
ということで、Bさんと話してみることにしました。


実際の事例2(B side)

Aさんの人事異動の件、彼女がそのようにとらえていることにショックを隠せません。
彼女の分析能力はゆうゆうさんからも聴いているし、実感もあるので認めているところで、これからも活躍してほしいと思っています。確かに、仕事の依頼にたいして、反論することが多いので、たまにイラっとしてしまうこともありますし、「仕事なんだからそういう態度は良くない!」と怒ってしまったことがありました。
最近では、教えていただいた4つのタイプから、理解してもらえるように違う言い方をしてみようとか、イラっとせずに接することが出来るようになったと思っています。
ただ、僕は彼女が優秀だからこそ、派遣社員という立場ではなく、正社員になるチャンスだと思って提案したんです。なかなか業績を伸ばしていくのに苦労している中、待遇や給料面をアップさせるには正社員になることが一番だと考えた結果なんです。

Bさんの証言

仕事内容としてはあまり有効活用でもないし、あってない内容だけどな…。とは思いましたが、そこは心に留めておきましょう。

そのニュアンス、全然伝わってないわけだけど、どうしてだかわかるかい?
普段から会話しているかい?
自分がどういう人間か伝わっているかい?
相手がどういう人間か理解しているかい?
お互いの強みと弱みを共有できているかい?
どういうつもりでこの組織に入ってきたか、互いに話し合ったかい?

僕からのアドバイス

まさに、会話と対話不足による信頼感の欠乏だ。
それによる曲解により不信、疑念を生み、生産性及びエンゲージメントを下げていたことがわかると思う。

こうやって人は勝手に信頼を失っていく。


ネガティブな空気をどこで感じるか?

人間関係がうまく行っていないという状況は、
概ね、対話不足による曲解により生まれる疑念だ。
疑念により不必要なリソースを使うことで生産性も著しく低下する。
そうすると、どんどんと悪化していき、サヨナラだ。

実際の事例1では「役員と現場」
実際の事例2では「上司と部下」

この対立関係にあるなかで、いかに客観的に、
ネガティブな空気を感じられるかというのが、ビジネスパーソンの最大の課題ではないかと思っている。

よほどのメタ認知でもできていない限り、
僕は「当事者では無理」だと思っています。

個人のマネジメントスキルの限界でもあるし、
日本人は特に不満や意見を我慢する傾向があり、
ヘイトはサイレントに溜まり、いつしか爆発する。
それが日本企業の人事だ。

そこで考えられたポジションが
HRBP(HRビジネスパートナー)という職種があり、近年導入されている企業がある。通常の企業では、現場のマネージャーはタスクマネジメントとピープルマネジメントの両方を行っているが、多くはタスクマネジメントに忙殺され、ないがしろにされている状態だ。
また、マネージャーに昇格する条件として、プレーヤーとしての評価が日本では多く採用されており、優秀なプレーヤーが昇進してマネジメントをするようになる。当然、個人のスキルとしても得意不得意はあるが、プレーヤーとして優秀だったがために、ピープルマネジメントが上手くできないマネージャーが多い傾向にある。
こういった背景で、ピープルマネジメントをメインとするポジションとしてHRBPは日本で徐々に普及してきていると考える。

つまり、ネガティブな空気をいち早くキャッチするためには、
組織として第三者的な役割が必要だということだ。


そうすると…
ピラミッド型組織において、第三者的役割を設置すると、
縦の流れ・線ではなく、面のような組織になってくると思わないかい?
その最終系がティール組織と称されるような、自律した組織になっていく。

ティール組織をつくろうなんて思っても、作れないものだ。
現状の組織をより良くしていった最終系がティール組織の条件を持っている結果に過ぎない。


まとめ


多くの組織で起こる人と人の衝突は、
離職の元となるエンゲージメント低下と関係している。
また、離職やコミュニケーションロスによる生産性の低下にもつながることから、人事(ヒトゴト)は起業や組織において他人事(ヒトゴト)ではないのである。

そのコミュニケーションの基盤としても、
欲求の4タイプを活用することで、円滑に対応できるとより良いだろう。
自分と相手、客観性・相対性で物事を見て、感じること。
誰も根っからの悪いヤツなんて、そう相違ないものだよ。


それでは最後まで読んでくれてありがとうございました。




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