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#5 ロストケアを観て胸が張り裂けそうです。

”人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい”

先日、長澤まさみと松山ケンイチが出演するロストケアという映画を観た。
その映画の冒頭に出てくる言葉で、この映画のキーになっていた。
この言葉は、聖書の言葉らしいが、私はクリスチャンでもなんでもないので、芯の部分には触れずに置いておく。

この言葉のように、松山ケンイチが演じる斯波はかつての自分がして欲しかったことを行なっていく。

父親の介護のため、斯波はつきっきりで父親の面倒をみなくてはならず、仕事もできなくなり、生活保護を受けようとするものの、「お父様はできなくても、あなたは仕事できますよね?」と跳ね返されてしまう。
社会から突き放された絶望の中、さらに父親から「俺を殺してくれ」と言われる。
彼にとって、誰も自分たちを守ってくれない、そして社会の中で生きているにも関わらず、社会から切り離された状態で、この言葉を言われることは、言葉にならないほどの苦しさがあったに違いない。

生きること=正しい
とされる世の中で、誰も生きることの手助けをしようともしてくれない葛藤。

社会から切り離されたとしても、生き続けることは正しいのか?

認知症が進み、自分の意思で体を動かすことができない人のように、
人らしく生きられない人は生きていると言えるのか?

生きたくないと望む人が自ら命を断つことは間違ったことなのか?

こんな疑問が頭を駆け巡った。
きっと斯波も葛藤しただろう。

斯波にとって、この当時して欲しかったこととは、
「父親の命を断つこと」、そしてそれを、「自分の手を汚さず、誰か知らない間に」。

残酷だ。
父親の命を絶たせること自体も残酷だが、それを自分でやりたくない、いわば逃げだからだ。
でもそれを斯波は自らやった。彼にとって、それが正義だったのだろう。
これだけで十分重たい作品だ。でもこれが現実に起こっているのだろう。

少し話が変わるが、
”人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい”
というセリフ。

斯波にとって、
高齢者介護を行い苦しんでいる人達のしてもらいたいことは、かつての彼と同様、
「自分の手を汚さず、誰かに、知らないうちに、知らないところで、高齢者(介護を受けてる人)を殺してほしい」
そこまでいかなくとも、
「早く楽になってもらいたい」
だと思ったのだろう。
だから、してもらいたいことを自分がすることが使命だと感じ、やっただけ。

ただ、それが法に触れただけ。道理というものに反しただけだ。
例えば、もっと身近なことで言うと、
・道で迷ってそうな外国人を見つけたから声をかけてあげた
・教科書を忘れて焦ってる人に一緒に見せてあげた
などと何ら変わらない。

私には、この大きさが紙一重に思える。
この斯波の行動が悪だというのであれば、
いい人ほど、優しい人ほど、人を想える人ほど、この悪になりそうだ。

いつだって、斯波の立場になり得る。
老老介護、介護、格差などこれらの問題は、意外と近くにある。

私はひとつ、斯波のようにならないためにできることがあると思う。
孤独にならないこと、とは言わない。
だって、斯波はあれほど熱心に父親の介護をし、仕事も頑張っていた中で、望んで孤独になったわけではないし、むしろ日本人は斯波のように懸命に働き、何でも一人でしようとする人が多いように思うからだ。

できることは、
「本当に相手が望んでいるか知る」
ことだ。

”人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい”
この人はもちろん自分だ。
相手の立場になって、自分ならどうしてほしいか考えることだ。

だが、その「人にしてもらいたいこと」はあくまでどこまで考えても軸は自分自身だ。
だから、この考えが相手と異なってしまった場合、
相手にとってそのしてもらうことは嬉しいことではない。

私は相手の気持ちはどこまで考えても、完全にはわからないと思っている。

だから、自分が考えた「あなたがしてほしいと思うこと」「私があなたの立場だったらしてほしいこと」
が、本当に相手にとって望んでいることなのか知る必要があると思う。
知る方法は、聞くことだと思う。これ以外にもあるかもしれないが。。。

聞き方も工夫が必要だから、聞くのも大変労力がいることだろう。
私も聞き方の正解はわからない。

だが、大事なことは、想像で全てやってしまわないこと。
相手の反応を確かめ、自分のエゴにならないこと。

だから、
”人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい”を言い換えると、
”相手がしてほしいことを想像し、確かめた上で、あなたが率先してやりなさい”
だと思う。



映画で考えたことを少し雑にアウトプットしてみたが、
結論、強く思ったことは、最後の言葉だ。
どうしても相手のことを全てはわからない。相手がしてほしいことも、してほしくないことも、何を考えているのかも。
だから、できるだけわかろうとする中で、相手とのコミュニケーション(対話だけじゃなくって)を大事にしていきたい。





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