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インプロとわたし。

自分には何もないと本気で思っていた。
何もないから台本に書かれた台詞しか喋れないし、決まった役があるから舞台に立てているが、本当は空っぽでつまらない人間なんだと思っていた。

初めてインプロ(=即興演劇)に挑戦するとなったときは、それはもう清水の舞台から飛び降りるような気持ちだった。
アクサガというインプロバトルショーだったため、コンセプトインプロとは違い、役が決まっていない。自分の身ひとつで勝負をしなくてはならなかった。
何もない私が、役も台詞も衣装も小道具も何も持たずに人前に出るなんて、そんなに怖いことはなかった。本当は空っぽだということが、ついにみんなに知られてしまうのではないかと思っていたからだ。

結果そんなことはなかったのだが、未熟な私はその後、繰り返し同じように悩むことになった。

しかし、今は断言できる。
自分が空っぽだとか、何も持っていないなんていうのは、結局は思い込みに過ぎない。たくさん持っているのに、気がついていなかったり、忘れていたり、「こんなもの見せたってきっと面白くないから」と隠しているだけだ。それらは緊張しているととくに見つからなくなるもので、逆にリラックスしていればふわ〜っと浮かんで滲み出てくる。
そして「何もない」というのは、私にとってはひとつの逃げだった。「何もないから、私にはこれ以上期待しないでください」という逃げだ。期待に応えられなくて失望されるのが怖かったのだ。
しかし、よくよく見てみれば、そんな身に余るような期待は寄せられていなかったりする。自分でハードルを高くしてしまっているだけなのだ。それに、期待に応えられなかった時に失望するのは、ほとんどの場合他の誰かではなく自分自身だ。もっと言うと、自分は未熟であるという現実を認めたくないだけなのだ。
だが、インプロをやる以上は"今の私"を素直にその場にお出しすることができる必要がある。それがどんなに自分の理想とかけ離れていようと、どんなに無様であろうと。そして、それこそが観ている人の心に触れたり、心を動かしたりするのだ。たぶん、本物だから。ある時そう気づいて、本物で在れるよう、認めたくない自分も受け入れていこうと思った。まだ難しいときもあるけれど。

もうひとつ、インプロを通してわかったことがある。
力を抜いていれば、大抵の壁は突破できるということだ。高い壁に見えても、本来の力を発揮できれば意外と飛び越えられたり、飛び越えられなくても別のルートや方法を発見できたりする。実は躍起になる必要はないことが多い。
むしろ、力んでいるときのほうが周りが見えなくなって焦ってしまって、にっちもさっちもいかなくなる傾向にある(私調べ)。それはおそらくインプロに限ったことではなく、日常生活でも同じ。
上手くいかないとき、どこかに無駄に力が入ってしまっていないか自分をチェックする必要がある。体もだし、心や脳みそがぎゅっと固くなっていることもあるかもしれない。気づけば力を抜こうと意識できる。意識できれば、すぐに変えられなくてもじわじわと変化は出てくるはずだ。たかが意識、されど意識。意識の力を侮る勿れ。

そして、インプロを続ける中で仲間との関係性や自分のいかたが変化してきていることにふと気がついた。
いくつかの公演を経る中で色々なことがあった。全然うまくいかなくて、やればやるほどドツボにはまって嘘みたいに泣きながら稽古したこともあった。ハマり役だったのか、まったく苦労を感じずに楽しいまま終えたこともあった。
そんな浮き沈みの激しいやつだけれど、たくさん迷惑もかけたけれど、誰も私を見捨てたりしなかった。
こうして培われたものを信頼というのだろうな、と思う。決して馴れ合うわけではないけれど、何があっても見捨てられないし、見捨てない。困っていたら助けてくれるし、助けようとする。
インプロというものの性質上、色々すっ飛ばして深いところで繋がることができたりもするのかもしれない。互いに繋がろうという意識があれば。
そんな信頼関係を結べている人たちと、インプロを通してぶつかり合ったり助け合ったりする。それってきっと特別なことだ。
(今回はじめましての人もいるけれど、本番までに信頼関係を結べると私は思ってる!村田結香の結は結ぶの結!)(仲良くしてね!!)

自分のいかたについては、本当に不思議なのだが、だいぶ実家にいるときに近くなってきた。つまり、ほぼ素。コンセプトインプロでは役を纏うので、まったくの素で舞台に上がることはないが、稽古場での私はほぼ素。全然ちゃんとしていないし、イラっとしたら普通に怒るし、飽きたら飽きたって言うし、楽しければわははと笑い転げたりするし。普段は「しっかりしなくちゃ」と緊張状態でいることが多いから、そんな状態でいられる場所って私にとってはめずらしい。どこでもこの状態になれるようになれたら最強だと思うんだけれど、そこはこれからおいおいね。


まあ、色々書いてみたけれど、こまけぇこたぁいいのさ。
私はこうしてまた、インプロカンパニーPlatformという船に乗り込む。あんなに怖かった本番も今では楽しみだ。構成を聞いて「一体どうなっちゃうの〜!?」とキャッキャしている。稽古の途中、荒波に揉まれることもあるだろう。しかし、"最高の作品を作る"という目的地は決まっている。だったらみんなで力を合わせて乗り越え、そこに向かって進むだけだ。

正解のない、未知だらけの人生という旅路を今もまさに進んでいるあなたに、インプロという未知の冒険に挑む私たちから、きっと何か"よいもの"をお届けします。
ぜひ劇場で、配信で、またはアーカイブでお会いしましょう!

舞台「コウカイする男。」

インプロカンパニーPlatform 第24回公演
「コウカイする男。」

私は三役やるぞ!
ヒワンタが船を降りたらベツリーが乗ってきて、
ベツリーが降りたらナナが乗ってくる。
すべては展開次第。ふるえるね。


⚓️あらすじ ⚓️


男はコウカイを続ける。
次の港が見えてきた。また誰かが言い出すのかもしれない、ここで船を降りる、と。
「行かないでくれ」男の言葉は届くのか、海の藻屑と消えるのか
全10ステージ、ひとつなぎの物語。
キャラクターたちがランダムで作品から立ち去ってゆく
即興にしかできない、世界にひとつのコウカイ日誌。

⚓️ 公演日程 ⚓️


11月2日(木)15:30①/19:30②
11月3日(祝)12:00③/15:30④/19:30⑤
11月4日(土)13:00⑥/16:30⑦/19:30⑧
11月5日(日)12:00⑨/16:30⑩+終章
上演時間90分  ️終章のみ+15分


⚓️ 劇場 ⚓️


桜台 JOYJOY THEATER

〒176-0002
東京都練馬区桜台1-2-8 桜台マンションB1

桜台駅南口から徒歩3分
新桜台駅から徒歩3分
練馬駅から徒歩10分


⚓️ チケット ⚓️


前売り4000円 当日4500円

↓チケット予約フォーム↓


⚓️ クラウドファンディング ⚓️


目標金額200万円達成で
【全ステージYouTubeにて無料生配信】
となります。
物販も兼ねているので、一度どんなものを売っているのか覗いてみてください!
ご都合が合わない場合のアーカイブのお買い求めもこちらです。

↓クラファンサイト↓

私のでかブロマイドのサンプルもおいておきます。


⚓️ キャスト ⚓️


全ステージ出演
石戸貞義
住吉美紅
早さきえこ
戸草内淳基
斉藤らいふ(以上、Platform)
🌷村田結香🌷

①〜⑤出演
青木紫水
池田一開(劇団だるま座)
吉田奈央(アストアクション)

①〜⑥出演
田口和 (ファンタスティック学園)

⑤〜⑩出演
真僖祐梨(遅咲会)

⑥〜⑩出演
澤栁省吾(万能グローブガラパゴスダイナモス)
中野直重(中野直重興業)
渡辺りえ

⚓️ スタッフ ⚓️


照明:田中稔彦(ひとにまかせて)
音響:山田陽大 (劇団だるま座)
サンプラー:いけだゆうこ(Platform)
舞台監督:木之枝棒太郎(虹の素) 舞監補佐:宮本悠我(虹の素)
配信:Ginzi
制作:斉藤らいふ 佐藤歩 いけだゆうこ(以上、Platform) 樹なみ(虹の素)
クラウドファンディング:山本あつみ 石戸貞義 佐藤歩(以上、Platform)
運営:早さきえこ 植野龍二(以上、Platform)
ビジュアル撮影:ツジ(Platform)
メイクプラン:三浦麻理恵(Platform)
Platformスタッフ:小原敬生 干場明日美 宮嶋恵悟 畑野芳正(以上、Platform)
広報:住吉美紅(Platform)
ミュージシャン:村田貴章(Platform)
構成演出:住吉美紅(Platform)

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