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10年同棲した彼女とお別れした話

僕は彼女と同棲して10年になる。
けれど最近彼女の様子がおかしい。元気がない日が続いているような気もする。その影響もあってか僕も最近は元気がない。
今日もなんだか朝から眠い。
だけど、今は少しだけ彼女との思い出を振り返ってみようと思う。
なぜなら今しないと後悔しそうだから。

出会ったのは10年前。
彼女が僕に一目惚れしたのがきっかけだった。
初めて会った時から僕のことをすごく褒めてくれた。僕は嬉しかった。
その後もどういう経緯で同棲することになったかは覚えてはいないのだが、気付いたら彼女の家に転がり込むようになった。
彼女は僕がずっと家にいても文句を言うことはなく、むしろいつも褒めてくれた。これは世間一般でいうところのヒモというやつなのかもしれない。笑

あんまり外でデートすることはなくて(理由は僕が昔から身体が弱く、外より室内の方が好きで、彼女がそれを理解してくれているから)、彼女とソファーに座ってテレビを見ながらお話しすることが多かった気がする。
彼女はよく仕事の悩みとか友達と喧嘩したこととか、色々僕に話してくれたなあ。僕なりにも考えて毎回アドバイスはしていたけど、それが役に立っていたかはわからない。だけど彼女は毎回、「話を聞いてくれてありがとうね」と屈託のない笑顔を見せながら言ってくれた。

そんなこんなであっという間に数年の月日が流れた。
2年ほど前だったか、彼女が男を連れて家に帰ってきた時はびっくりした。
僕は彼女ではなく、その男に怒った。なぜなら彼女を守らなければいけないと思ったから。
だけどその男も話してみるとなんだかんだいいやつで、その後は奇妙な3人の同棲生活が始まった。

そして最近になり彼女とその男が「ケッコン」をするというのを聞いた。
どうやら人間はケッコンというものをするのが一般的らしい。
時を同じくして、僕が病気になった。身体が衰えてきているのはわかってはいたが、いざ聞いて初めて納得できる。
そしてもう、自分が長くないのも感覚だけど理解できる。

吾輩は猫である。
さっきから彼女が僕のことを抱きながらずっと泣いている。
僕もだんだん眠くなってきたし、自分のこともわからなくなってきた。

だけど一つだけ言えることがある。
僕は、君にあえて本当に本当に幸せだった。

そしてさようなら。いつまでも幸せに。
願うことなら、君とまた、どこかの場所で巡り会いたい。

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