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怒りながらコミュニケーションをするおばあちゃんの話

「あんたんとこの、ヘルパーは、言ったこともろくにできていない!」ときつい口調で怒る86歳のおばあちゃんがいた。

実際、介護を受けるのは、このおばあちゃんではなく、旦那さんだ。
旦那さんの、トイレ誘導・パット交換・寝る前のオムツ交換と、排せつ関係の身体介護だ。

旦那さんの老々介護が、きつくなって、ホームヘルパーを使っている。

おばあちゃんは、腰がちょっと曲がっていて、小太りだ。
でも、たくさん怒っているせいか、顔はきつい感じで、眉間のしわは、八の字になっている。見た感じからして、気の強いオーラを漂わせている。

私は、寝る前のオムツ交換で、夜にいつも訪問していた。
そのため、朝・昼に来るヘルパーのダメ出しをいつも聞かされていた。

そして、私が、寝る前のオムツ交換をして、朝に、失禁でもしていたら、私もたいそう怒られた。「洗濯物を増やすな!」と怒られる。
メンタルの弱い私は、その家に行くのが恐怖だった。

でも、怖がってばかりでは、仕事にならず、どうしたら、そのおばあちゃんが、怖くなくなるのか、心理学の本を読んだり、「厄介な人との関り方」を解説したYOUTUBE動画を見て、勉強してみた。

その中に、常に怒っている人は、怒ることで、
・得をしたことがある。
・人が優しくなる。
・人が自分のいう事を聞く

そんな、得をした経験があるから、怒ることで、コミュニケーションを図ろうとする。

なので、そういう人には、まず、「怒ると怖いからやめてください」ということを、伝える。怒って話すことが、恐怖であると、伝える必要があるとあった。

それを、読んで、それが、言えれば苦労しないよ・・・と思った( ;∀;)

あと、怒られるのが怖い人は、怒られることに慣れていないからだと、聞いたので、とりあえず、怒られる事に慣れてみようと思った。

おばあちゃんと、関わらなければ、怒られることもないので、分からないことがあれば、おばあちゃんに極力聞くようにした。

電気の場所を、聞いたときは、「どうして、電気の場所がここにあるって知らないの!」と理不尽に怒られた。
言葉の意味が分からずに、聞くと、「こんなこともわからんのか?!」と理不尽に怒られた。

怒られるってやっぱり、
辛い・・・
心が痛い・・・
へこむ・・・( ;∀;)
の3段活用の日々だった。

でも、逐一、物の場所を聞いたり、エアコンをつけていいか?どうかやズボンは、これをはかしていいか?のお伺いを立てているうちに、怒りんぼのおばあちゃんが、こんなことを言った。

聞きながら、ビビっている私を見て、
「分からないことあったら、聞いていいんやで!私、口悪いから、きつい言い方するけど、悪気はないんや!ごめんな!」と言われた。

あっ、きつい言い方をしている、自覚はあるんだな(;´・ω・)。と。

夏の暑い日の夜、訪問したら、ゆでだこ状態で、興奮したおばあちゃんが、怒りながら、私に、昼間に訪問したヘルパーの文句を言ってきた。

内容は、「昼の14時ちょうどに来てほしいのに、今日は、来るのが10分遅かった!しかも、態度が悪い!」という内容。

怒りながら言う。私は、正直ビビった。
ためしに、「そんな怒らんでもいいやん!」と言ってみた。
怒られることに慣れた成果か、言えた自分に、成長したな~と喜びを感じたけど、それもつかの間。

それを、言うと、おばあちゃんは、ひるむことなく、「いや!こっちの希望の時間を伝えてるのに、遅れたら、私の段取りが狂うし、困るし、怒りたくもなるわ!」と言い返された。そして、10分ほど、延々と、愚痴を聞かされた( ;∀;)

まぁ、すべてが本の通りには、行かない・・・というオチがついた(笑)
とりあえずは、ひたすら否定もせずに、遅れたことは、謝罪して、うんうんと、傾聴をした。
内心、(昼間の愚痴は、昼間のヘルパーに言ってくれ~((+_+)))と心のつぶやき

ただ、そのおばあちゃんは、愚痴を言って、すっきりしたのか、
「まぁ、あんたに愚痴っても仕方ないし、話聞いてくれてすっきりしたわ」
と言ってくれた。

要は、話をきいてほしかっただけ。なのである。
おばあちゃんが、すっきりしたから、よかった~と少しホッとした。

怒りながらコミュニケーションをする人もいる。
決して、嫌がらせとかではなく、こういう形でしか人と話ができない人もいるという事を知った。
おばあちゃんの「悪気がないんや!ごめんな」のフレーズが、そのことを物語っていた。

生きていて40年以上が経つけど、恥ずかしながらそういう人もいる、と言う事を知った。

こういう人と、対等に渡り合えると、人間関係ちょっとは、楽になるかな・・・と思った。
メンタルの弱さを鍛えるには、絶好の相手だった。

そして、今日もヘルパーに怒りながらコミュニケーションをする。
でも、「悪気がないんや!ごめんな」のフレーズを聞くと、なぜか、助けてあげたくなる、おばあちゃんだなと最近思うようになった。


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