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【本】ネガティブケイパビリティ-答えの出ない事態に耐える力は身につけられるのか?-

ネガティブ・ケイパビリティ、という言葉を聞いたことはありますか?
ネガティブ・ケイパビリティとは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」のことを言います。

私はこの言葉を見た時、「耐える能力ってどういうこと?」と疑問に思ったのを覚えています。と同時に、私にはこの能力はないかもしれない…とも思いました。

なんでも白黒つけたがる私にとって、答えの出ない、どうにも対処できない事態に向き合うのが苦しかったことを思い出したからです。

でも、苦しかったからこそ、ネガティブ・ケイパビリティが何なのか知りたい、と本を手に取りました。

下記の本をもとに、ネガティブ・ケイパビリティについて探究していこうと思います。

ネガティブ・ケイパビリティという言葉を作った人

この概念を作ったのは、イギリスの詩人ジョン・キーツという人です。弟に宛てた手紙の中で1度だけ使ったとされています。恵まれているとは言えない家庭環境で育ち、身体が弱く、25歳でこの世を去ったキーツ。どうにも答えの出ない事態に向き合い続けた彼が、救いとした概念なのかもしれません。

そして、キーツの死後、第二次世界大戦に従事したイギリス人精神科医ウィルフレッド・ビオンが、心理臨床の場でこの概念を重視し広めたとされています。ビオンは、患者と接する時に、ネガティブ・ケイパビリティが大切な素養であると捉えています。

人の脳は「わかる」ようにできている?

人の脳は「わかる」ようにできているそうです。分かるために欠かせない意味づけを脳は勝手に行い、分からない事象を「わかる」に変えていきます。

「できるだけ早く答えを出して、不確かさや不思議さ、懐疑の中から脱出する力」、「問題に対してすぐに答えを出し『わからない』を『わかる』に置き換えていく能力」​​のことをポジティブ・ケイパビリティといいます。

そもそも人の脳は、ネガティブ・ケイパビリティではなく、ポジティブ・ケイパビリティ寄りにできている。

どちらが良い、悪いという話ではないですが、時にポジティブ・ケイパビリティは事象の表層だけ「わかった」気になってそれ以上でもそれ以下でもなくなるといったことも起きてしまう、ということを私たちは忘れないようにしなければならないと思います。

私も経験がありますが、美術館に行ったときに、とある絵をみて、「この絵はどういう意味なんだ?」と咄嗟に意味を探していました。それ自体は悪いことではないと思うのですが、もともとそこに意味があるわけでも、分かるわけでもなく、ただそこに身を置けば良いだけなのに、必死で意味をつけたり、分かろうとすることで、「分からない」ことから目を背けようとしていた気がします。

いかに人の脳が「意味」や「分かる」ことの方向性に侵されているかに気づいた瞬間でした。

美術館を例に出していますが、学校や仕事だったらどうでしょうか。「わかる」ことがゴールになって問題解決があまりに強調されてしまうと、問題設定の時に問題そのものを平易化してしまうことにもなります。

ネガティブ・ケイパビリティは拙速な理解ではなく、謎を謎として興味を抱いたまま、宙ぶらりんの、どうしようもない状態を耐え抜く力です。その先には必ず発展的な深い理解が待ち受けていると確信して、耐えていく持続力を生み出すことが大切だとこの本は伝えています。

ネガティブ・ケイパビリティは身につけられるのか?

では、一体ネガティブ・ケイパビリティはどうやって身につくものなのか。

筆者の帚木さんは、「ネガティブ・ケイパビリティ」は頭の中に置いておけば良いものなので、「きちんと身に付けなければ」と踏ん張るのは難しいとおっしゃっています。

ネガティブ・ケイパビリティという概念がある、ということを知るだけでも
良い、ということですね。

とはいえ、やはりここでポジティブ・ケイパビリティが働いて、「概念を知っても、活用できなければ意味がない」「ネガティブ・ケイパビリティの概念はこうだから、きっとこうすれば良い」という結論に持っていってしまいがちだなと思います。

ここでグッと堪えて、改めてネガティブ・ケイパビリティってなんだろう?ネガティブ・ケイパビリティがあることで人生はどう豊かになるのだろう?と、自分の頭の中で考えてみたいなと思います。


解決すること、答えを早く出すこと、それだけが能力ではない。解決しなくても、訳がわからなくても、持ち堪えていくこと。それは実は能力のひとつ、ということを忘れずに過ごしていきたいです。


そして、実は自社でも、「ネガティブケイパビリティと対話」というテーマで6月より講座を開催する予定です!またnoteでも告知する予定なので、お楽しみにしていてください〜!


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