「間違い」と言われてしまうホントの英語

この表記は間違いか?

 たとえば、以下のような英文があります。

The US authorities are closing the country's airspace for Russian aircraft.

 これをアメリカ人が読んだ場合、「この文はアメリカの表現ではない」あるいは「間違っている」などの反応があるかもしれません。どこが違うでしょう。

 中学校で英語を学び始めたばかりのころは、こんな英文を見たら「間違ってるよ」と言ったかもしれません。
 でも、これはニュース記事で使われている英文です。出典はTASSの記事ですが、現在はロシアメディアを排除する動きがあるので、出典元だけ書いて、リンクは貼りません。

 出版社や英語の先生でも、これを「間違い」と認識する人がいるかもしれません。
 U.S. となっていないんです。

 同じような例はまだあって、Mr. → Mr や、Mrs. → Mrs などの敬称、
St. → St なども同様です。
 どちらが正しいのか、ではありません。ただ単に、書かれている国が違うだけです。

 この原因の一つは、「そんな細かいところまで注意しない」人が多いことかもしれませんが、もしかしたら、別の原因があるかもしれません。

 イギリスのニュース記事や、比較的最近の本などを読んでいると、「.」がないことに気づくかと思います。一方で、英文科などで研究する文献には、シェイクスピアなどの古い文章が多くあると思います。古い英語の書物には、この「.」がついているんです。
 確認してみた限り、シャーロック・ホームズやルイス・キャロルあたりの文献では、「.」のあるものを見かけます。私が好きなダイアナ・ウィン・ジョーンズや、ハリーポッターあたりを読むと、ついていません。同じイギリスでも、時代の古いものは、表記が古いんですね。

 数年前だったと思いますが、アメリカ人に、UKと書いているのを「間違い」と指摘されたことがあります。彼らにとっては、この表現は今でも「間違い」に当たるようです。

日本の表現、間違っている?

 トマト、を英語で発音してみてください。
 トメィトゥ、みたいな発音をした方が多いかもしれません。

 では、トマートゥ、と発音したら、それは間違いでしょうか?

 トマトという単語は、カタカナで書かれていますし、もともと日本語だったわけではなさそうですよね。外来語です。調べてみると、最初に伝わったのは北ヨーロッパの品種で、中国経由で来ているようです。
 でも、単語は英語ですよね。どうして日本人が「トメト」ではなく、「トマト」と書いたんだと思いますか?

 はい、イギリス発音は「トメト」ではなく「トマト」のほうが近いですから。当然、入ってきたほうから、言葉がつくられているんです。

 同じことが、ジャンパーのような単語についても、言えますね。
 日本では、ジャンパーというと、上着のことですよね。イギリスでも、ジャンパーは上着です。

 どういうわけか、ジャンパーが上着っていうのは間違いだよ、ということが言われてしまっているんですが、ハリーポッターのロンは、‘Hey, look—Harry's got a Weasley jumper, too!’なんて言ってます。
 だからといって、イギリスでsweaterという表現を使わない、というのも誤りです。(ときどき語彙比較のサイトなどで見かけるので)

「当時の日本人が、英語をちゃんと聞き取れなかったから」と思い込まず、探ってみるとおもしろいかもしれないですね。

おまけのph

 50歳くらいのドイツ人とチャットをしていたときに、phantasyと書かれたことがあります。現代では、fantasyが一般的です。少し古い表現として、fの代わりにphを使う表現が存在するようです。アメリカでは通常、この表現はしません。

 

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