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子供の頃、縁側に寝そべって見上げた空はどうしていつまでも眺めていられたのだろう。



幼い頃
私は山に囲まれて育っていると思っていました。

でも大人になって
東京の学校に通うようになって思ったのです。

私は山に囲まれていたのではなく
山に住んでいたのだと。

当たり前のことなんですけどね。

それくらい世間知らずな
田舎ライフを過ごしていた幼少期。


すっかり都会を知ってしまった今の私には
あの頃見ていた果てしなく広い空と
見渡す限りの緑に囲まれた日々が
懐かしく思うことがしばしばあります。

都会って建物が高いから空が狭く感じるし
街頭が多いから星ってほぼ見えないんですよね。


幼い頃の私は、おじいちゃんの畑に顔を出しては
小さな鍬(クワ)を借りて少し畝造りを手伝うだけで
後は泥んこ遊びを楽しみました。

疲れたらダラリと縁側に寝そべって
ただゆーっくり流れていく雲を
ぼんやり見上げていたような気がします。

ただ眺めているうちに眠くなって
靴も脱がず縁側の外に足をぶらりと降ろしたまま
眠ってしまったこともありました。

そんな私を家族みんな起こしてくれなくて
気づいたら夕方。
半ズボンから靴下にかけて蚊に刺されまくって
半泣きになったこともありました。

「あんたのせいよ」と母に突っぱねられたけど
おばあちゃんがすぐに押入れから救急箱を出してきてくれて
キンカンを塗ってもらったのを覚えています。

畑作業の多いおじいちゃんも
よく塗っていたキンカン。
さっきまで泣きべそかいていた私だけど
「おじいちゃんとおんなじ匂いになった!」
とケロッと笑っていたっけ。

確かその頃だったか記憶が定かではありませんが
おじいちゃんが畑作業で使っていた
蚊取り線香を腰にぶら下げる道具を
私にくれました。

それでも蚊に刺されていたし、煙たいし、
すぐ使わなくなってしまいましたが。

「お前の血は美味しいんだろうねぇ」と笑いながら
いつもキンカンを塗ってくれるおばあちゃん。
いつも前向きで優しくて包み込むような
そんな愛情をくれる祖父母が私は大好きでした。


天気の良い日は
そんな小さい頃をふと思い出します。



両親共働きで祖父母とよく過ごしていた幼い頃は
私の子供の頃の記憶の中で一番楽しい思い出。

私の頭の中にアルバムがあるのなら
きっとあの日の縁側に寝そべって
見上げた青空が写真になって
焼きついているのでしょう。

同じような青空の日には
この優しい記憶が思い起こされるんだろうな。


由佳

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