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よしなしごとたち

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日々感じたことを好きなようにずるずると綴っています。
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#映画

フィクションの日々

フィクションの日々

エンドロールが流れはじめてもなお、涙がぽろぽろと頬をつたう不思議。
激情とは程遠い。いったいなぜ泣いているのか自分でもうまく説明のつかないまま、ただ静かに心が揺さぶられつづけているのをひたひたと感じていた。

黒木華さんの演技を無性にみたくなって、数年ぶりに映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』を観た。
冒頭から大好きな曲が流れたので胸がときめく。そうだった、主題となる「フルートとハープのための協奏

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いっしょにおいしくなりたいの

いっしょにおいしくなりたいの

南極に駐在する8人の男たちの日々を描いた映画「南極料理人」を観た。
近頃、涙腺がすっかりばかになり参っているのだけれど、ついにむさくるしいおじさんたちの食事シーンでぼろぼろ泣くまでに至ってしまい、さすがに我ながらぎょっとしている。

彼らは決して、心を尽くした賛辞を口にするわけでも、にこやかに笑顔を交わしあうわけでもない。
基本的に、食事中は終始無言。時には、堺雅人演じる料理人の作るごはんに対して

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映画のなかの音

映画のなかの音

映画のなかの音というのは、なんだか特別な響きを持って耳に届く。

特に際立つのは、“生っぽい”、すなわちフィクションみの少ない映画のなかにある、なんてことのない生活音だと思う。
ほとばしるシャワーの水音、かすかな衣擦れ、ポーチのファスナーを閉める音、ひかえめな鳥のさえずり、コンビニの安っぽい来店音、店員のけだるそうな挨拶の声、ビニール袋を開くかしゃ、という音。

画面にうつる彼ら彼女らの為す所作は

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