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「ハコ」の進化 ー「体験」の提供は演劇の特権ではない時代

どうでもいい話なんですけど、昨今中身もさることながら抜本的なアップデートが難しい会場側の進歩がめざましくありませんか。

まあ個人的な最近一番のハード面の進化は何より新感線がロングラン公演中の「ステージアラウンド」かなと。
世界でこれがまだ2例目ってのもすごいんですけど、回転するってどういうことやねん、で観に行った「髑髏城の7人」は抜群に面白かった(話はシンプルなチャンバラ物なんだけど)やっぱり何より、「ウワーーーー回るーーーー映像スゲーーーー何これどういうことやねんーーーーー!!!!」
という物理的にも気持ち的にも作品世界に引き込むってのはすごいなと。そもそもそんなことしなくても十分劇団☆新感線の作品はやりたい放題やってるのにやりたい放題の暴力やぞいいぞもっとやれってなる。

というわけで演劇の優位性にハード面の優位性を足し算じゃなく掛け算でやってる団体が出てきたわけですが、いうて1箇所1劇団のみ。

同じようなこと、映画でやられたら数と大衆性で負けるがな。


・・・・と、先日映画見に行って思ったんですよ、4DXの。

とりあえずここ2、3年で映画上映について「ソフト面」の多様性がすごく出てきている印象。本編の3D映画などに始まり「応援上映」「爆音上映」など上映演出の多様化。ただ作り手側からの一方向で鑑賞するだけじゃなくて、観客にとって「参加する」という展開が強くなっている。演劇のエンターテイメントとしての優位性は「生のコンテンツを体験する」ことであるのに、「映像そのもののクオリティも上げつつ参加することに意味を持たせる」に映画が本気で切り込んできてる。

しかも演劇に比べて単価が上映に特殊性あるとはいえかなり安い。ニュース番組で『King of Prism』の応援上映の特集が組まれていたので調べてみたら1回で2,000円以下。舞台1回の4〜6分の1の価格帯!!と思うと「そりゃ複数回いくよね・・・・行けるよね・・・」と思う。もちろんそれは、すでに映像は作り終わってるし、劇場が複数あるからこそ単価を下げられるというのは絶対的にあると思うけど。

4DXについて、「髑髏城」でぐるぐる回ってたので感動については若干反応薄くて申し訳ありません、という感じなのだけれど、他の観客の人たちが「アトラクションみたい!」と話していたのが聞こえたので「わかるわかるディズニー感あるよね」と内心頷いていた。水出るし(しかもコントロールできる)スモーク出るし、座席は動くしなんか画面の動きを追体験できるってこれ絶対劇団☆新感線と親和性高いじゃん!!!チャンバラとかで切られる瞬間とか動いたらめっちゃ面白いやん!!!ただ個人的にはスモークとかの演出は物足りなさを感じてしまったのだけれど(映画館のように天井が高いとすぐ抜けてしまう)これまで映像では届かなかったところをこういう形で打ち出してきたか!とまさしくパラダイムシフトである。雪降らせて回収する必要ないって羨ましいな!!!原始的に雪布で降らせてたよ!!!リハで降らせた雪回収して本番でも降らせてたから絶対ホコリ舞い散ってた(舞台あるある実話)

演劇はどうあがいても一箇所でひとセットの役者しか上演できないところに対し、映像だと同時多発的に複数会場でも行えるし、人間には体力の限界というものがあるので、1日で上演出来る回数にも限界があるけれど、映像は一度作ってしまえば環境さえ整えば何回でもいつまでもどこでも流せるのだ。もともと持ってる優位性に提供側のコンテンツはこうでなくてはいけないという先入観がなくなり、ハード面では数の優位性。ショッピングモール内の映画館など、やはり地域差というのは残るけれど、都市部に限定しなくていい。むしろ田舎でも都市部と同じことができる。演劇公演だったら遠征していたり、都市部に住んでいても高校生などの未成年も取り込みやすい。

さらにその数の優位性があるハード面をアップデートしてるとか、演劇の弱いところ全部クリアしてる!!!負けてる!!いや「表現」には勝敗も優劣もないけど、「興行のしやすさ」では圧倒的に負けてる。

高額でも売れるもののセオリーで、特別・経験・限定、承認欲求を満たすもの、じゃないけど「じゃあ演劇はなにを提示・提供できるの?」ますますわからなくなってきた。

「ここでしか見れない」「この期間しか見れない」というのはある意味どういうイベントも同じ。そして、可処分所得と可処分時間を奪い合ってるのは全て同じ。

今他のジャンルがどういうことをやってるかの現状を把握しないと、興行として戦いに負ける一方だなぁ。2.5次元でもある接触イベント中心のアイドル商法だって、おそらくもはや限界値。どこかで瓦解してもおかしくない。実際問題トラブル起きると開催困難になるからなぁ…。
結局は作品のクオリティに帰着するのかもしれないけど、いかにして新しい付加価値を見出すか。
それは今後の課題、だな!

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