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Angela

原因不明の微熱が1週間以上続いて気が滅入ってきているので、明るくなる話をしよう。学生時代の話をしてみようじゃないか。

それは高校に入学して間もない頃の話だ。入学後に行われる宿泊研修。研修とは名ばかりで、実際は交流イベントだ。そのイベントの、何日目かにそれは起こった。

ホテルの大浴場で、入浴を済ませ、さて部屋に帰ろうというときに、別のクラスの人に話しかけられた。話題は何だったかなんて覚えていない。多分、「何組の子?」くらいの話だったんじゃないかな。

初めての者同士、名乗りあって、出身なんかも話して、自己紹介した後、彼女は言った。

「日本人みたいな名前なんだね。勝手にAngelaとかだと思ってた」

あ、可愛いな、この子。私はそんなことを思った。可愛らしさというものを身にまとっている子だと感じた。

って、そうじゃなくて。

Angela.

Angela.

Angela.

私の本名はどこからどう見てもザ・日本人で、でも外見はアルビノにより色素が薄いので、名乗ると顔を見て驚かれることはそれまでにもあった。だから、それ自体はそんなに大したことではないのだが。

湯上がりの頭に、Angelaだけが反響していた。

Angela, Angela, Angela.

ってか、Angelaって私のなかでは黒髪のイメージが強いな。アンジェラ・アキさんのイメージがあるのかな。

この後どうしたかは記憶にないのだが、"知らぬ間にAngelaになっていた話"として、その後多方面でネタにした記憶がある。というか、今もする。

だっておもしろいでしょう、知らぬ間に本名にかすりもしない名前がつけられていたなんて。

その話をしたときに、誰かが言った。

「Angelaって天使じゃん」

そう。Angelaは天使(Angel)から来ている名前なのだ。

つまりあの子は、私に、というか私の外見に、天使を見てくれたのかもしれない、なんて思った。それは、ちょっと嬉しい。

次何かSNSを始めるときは、Angelaって名乗ってみてもいいかもしれない。

Angelaでした、またね。

執筆のための資料代にさせていただきます。