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「あおり運転」はモラルではなく、科学の問題:『アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える心のトレーニング/安藤俊介』

怒りは「人生を壊す唯一の感情」

「アンガーマネジメント」という言葉が注目されるようになったのは、いつ頃からだろうか。
個人的な記憶では、東名高速でのあおり運転事故以降、よく聞くようになった言葉だという印象がある。

本文にも、
「そもそも、アンガーマネジメントがアメリカで広がったのは、運転時のトラブルによる射殺事件が頻発したからという背景があります」
という記述が出てくる。
「ハンドルを握ると人格が変わる」という話はよく聞くが、「怒り」と「運転」というのは、世界共通の問題なのかもしれない。

日本には昔から「短気」「怒りっぽい」といった、その人の「性格」を表す言葉がある。
しかし、「性格」などという曖昧なものではなく、明確な「理論」と「技術」に立脚して「怒り」を紐解いているのが、本書の有益さだと思う。

現代は「ストレス社会」と言われるようになって久しい。
だが、本文にもあるように、「怒りは人生を壊す唯一の感情」なのだ。
それを常に心に刻んでおきたい、そう思わせてくれる本だった。

抜き書きメモ

(※個人的なメモのため、一字一句が本文と同じではありません)

怒りは人生を壊す唯一の感情です。

アンガーマネジメントは人生をイージーモードにすることができる手段です。

フェデラー選手はアンガーマネジメントをメンタルトレーニングとして取り入れました。その結果、手に入れたのが世界ランキング1位の称号です。

怒りの原因は「自分自身の捉え方、考え方」。だから、怒りは自分でコントロールできるのです。

そもそも、アンガーマネジメントがアメリカで広がったのは、運転時のトラブルによる射殺事件が頻発したからという背景があります。

イラっとした時、最もマズいのが「おい!お前」などと、反射的に怒りを表現してしまうことです。反射的な言動は自分も相手もヒートアップさせてしまうので、さらに余計なことを言ってしまう可能性もあります。その結果、取り返しのつかない事態、最悪の結果をもたらしてしまうわけです。

イラっとした時に何より大切なのは、「反射的な言動をしない」こと。もしイラっとくることがあったら、6秒間だけ待ってみましょう。6秒ゆっくり数えるのが最も手軽な方法です。

怒りの感情のピークは長くて6秒と言われている。

イラっとする場面に遭遇してしまったら、コーピング・マントラもおすすめです。「大丈夫」「何とかなるさ」など。

タイガー・ウッズは、プレーオフで勝負する相手がパットを打つ時、「入れ」と願うそうです。その上で、「パットを成功させるお前より、俺はもっとできる。お前に勝つ」と考える。

思考を停止させるのにおすすめな方法は、頭の中で「真っ白な紙」をイメージすること。

アンガーマネジメントでは、まず「自分を変える」ことを目指します。周りを自分の思い通りに変えるのではなく、自分が変わる。その結果、気がつくと良い方向に向かっていくのです。他人を変えようとしない。世の中を正そうとしない。まず、自分が変わる。

ストレス解消法でおすすめできるのは、適度な運動です。

ネットサーフィンやゲーム、テレビなどはダラダラと見続けてしまいがちで、かえって疲れてしまいます。

表情と同様に、言葉づかいも気持ちにつながっています。言葉づかいがていねいで穏やかな人は、気持ちも穏やかになるのです。

イラっとしても柔らかい表情を心がける
→脳が「今、自分は楽しい」「機嫌がいい」と判断する
→本当にハッピーな気分になる

自分がストレスを感じがちな場所に近づかないことも大切。

価値観の違う様々な人たちと付き合う。海外旅行なども考え方に刺激を与えるのでおすすめ。

私たちは意外と、自分が何にイライラしているのかわかっていません。

怒りっぽさを解決するためにまず大切なのは、自分が「どのようなことに、どの程度イライラしているのか」を正確に知ることです。そこでおすすめしたいのが、アンガーログをつけること。腹を立てることがあるたびに記録をしていきます。

アンガーログはその都度、その場で書き留めます。分析、原因、解決策は書きません。出来事と怒りの強度だけを書いておきましょう。例えば「タクシーの運転手が道を間違えた。2」といった文面です。

「〜べき」「〜べきでない」という考え方(コアビリーフ)が怒りの原因。

別途メモにして「べきログ」をつけてみましょう。

コアビリーフは、「〜べき」の他に「〜はず」という言葉でも表現されます。

べきログをつけながらコアビリーフを見直す作業で心の許容量が大きくなっていきます。

ハッピーログをつける。

「出来事」「べき」「書き換え」の3つの箱を書き出し、振り返る。

人は「事実」より「思い込み」に引きずられる。だから、普段から事実と思い込みを切り分けるトレーニングをすることが大切。

解釈の仕方で出来事の意味は変わる。

怒りは二次感情であり、その裏には一次感情が潜んでいる。一次感情で心のコップがいっぱいになると、怒りとなって溢れてしまう。

怒りを感じた時、または相手を怒らせてしまった時に大切なのは、「怒りの奥にある一次感情は何か」を探ること。怒りそのものに対処するのではなく、一次感情に対処し、解決に導く方が効果的です。

「ポジティブに解釈できないかな」と、意識的に別の視点を取り入れてみる。物事を多面的に見る訓練になりますし、感情のコントロールに役立つバランス感覚を養うこともできます。

「変えられる/変えられない」「重要/重要でない」という2つの軸で分類すると、「手放すべき怒り」が見えてきます。手放すべき怒りが見えてくると、有意義な人生を送れます。

見ず知らずの他人のマナー違反は放っておけばいいのです。目にするのが不快なら、注目しなければいいだけです。翌日になれば忘れてしまうような出来事にいちいち目くじらを立てるのは、アンガーマネジメントの立場からは賛成できません。

他人の性格は変えられなくても、付き合い方を変えることはできます。相手は変えられないけれど、自分の行動は変えられることを忘れなければ、良い関係を築くことができるでしょう。

プライベートな人間関係で見返りを求めると、怒りを生む原因になります。他人への期待値を下げることで、怒りは抑えることができます。

権利・欲求・義務を分けると、イライラする機会は減る。

「自分ルール」は「世間の常識」ではない。ここを分けるとトラブルを予防できる。

ついつい怒りの感情をぶつけてしまう人は、多くの場合、自分自身の一次感情を認識できていません。

怒っていいことと、怒ってはいけないことを分ける。怒っていいのは事実、行動、結果。怒ってはいけないのは性格、能力、人格です。

「私」を主語にして伝えると、相手は受け入れやすくなる(アイメッセージ)。「あなた」を主語にすると相手は「責められている」と感じ、反発したり、心を閉ざしてしまうかもしれません。

怒りを伝える際に、言ってはいけない言葉があります。まず筆頭にあげられるのが、「前もそうだったけど」「何度も言っているけれど」などの過去を持ち出す言葉です。怒られている方は現在と過去の共通点がわかりません。

過去以外に持ち出してはいけない言葉に「いつも」「絶対」「必ず」などがあります。

失敗した相手に「なぜ?」と質問してはいけません。「なぜ?」という言葉には、相手を責めるニュアンスがあります。

ゆっくりと低い声で話すと、話に説得力が生まれます。

アンガーマネジメントは、より良い人生を手に入れるための手段。

運転中は車という道具の力で、自分が偉くなったかのような万能感を抱き、乱暴行為に走りやすくなる。さらに、車はプライベート空間なので、その人の本音が表れやすいのです。

運転中に怒りをコントロールできなくなってしまい、加害者になる可能性は意外に高い。

車内や手元に家族の写真を置く。

パートナーに対しても、「結局は他人。話し合わなければわからない」と割り切りましょう。

「自分の人生」と「子どもの人生」を切り離す。子どもの人生は親の「2周目の人生」ではない。

「心を整える」とチャンスが巡ってくる。

アンガーマネジメントを学んでからの私の大きな変化は、いわゆる「敵」が本当に少なくなったことです。そして、色々な人との仕事が広がるようになりました。

アンガーマネジメントは、人生をイージーモードにしてくれる。

アンガーマネジメントで「運のいい人」になる。

アンガーマネジメントを学ぶことは、コンピューターに例えるなら、OSのバージョンアップをすることです。「営業ができる」「交渉が得意」といったスキルはいわばアプリケーション。OSの性能が上がれば、アプリケーションはさらに真価を発揮します。

編集後記

昨日から不安定な天気が続いている。
平日はずっと晴れていたのに、よりによって、洗濯をまとめて片付けたい週末だけ崩れなくても・・・。
こんな日は、家で読書や映画を見たり、部屋の片付けをして、少しでも有意義に過ごしたいと思います。


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