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おとぎ話とハッピーエンドーチェリまほ THE MOVIEを見て。

4月8日から公開になった「チェリまほ THE MOVIE〜30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい〜」を見てきました。


去年のクリスマスにチェリまほのドラマにハマり、それからすっかり赤楚衛二さんのファンとなり出演されているドラマやら映画やらを紐解き、3月からはチェリまほ関連の取材が掲載された雑誌を集めては、指折り数えてこの日を待っていました。

すでに2回観覧したので、個人的な感想を記したいと思います。
一部ネタバレ的なので、大丈夫な方だけご覧ください。



まずはじめに

僕は赤楚衛二さんのファンですし、町田啓太さんも好きなので、そもそもこのお二人を映画のスクリーンで拝見できるだけでも満足です。
柔らかな映像美もそのまま、繊細な表情で魅せる描写も魅力です。
最後に二人が堂々と手を繋いでゆっくり歩くシーンは、希望を感じました。それでもいくつか、気になった部分について触れたいと思います。

1. ストーリーの断片

今回の映画はハッピーな交際の日々からの長崎転勤を描く前半、同棲から両親への挨拶(カミングアウト?)から結婚(現実かは不明)を描く後半に大きく分かれています。
特に長崎転勤のエピソードがかなり端折られているので、安達の後半の覚悟や成長がやや唐突な印象を受けました。長崎でデートしたり、行き来している生活を描いたりするともっと感情移入できたかなと思いました。
原作でデート中に二人で結婚式を見掛けて、結婚を具体的に意識するシーン、とっても素敵で期待していたので、映画にはなかったのが残念です。(というか長崎でロケ自体していないのではないでしょうか。コロナなどの事情もあるかもしれませんが、長崎の町が出てこなかったのもいまいち現実味がなかった部分かもしれません)

2. LGBTが抱える課題の描かれ方


長崎で体調を崩して倒れてしまう安達が、会社と親族には連絡が入ったのに大切な人(同性のパートナーである黒沢。交際を親しい友人以外には明かしていない)には連絡する術がなかったことを経て、お互いの家族に挨拶することを決意します。

医療職として働いていると、こうした事例はよく耳にする話で、同性パートナーが医療現場で家族として認められない、関係性を隠しているが故に連絡を取れないなどの問題が起こっています。
社会問題の要素を含めて、そこから二人の関係を家族に伝えていくプロセスはとても現実的であり、二人がそのために歩んでいく様子も誠実な印象に映りました。
黒沢の母親が「二人の未来が心配なの」と伝えるシーンは、同性だから認めない、ではなく、息子への愛情があるからこその思いが表現されていてとても印象的でした。
チェリまほの主な視聴者は20-40代の女性でしょうから、こうした人たちにとっても響く表現だったのではないかなと思います。

3. 男子同士のラブシーン


チェリまほでは、メインの2人の直接的なラブシーンは描かれません。
ここは所謂BL作品である原作とは大きく異なっていて、映像も昭和の青少年向けのベッドシーンのような処理をしています。(朝にちゅんちゅん鳥が鳴いて、ベッドで眠る二人がいて、後朝を思わせるような)

あたり前のようで、それでもやっぱり疑問なんですが、男女のキスシーンは当たり前なのに、どうして男子同士のキスシーンはダメなんでしょうか。
男同士がキスすることが、いけないことでしょうか?
関係性と成長を描くこの作品自体にラブシーンそのものの描写が絶対だとは別に思わないのですが、あの二人の関係性に現実味を持たせるのには、説得力のある表現だったと思います。このような形で描写を避けられることに、冷静になってしまいました。柘植と湊がTVドラマでラブシーン(キスシーン)があったことを考えると尚更です。
もちろん安達から黒沢に触れ、「この愛しさをどう伝えられるだろう」と安達と黒沢が指を絡ませて手を取り合う描写も、切実さが伝わってとてもよかったのですが。

間違いなくこの国の偏見を超えていきたい力を持った、そんな思いも持って作ってくれているであろう作品から、ガラスの天井を突きつけられるような、苦しい瞬間でした。
この先、どんなセクシュアリティの関係も、当たり前に描かれる時代になっていきますように。

さいごに


魔法という部分で根っこに大きなファンタジーを置きながら、ストーリーは現実感を持たせながら丁寧に描写していたTVシリーズと比べると、映画は色々なディテールを端折ってしまったために二人の関係性や成長が断片的に見えて、混乱したり、すっと入り込めない部分がありました。
そういう意味で、やはりTVシリーズのファンのための映画なのかもしれません。

それでもほんわか暖かい気持ちと、二人の幸せな結末と未来を見られてとっても嬉しい気持ちには変わりありません。
映画の台詞のように、これはおとぎ話とハッピーエンドの話なのかも。
まだ1-2回は映画館に観に行こうと思います。

今日は上田で映画を見てきました。cherry(桜)が満開でした。

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