坂井雄貴(ゆうさん)

家庭医・総合診療医/医療者のためのLGBT支援団体「にじいろドクターズ」代表。 長野県…

坂井雄貴(ゆうさん)

家庭医・総合診療医/医療者のためのLGBT支援団体「にじいろドクターズ」代表。 長野県軽井沢町 診療所と大きな台所があるところ「ほっちのロッヂ」で働きながら、みんながありのままに、HAPPYに暮らせる社会を目指しています。

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「はじめまして」 と、言葉にすること。

みなさんこんにちは! 初めまして。坂井雄貴と申します。 簡単に自己紹介。 千葉県出身で、家庭医をしています。 4月から長野県軽井沢町、診療所と大きな台所があるところ「ほっちのロッヂ」で働いています。 LGBTの医療支援団体「にじいろドクターズ」代表としての活動もしています。(ご関心のある方は、こちらをご覧ください!) 趣味はバラとハーブを育てること、ケーキを焼くこと。 ダイバーシティ、LGBT、ジェンダー、性教育ーこんなトピックに関心があります。 年齢も性別も状態も関

    • WONCA@Sydney参加の足あと〜文化とアートとマイノリティ〜

      10月末にシドニーで開催されたWONCAの世界大会に行ってきました。 コロナ後4年ぶりの海外。いろいろ感じたことを記しておきます。 WONCAとは? WONCAは世界の「家庭医」の学会で、プライマリケアを専門領域とする医師を中心に参加しています。 2年に1回世界大会と地方会があり、今年はコロナ後初の世界大会の開催でした。 私は専攻医のころに国際交流に関心があり、日本プライマリ・ケア連合学会の交換留学プログラムでWONCA APR(アジア太平洋領域の地方会)でタイ・パタヤ

      • 医療とアート・コミュニケーションー「とびラー」に、なりました。

        今年4月から、上野にある東京都美術館と東京藝術大学が合同で行なっている「とびらプロジェクト」で活動を開始しています。 開始から4ヶ月が過ぎ、やっとことばにできる心持ちになったので共有したいと思います。 "とびらプロジェクト"とは? 東京都美術館が12年前のリニューアル時に「すべての人に開かれたアートへの入り口」というミッションを実現する一つの大きな活動として、同じく上野にある東京藝術大学と連携し立ち上げた「アートを介してコミュニティを育むソーシャルデザインプロジェクト」

        • 庭づくりをする人たち

          6月はプライド月間。 何年か前から、私にとってプライド月間は心がざわつく月だ。 LGBTQの権利を、人としての誇りを感じる月のはずなのに、特に2020年ごろから日本では、プライド月間にはバックラッシュが起こる。 今年は特に目立っていて、ここ1-2週間のSNSやニュースはちょっと目を覆うような状態だ。人のこころに巣食う不安や闇の大きさをまざまざと知り、胃のそこがひっくり返るような、痛みを感じる。 そんな2023年6月16日、この国ではLGBTに関わるとある法律が作られた。 6

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        「はじめまして」 と、言葉にすること。

          当事者性とアクセシビリティー映画「エゴイスト」

          *一部映画の本編内容を含みます。ご了承のうえお読みください LGBTQがテーマになっている映画を見るのは、なんともはがゆい気持ちになる。 少なくとも日本の作品は描き方に無意識な差別があることも多くて、日常に暮らすLGBTQではなく、アイコンとしてのLGBTQというステレオタイプを再認識させられる。 がっかりしたり、怒りを感じたり、感情がネガティブに振れることが多いから、見るのが怖い。 自分にとってのLGBTQ作品とは、そういったものだ。 公開前から話題になっていた「エゴイ

          当事者性とアクセシビリティー映画「エゴイスト」

          スクラブを着た日

          「スクラブ」という服がある。 医療者でない方は、名前を聞いてもピンとこないかもしれない。 医者が手術室とか救急外来で来ている服、というとわかるかたもいるだろうか。 今主に働いているほっちのロッヂでは、白衣を着ない。 さいごに病院で働いていたのはもう5年くらい前だと思うので、それ以来日常的に白衣を着ることはなくなった。 スクラブを着ていたのもそれくらい、ずっと前のことだ。 今年は何度か、そのスクラブに袖を通した。 そういえば、医者になりたてのころは白衣よりもスクラブに憧れて

          スクラブを着た日

          医者が花屋になりました。

          10月19日、朝はしんと冷えた、秋晴れの日。 ほっちのロッヂでは朝市が開かれた。 (詳細はこちらもどうぞ https://hotch-pr.com/n/nef052b9f1973) 今日は1日花屋になる日。 気まぐれにオープンする、ほっちのドライフラワー屋さんを開店した。 軽井沢での花屋のはじまりは3年前、まだほっちのロッヂができる前に地域のマルシェで1回、2年前に近くの作業所のバザーで1回。2年ぶりの開店だった。 1ヶ月くらい前から、花好きの同僚と一緒に、診療の合間を縫っ

          医者が花屋になりました。

          バラとケアに関する、日々のできごと。

          何度かnoteでも書いているが、僕はバラを育てている。 ほっちのロッヂの庭に、30本ほど。 ほっちのロッヂで毎月出している新聞で紹介してくれたり、ロッヂを訪れる人にメンバがバラの話をしてくれたりするので、僕がバラが好きということはロッヂに関わる人は割と知っている事実になりつつある。 先日訪問診療で伺った先で「バラの様子はどうですか」と聞かれた。 どこでお知りになったんですか、と伺うと毎月来る新聞を楽しみにしていると。7月の新聞には、同僚がバラの記事を書いてくれたのだ。 「

          バラとケアに関する、日々のできごと。

          中学受験と日本国憲法の記憶

          ここ最近は世の中の動きがあまりにも急峻で、でもそれは自分が意識していなかっただけで、きっと世の中を動かす人たちは計算し尽くしていたのではないかと思うくらいに、気がつくと大きな流れが生まれている。 流れに抗うことができるのか、自分の大切にしたいものやこと、人々を守るには、どうしたらいいのだろうとあれこれ悩んでいたら、前回のnoteから2ヶ月以上が経ってしまった。 それでも、思った時に、自分主語で言葉にしなければ、今の瞬間のことばはどんどん流れ過ぎていってしまうと思い直して、

          中学受験と日本国憲法の記憶

          八十八夜の別れ霜

          今年の軽井沢の冬は寒かった。 日陰になる畑は1月から3月までずっと雪に埋もれていたし、バラは何本もの枝が凍みてダメになってしまった。 そして4月中旬ころに、冬を土間で越して、そろそろと思い外に出したアロマティカスとレモンバーベナは、4月下旬の遅霜にやられてしまった。 寒いところで植物を育てること、軽井沢にきて3年目だがまだまだ慣れないことが多い。 最近、こんな言葉を知った。 八十八夜といえば小学校で習った「茶摘み」の唱歌のイメージだが、これを聞くと、なるほど、ゴールデンウィ

          八十八夜の別れ霜

          おとぎ話とハッピーエンドーチェリまほ THE MOVIEを見て。

          4月8日から公開になった「チェリまほ THE MOVIE〜30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい〜」を見てきました。 去年のクリスマスにチェリまほのドラマにハマり、それからすっかり赤楚衛二さんのファンとなり出演されているドラマやら映画やらを紐解き、3月からはチェリまほ関連の取材が掲載された雑誌を集めては、指折り数えてこの日を待っていました。 すでに2回観覧したので、個人的な感想を記したいと思います。 一部ネタバレ的なので、大丈夫な方だけご覧ください。 まずはじめに

          おとぎ話とハッピーエンドーチェリまほ THE MOVIEを見て。

          「見かけ」のダイバーシティと性表現

          私の団体で開催したLGBTQに関するセミナーで、感想に「登壇者が男性、女性で偏っていたこと」についてご意見をいただいたことがある。 なるほど、そうかと思い、それでもなんとなく腑に落ちない感覚だった。 もやもやと、自分の痛いところをくすぐられるような違和感と。 最近、このような指摘はダイバーシティの界隈でよくみられる。 過去に私が登壇した医師のキャリアに関するセミナーでは、4名いた登壇者全員が男性(ジェンダーは男性だと思われるが、セクシュアリティについては推測はできても確

          「見かけ」のダイバーシティと性表現

          「医者」という専門家と代替医療

          医療に関わる仕事をしていれば、所謂標準治療とされるものとは異なる選択をする方と出会う。 新しい薬やワクチンへの抵抗感やステロイド外用や抗がん剤への忌避など、その反応は様々で、そのために取られる方法も、民間療法とされる様々な治療が行われている。 家庭医療のバイブルの一つである「TEXTBOOK OF FAMILY MEDICINE」の冒頭に、以下のような一節がある。 僕が専攻医(当時の言い方だと後期研修医)1年目の4月ごろ、家庭医療に足を踏み入れたばかりの自分が同期と一緒

          「医者」という専門家と代替医療

          「チェリまほ」から考えた、セクシュアリティのこと。

          クリスマスの日にふとhuluを開いたら、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(通称チェリまほ)のドラマがアップされていた。 このドラマ、評判はいいらしいと耳にしたことはあったけど見たことはなかった。 というのもBL(ボーイズラブ)というジャンルについて、LGBT支援団体の代表として日々性について伝える立場の自分にとって、何となく割り切れない部分があり手をつけていなかったのだ。 ただ手持ち無沙汰なクリスマスのお供にと、見始めてみたらまさかのどっぷりハマってしまい、こ

          「チェリまほ」から考えた、セクシュアリティのこと。

          やっぱり医者なんだなと気づいた話。

          「この本を読んで、ほっちのロッヂみたいと思ったんです」 先日お看取りをした方のご家庭に挨拶に伺ったとき、ご家族にそう言って手渡された本には、海が描かれた表紙に「ライオンのおやつ」と書かれていた。 最近は小説を読むことがめっきりと減った。 帰宅部だった中学生と高校生のとき、僕は本の虫で、年に100冊近くの小説を貪るように読んでは、生意気に大学ノートにレビューを書いていた。 電車通学だった当時、2日間の往復で読み終わる、200ページ以内の短めの小説をよく好んで読んでいたことを思

          やっぱり医者なんだなと気づいた話。

          秋の薔薇で、ふと季節を感じた話。

          前回筆を取ったのが7月。それからあれよあれよと感染症の第5波がやってきて、軽井沢には夏がやってきて、たくさんの出会いと別れがあり。今、ほっちのロッヂには薔薇がひっそりと、見頃を迎えている。 秋の薔薇は春のように豪奢には咲かず、ひっそりと首をもたげるのがいい。 レディ・ヒリンドンという薔薇がある。 ティー・ローズで、オールドローズに含まれるけど、噂に違わぬ四季咲きで、アプリコット色の花がとても繊細な色合いを出している。(こちら写真を撮り忘れたのでネットで調べてみて欲しい。と

          秋の薔薇で、ふと季節を感じた話。