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「とにかく情報発信を始めろ!」と言うすべての上司へ。"発信鬱"を防ぐためにできること。

「担当者の情報発信が続かないんですが……」
「やってはいるけど意味あるのかなって……」
「情報発信担当ってことになったけど、つらくて……」
「効果的な情報発信とは……」

”情報発信について”と掲げられた場でよくあがるこの質問。昨年も呼んでいただいた数度の講義や会議であがりました。
そこで「それって、こういう始めかたじゃありませんでしたか?」と聞くと、苦笑いで図星の確率がわりと高い。

目的なきSNS運用の始まり

ある日突然、上司が発する。

「なぁ……、これからの時代、SNSらしいな」

(……え?)

「誰でも情報発信できるんだよな、誰でも」

(......え、どうした?)

「いますぐ始められるんだよな」

(……..うん、でもいままでやってなかったよね?)

「しかも無料なんだよな」

(……嫌な予感)

「いいことばっかりだな」

(……やだ怖い!)

「こんないいものを使わない手はないよな!」

(……やだもうお家帰りたい!)

「うちもやろう!」

(……え、まって。何の情報発信!?)

「とにかくはじめて!」

(……え、まってまって。何のためよ!?いつまでよ!?)

「やりながら考えよう!」

(……え、まって。それ絶対あとで考えないやつだから!)

「よろしくな!」
(……って俺なの!? まってよ!)

以上、地獄の「目的なきSNS運用が始まる瞬間」でした。

専門知識と経験を持つ広報担当者が不足しがちな中小企業や地方自治体の部署内に特に見られがちなこのシーン。

「やらないより良い!」って言うけれど、これじゃやっても前には進まない。進まないことやるくらいだったら、もっと他にやるべき仕事があるはず。「情報発信=SNSの時代!」なんて言っても、なんかいいことあるかもとか、やらなきゃ損とか、そんな漠然とした理由でやみくもにスタートすると、部下の”発信鬱”すら引き起こす。会社の資本を無駄遣いするのはやめましょう。

以下、やってみてくださいと紹介する「情報発信を始めるその前に」のキホン。悩んでる方は参考に。


①まずは「なんのために?」の目的設定を

まずやるべきは「目的設定」。
そこまでは言い出しっぺも一緒にやりましょう。あなたがその上司でなくても、こんな場面に遭遇したら「始めるなら、みんなで目的設定する時間を持ちませんか?」と提案してみてください。2時間もあれば良い会議になるはず。2時間の会議から目的に近づく手段を生み出せるなら全然悪くない。

いきなり会議のお題を「情報発信の目的を設定する」としては頭が混乱しそうなメンバー構成な場合は、「そもそもいわゆる情報発信って何のためにされてるものだっけ?」というところから会話をしてみてください。

例として「より速く新しい情報を届けるため」とか「より分かりやすく伝えるため」。他には?「情報を可視化して伝えるため」とか「もっと細かな情報を届けるため」とか。

では、「うちの場合は何のため?」のディスカッションに。

企業さんであれば、商品の認知度向上、 新商品の紹介、商品の裏側まで紹介して信頼度向上、社風を紹介して信頼度向上や採用促進、ユーザーの声を聞いて満足度向上などのなかにあるのでは。

自治体さんであれば、行政サービスの周知や利用促進、観光促進、移住促進など。色々出揃ったら「このなかで大事なのはどこでだろうね」って優先上位3位くらいつけてみる

そしてその3つを記したメモ、担当者のデスクにでも貼っておいてあげてください。すぐ忘れちゃうものなので。発信に悩んだ時のお守りだと思って。

②次は「誰に? 何を? どんな風に? 」のイメージを

商品設計の際にターゲットが設定されている場合は良いのですが、そういった設定がふんわりしているのが自治体さんがもしれません。「みなさんに」「市民に」「県外の人に」「都会の人に」というのは、在って無いようなものでターゲット設定とは言えないもの。男性でも女性でもいいの? 子どもも含むの? 都会って東?西も含むの? どんなことを求めてる人? 予算どれくらいある人?

「あぁもうそんなの要らない。とにかく始めよう!」という人がいますが、これがないと埋もれること確実。自治体だけでも8割がSNSを運用している時代、全国1741市町村の公式アカウントは無数。そんななかで、誰向けかもわからない、どうやら自分向けでもなさそうな、無計画なアカウントに心惹かれる人がいるわけがない。「やりながら考える!」というけれど、何でも投稿していたら、多ジャンルの情報が一貫性もなく発信され、興味もひかないアカウントのできあがり。やるならやっぱり届けたい人に届くものを。

③どこに誘導するのかの決定を

「誰に?」を絞ったことで、そのターゲットが喜ぶ情報やトーンが想定されて「何をどんな風に伝える?」が見えてくる。何のために(目的)やっていて、一番動かしたい人(対象)はこういう人の層で、こんな情報を受け取ればこういう行動を起こしてくれるはず(道筋)が出来上がる。

設定した目的の達成につながる情報ページや購入ページ、参加申し込みページ、問い合わせページなど、最適なものをSNSからの誘導先に。
効果もここで測れるので、分析や改善もしやすいし、担当者への評価やアドバイスも混乱を招くものや理不尽なものにならず、一緒に歩むことができる。

逆にこれらの設定がないと、担当者だって、
「自分のアカウントじゃないから何を投稿するか決められない」
「誰に向けているかわからないから何が喜ばれるかわからない」
「手応えも感じずモチベーションが続かない」
「これいつまで続ければいいのか不安」

と、孤独感を高めがち。

④おまけ 「大事なルール」設定を

そこまでやったら、おまけで以下を。

担当者のキャパ確保
1個ずつが商品なわけでもないし、何だかスマホからぴこぴこってできちゃう作業イメージだからか軽く見られがちですが、本気の情報発信ってかなり労力も気力も使うんです。今の業務にプラスアルファするだけじゃなく、担当者のキャパ確保を。

担当者の人選は的確に
そもそも書くことや発信には得意不得意、向き不向きがあります。もちろんプロや得意な人なら息するようにできるけれど、苦手な人にとってはストレスこの上ない行為(プライベートでだって苦手な人は苦手な分野)。
もし適任がいなければ、せめて最初はコンビや曜日担当制にするとか、プロのレクと伴走サポートを短期間でもつける(弊社もやってます)のがおすすめです。

今一度、SNS媒体を選ぶ
SNSと一言で言ってもご存知の通り種類があってそれぞれに強みがあるので、そこも上記と同じ手法で洗い出してどれが合うか再検討を。

気を付けることリストを
自分個人のSNSはやってるけど公式のもの、ましてや会社のものなんて恐ろしい……という気持ち。そこは曖昧にせず、気を付けることリストを出し合ってみて。例えば、
・正しい情報か見直しを
・公私を区別した発信にする
・個人情報を盛り込まない
・誰かを傷つける内容が含まれないか注意する
・著作権や肖像権を侵害しない
などは常識と思っていても「実は著作権って何か分かってなくて……」というメンバーがいるかもしれないということで、念の為。


会議はエキサイトせずに平和にやりましょう〜。むちゃぶりにイライラしないで、冷静に、整理して、現実的に〜。

たらくさ文化旅行舎がつくる旅の紹介はたらくさ文化旅行舎のnoteから


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