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「自分の型」にはめず、「相手の型」にはまるべし。EXIT兼近、ぼる塾…を育てた男の部下育成論

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

部下をうまく育成できていますか?

・明らかに才能がある「天才型」

・即戦力ではないけど伸びしろのある「大器晩成型」

・この仕事や会社に向いていなさそうな「凡才型」

……など、部下の能力はバラバラに見えるので、多くのリーダーポジションの方が「育成の悩み」を抱えていることでしょう。

そこで今週は、約1万人の芸人の卵(M‐1王者~無名まで)と向き合ってきた、僕なりの「育成論」を綴りたいと思います。

部下に「向いてない」と言う人は、育成に「向いてない」


まず、育成をするうえで絶対に言ってはいけないワードがあります。


それは、部下や後輩へ言ってしまいがちな言葉。
「この仕事に向いてない」です。

これを口にしてしまう人は“育成に向いてない人”になるので要注意です。

能力のない新人に「向いてない」と言って何が悪いのか?
そう思う方もいるでしょう。

しかし、政治家の発言の「一部」を切り取って報道すれば、たやすく印象操作ができてしまうように、ビジネスパーソンの「新人期間」だけを切り取り、「その人のすべて」と判断してしまうのは、あまりにも危ない思考です。

例えば、僕の教え子には、EXIT兼近、ぼる塾、オズワルド、空気階段、コットンらがいますが、みんな芸人学校時代は今のような能力を発揮できていませんでした。

彼らはみんなコンビを解散して、トライ&エラーを繰り返すことで“本来の力を発揮できる職場を手に入れた”のです。

もし僕が、「君は、芸人に向いてないよ」と言ってしまっていたら? それによって彼らが“終了ボタン”を押していたら? そう、今日の彼らの姿はないのです。

「育成」とは“若手の人生に「介入」することではなく、「自立」をサポートすること”です。

私たち指導者は、ビジネスシーンという名の「ピッチ」に入場した彼らを、裁いたり、退場を告げたりする“審判”になるのではなく、1秒でもピッチに立ち、長くプレーしてもらうための知恵や技術を授ける“トレーナー”であるべき。僕はそう思っています。

「区別」はするけど「差別」はしない


では、能力差のある部下(天才型、大器晩成型、凡才型)を目の前にしたとき、どのように育てていけばよいのでしょう?


僕の場合、大きく2つのルールを自分に課しています。

それが、

・区別はするが、差別はしない

・相手を型にはめず、相手の型にはまる
です。

まずは1つ目。
僕は今、3つの学校で約1200人の生徒を受けもっていますが“区別はしても差別はしない”を心根に置いています。

学校に「進学クラスと普通クラス」、スポーツに「黒帯と白帯」があるように、生徒の目的や能力によって“区別をする”ことはあっていいし、育成の効率も上がります。

しかし、生徒が天才であれ凡才であれ、不当に扱ったり、愛情に差をつけたりといった“差別をする”ことは絶対にしません。

なぜなら、国家もしかり会社もしかり“組織は頭から腐る”から。リーダーが「差別」をするようだと、必ず組織が不全になるからです。

2つ目は、「相手を型にはめず、相手の型にはまる」です。

多くの指導者は、自分なりの指導マニュアルや、育成フレーズを溜めていくうちに、“自分の指導の「型」に部下をはめていく”傾向があります。

「型」を持つことは良いことですが、天才型や生意気な新人など、自分の「型」にはまりにくい人種を、持て余したり、毛嫌いしたりといったパターンに陥りやすくなります。

なので僕は、自分の型にはめることは避け、「何か聞きたいことはある?」「どんな授業をしてほしい?」などの質問を投げかけることで、生徒の「型」に自分がはまるようにしています。

そうすることで、未経験者は、基本的な質問や相談をしてきますし、大学のお笑いサークル出身だった令和ロマンのような経験者は、レベルの高い質問や問題を提起することができます。

そして、こうした「新人主導の育成」を重ねていくことで、自分の中に、天才型~凡才型まで、さまざまな対応の「型」が形成されていくのです。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

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