見出し画像

保育士としての働き方体験談③~小児科病棟~

保育士としての働き方体験談②~病児保育室~はこちらから↓

※これから書くことは、あくまで個人的な体験であり感想です。
すごい長文になりましたので、ちょっとずつどうぞ。

病児保育室での契約が終了する日が近づいてきたころ、提携していた小児科の医師と世間話をしていました。
そのときにたまたま、3月末で契約が終了するという話をしたところ、「うちの保育士さん辞めちゃうから、4月から来る?」と突然のスカウトが。

そんなひょんなことから、小児科病棟で保育士として働くことになりました。
病棟で働く保育士さんがいる、ということは知ってはいましたが未知の世界で、飛び込むと決めたものの緊張感はありました。

小児科病棟ってどういうところ?

小児科病棟は、病院によって全然違うんじゃないかと思います。
私は自分が勤務していたところのことだけ語ります。
私の勤務先では、産科を卒業後すぐから14歳までのお子さんが入院していました。
基本的には重病のお子さんはおらず、ほぼみんな元気になって退院していくところでした。
入院期間も平均1週間くらいだったんじゃないかと思います。
どういった疾患のお子さんが入院しているところかによって、保育士の関わり方や業務、精神的な負担なども大きく異なると想像されます。
長く入院するお子さんがいらっしゃるところだと、院内学級があったりするようですね。

小児科病棟での保育士の役割とは

私がしていた業務は
①入院中の患児さんの保育
②おもちゃ等物品の管理
③看護助手
④病棟内の飾り付け
でした。

①入院中の患児さんの保育

私の勤務先では保育士が私ひとりで、保育士が存在することにまだあまり慣れていなかったため、1日の行動スケジュールは要望がない場合ほぼ私が決めていました。
保護者の方が付き添っていない、お預かり入院のお子さんを中心にみていました。

勤務先では、感染症をこじらせたお子さんが多く入院しており、その場合は感染対策として病室から出られないため基本的にベッドサイドで一緒に遊びます。
おもちゃは病棟のものを貸し出したり、患児が持ち込んだもので遊びます。

遊ぶ以外に、食事の介助や授乳、おむつ替えおよびトイレの介助、着替えの介助等も行っていました。

お子さんのところへどんな順序で、誰を優先するかは自分で決めることが多いのですが、最優先はやはり泣いている人や精神状態が落ち着かない人。
体調が悪くもともと機嫌が悪いところへ、知らない空間で保護者の方が不在ということで、入院当初は激しく泣くお子さんが多くいます。
その子たちがなるべく早く安心した気持ちになって食事や睡眠が問題なくできるように精神的な面でサポートするのが大きな役割でした。
特にコロナになった後は面会制限が厳しく保護者がほとんど来られない時期もあったので、精神面のサポートが大きな意味を持ちました。

サポートが必要なお子さんが多くいる場合には、眠ったタイミングや医療的処置が入るタイミング、保護者の面会があったタイミング等で離れて他のお子さんのところに順番に回っていました。

本人の希望があれば勉強を見ることもありましたが、専門家ではないので病棟として保護者の方にそれを保障することはせず、サポートする程度ということにしていました。
そもそも、だいたい2週間以内に退院するお子さんがほとんどだったので、勉強を見る必要性が高くはありませんでした。

②おもちゃ等物品の管理

病棟で保管している貸し出し用のおもちゃや絵本、遊びで使用する折り紙・画用紙・塗り絵等の物品の管理です。
ひとりが使用した後は必ず消毒を行い整頓したり、電池の交換や破損の有無の確認などメンテナンスを行います。
新たに欲しいものを相談したり、手作りすることもありました。

小児科病棟では感染対策が重要なので、使用できるおもちゃは基本的に消毒のできるプラスチックや木製のもの。
布のものは使用していませんでした。

③看護助手

これは、勤務先の病院によって病棟保育士が担当しないところもあるかもしれないのですが、私は担当していました。
保育士業務がある際はそちらが優先なのですが、手が空いているときには看護師さんや実際の看護助手さんと共に行いました。

業務内容としては消耗物品の補充や機器等の消毒、患者さんの部屋移動のサポート、退院後の居室内の消毒やベッドメイクなどでした。

④病棟内の飾り付け

季節に合わせた壁飾りを作製していました。
基本的に、消毒ができるようにラミネートした平面のものがほとんど。
患児さんのベッド内に剥がれ落ちてしまうと窒息や誤嚥の危険性があるので、ベッドから離れた位置にのみ飾り付けをしていました。

小児科病棟での遊び方

先ほども少し書きましたが、基本的にはベッドサイドで遊ぶ形になります。
また、片手に点滴が入っている人が多い。
なので、病棟から貸し出すおもちゃにしても、片手でもなんとか遊べるか、もポイントです。

幼児さんであればブロックやおままごと等、自分の想像力で広がりやすい遊びのほうが集中力が持ち、ベッドサイドでも遊びやすかったです。
ごっこ遊びにもなりやすい。
手が自由になってくれば折り紙や工作などもしました。

好きなものがはっきりしているお子さんだと、持ち込みのおもちゃにも特徴が現れています。
多いのはプラレール、あとウルトラマンや仮面ライダー系のソフビ人形、恐竜。
そういうのだと知らないけどその世界観に私が染まってごっこ遊びしたり怪獣となって倒されたりしていました。

0歳~1歳くらいのお子さんだと、音の出るおもちゃや大きめのマグネット、絵本、大きいブロック等を使用することが多かったです。

また小児科病棟ならではといったところで、ゲーム機器やタブレットを持ち込まれることも多い。
一緒にゲームやろう、と誘われることも多かったのですが、ゲームはあまりやってこなかった私。
子どもに教えてもらったり叱られたりしながら一緒にやっていました。
(たまにこちらが真剣にやって勝つと逆に怒られたりする)

全然おもしろさがわからないYouTubeを延々一緒に見たり、DVDの映画をその子が好きなクライマックスだけ見せられたりとかしたな……

ちなみにコロナ禍の前は、感染症じゃないお子さんはプレイルームに一緒に行って遊ぶこともできたのですが、コロナ禍になってからはプレイルームが使用できなくなりました。

小児科病棟ならではの保育の難しさ

①保育士が私ひとり

これは私が勤務していたところがそうだったという話になりますが。

保育士が私ひとりなので、「保育」という観点で相談できる相手がいなかった。
私はそこで二人目の保育士でしたが、まだあまり保育士をどう活かすかについて考えられていませんでした。
そもそも看護師さんの補助的な役割を求められている部分が大きかった。

看護師さんたちは、医療的な処置をし治療をするという最大のミッションを優先して動いています。
だから、「保育」という視点を持たない(持つ人も稀にいるかもですが)。
大人による関わり方を一貫したものにしたいと思っても、その大切さが理解されないし共有が難しい。
保育の観点では、あまりしたくない言葉がけとか耳にしても、やんわり伝えたり私が言い直すとかで気づいてもらうくらいしかできなかった。

さらに私ひとりということは、全部の子とまんべんなく遊ぶのが難しい。
たくさん患児さんがいるときは、ほとんど遊ぶことができずに授乳して回って寝かしつけて回る、みたいなこともありました。

②空間が変わらない

遊びと食事と眠る空間がずっと一緒、ということが保育的には難しかった。
気持ちを切り替えるのが難しいんです。
はい、食事だよ。ってなっても。
ちょっと片づけてもおもちゃが目に入る。
必ずしも私が介助できるわけじゃないとなると、普通におもちゃ触ったまま食事してたりする。
保育園で、生活の内容ごとに場所を決めて変えるというのは意味があるんだなって感じました。

あと単純に子どものストレスが増えてくる。
機嫌が悪くなったり精神的に不安定になることもある。
仕方ないけどね、私にぶつけて気持ちが軽くなるならと、不機嫌を受け止めていました。

③しつけの塩梅

短期間の入院という特殊な状況なので、しつけするよりもとにかく安心して過ごせるとか、ストレスを軽減するのを優先する場面が多かった。
普段はできることでも、やってほしければやってあげるし。
ただ気になったのがやっぱり食事のとき。

治療的な観点からいくと、なるべく量を食べてほしい。
食事の量さえ増えれば退院できる、みたいなこともあるんです。
そうなるともう、途中で遊びを挟みながらでも機嫌をとってパクッと口に入れちゃう、なんてことしても食べさせちゃう。
内心イヤだなぁと思いながらも、今は特別だから退院してから頑張れよ、とか思っていました。

小児科病棟での仕事のやりがい

病院を退職するときに、小児科の医師の方が言ってくださったんです。
「先生のおかげで落ち着いた、っていうお子さんがたくさんいました。本当に助かりました」と。

そんなふうに思ってくれていたのかと、本当に報われた気持ちになりました。

思いがけない入院で保護者の方々もショックを受けたり、お子さんがパニック状態になって疲弊していたりする。
ある保護者の方が付き添いして入院されていたお子さんを、保護者の方の外出中にみていたときのこと。
ずっと泣いていると聞いていましたが、好きな本を一緒に見ているうちに笑顔になってお話ししてくれるようになりました。
戻ってきたお母さんが「ここへ来て笑顔になってるのを初めて見た」と喜んでくれました。

入院している間は、お子さんも不安や苦痛と小さな体で戦い続けています。
それでもやっぱり、遊んでいると笑顔が見られて楽しそうにしてくれる。
小児科病棟で働いているときに、遊びというものの持つパワーを本当に感じました。
しんどい状況にいるお子さんたちが笑顔でいるための手助けができていると感じることが、やはり一番のやりがいでした。

私の場合、もともと空気を読んで気を遣いすぎるという性質を持っているせいで、保育士が私ひとりだという環境に疲れてしまった部分がありました。
求められていることと私がしたいと思うこと、必要とされていることいないこと…みたいなのを考えすぎてしまったかな。
(看護師さんにも医師にもとても親切にしてもらいましたけどね!)

だけど、小児科病棟での仕事自体はやりがいにあふれる素敵な仕事だと思います。
小児科病棟も千差万別、いろんな環境があるかと思うけど、私の場合はこんな感じでした。
書ききれてないこともあるけれど、この辺で。

長文へのお付き合い、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?