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はつ恋と相合傘 / 雨はいつも想われる片方をぬらさない

Amazonプライムで『水は海に向かって流れる』を観た。原作は田島列島氏の漫画『水は海に向かって流れる』。26歳の女性・榊(さかき)さんと男子高校生の直達(なおたつ)くんを中心に繰り広げられるシェアハウスでの日常が本作。映画では、「恋愛はしない」と宣言する榊さんといつしか大人の女性・榊さんに淡い想いを抱く直達くん、このふたりの心の動きが描かれている。

「恋愛はしない」と宣言する榊さんには理由があった。その過去(理由)を知った直達くんも「恋愛はしない」と誓う。そんな直達くんのことを榊さんは「幸せになってほしい」と願う。



『水は海に向かって流れる』の原作漫画を知らないワタシはタイトルをみたとき、『上善如水』(老子が書いたといわれる書「老子道徳経」からの言葉)が思いうかんだ。ソレとはちょっと違った。


高いところから広い海へと水は流れていく。雪解けした水が広い海へと自然と流れていくように、止まったわだかまりもいつかは雪解けのように解けるのだろうか。そして、広い海のように心を広くもって許せるときがくるのだろうか。

どんなにツラいことでも、どんなに許せないと思っていることでも、いつかは解けていくのだろうか。それが自然な心の動きなのだろうか。そんなことを考えさせられる作品でした。

感情をむき出しに怒る直達くん、海を眺める榊さんの横顔の美しさ。このふたつのシーンが好きです。

ひとは、自分ごとのように怒ってくれる相手を目の当たりするとジブンの怒りがバカバカしくなり許せてしまうことがある。と聞いたことがある。この作品には、『恋愛はしない』と心を閉じた榊さんのかわりに直達くんが感情むき出しに怒ってくれるシーンがあります。

榊さんの怒りはバカバカしいとはならなかった。許してしまうことはできなかった。けれど閉ざした心は雪解けをむかえ動きだす。直達くんのむき出しの感情で閉ざしていた心が開いていく榊さん、心を動かしていく榊さんの海を眺める横顔がうつくしく眩しい。



ワタシにも、16歳のときで心が止まっている榊さんのようにどうしても許せないことがある。きっと、この世の終わりをむかえるときまで許さない。榊さんのように、いつもいつもジブンのなかでフツフツしていることがある。バカバカしいとも思えないし、許すことなんてない。春の雪解けのようにフツフツしたものが解けて穏やかでいられるとしたら、それは解かしてくれているあたたかいおひさまの存在のおかげ。

おひさまって大切ですね。


『水は海に向かって流れる』この作品は、はつ恋の淡さ、人恋しさ、なにかを許したくなるような感情、そんな想いがこみ上げてくるハナシでした。


『上善水の如し』。勝手なワタシの解釈

水はカタチを変えていろんなところで存在する。水はいろんなことへ利をもたらす。水は当然のような存在と思われガチ。なくなってはじめて存在の大きさに気がつかされる。けれど、水はジブンを主張することなく静かに利をもたらす。当然のように。

存在を失ってからソノ大切さに気がつくことがある。今も昔もそうかもしれないけれど、最近はそんなことが大きく目につく。失ってからでないと大切なことに気がつかないなんて人間というイキモノは本当に脆いなぁ。

水は海に向かって流れる。高いところから低いところへ流れるのは当然なんだから、そんなに難しく考えるなよーーーって考えもアリなのかもしれないけれど。そんな当然の自然の動きには『おひさま』が必要。難しく考えなくていられるのはダレかやナニかの存在があるからかもしれない。


無意識で当然なことにはそうさせてくれている存在があるのだろうと、ソレにはなかなか気がつけない。


◻︎榊さんと直達くんがふたり並んで相合傘のシーンがあります。雨はいつも想っている片方をぬらし、想われている片方をぬらさない。ステキなやさしいひとときです。見出し画像は、あわいやさしい雨と涙雨を軽やかにしてくれるような画をえらびました

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