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独特な留学経験を通じて、私が伝えたいこと。

はじめまして。呼吸器内科医の 吉松 由貴(よしまつ ゆき)と申します。

2年ほど前、卒後11年目から英国へ留学しています。多くの模索を経て、周囲の方々の助けのおかげで今があるので、noteでお伝えしていくことにしました。留学にはいろいろな形があるなかで、こんな人もいるんだ、こんな方法もあるんだと、何かのきっかけになれば幸いです。
 

留学を目指した理由

私はずっと、医師として海を渡ることを目指してきました。中高生から大学生、研修医、専門医へと立場が変わるにつれて、形は変化してきているものの、自身が医師として学び、またその学びを還元する場は、日本に限定してとらえてはいませんでした。世界は広いこと、場所が変わると学べることは爆発的に広がること、そして自分が暮らし、頑張る舞台は今いる場所にとどまらないことを、感覚として持っていたのだという気がします。
 
その思いがあってか、中高生のころから、事あるごとに、交換留学などの機会を狙っていました。しかし、選考過程を進んでは、持病のアレルギーを理由に断られることを繰り返し、涙を呑んだのは一度や二度ではありませんでした。今思うに、「疾患のために食べたいものを食べられない悲しさ」だけでなく、この「食べられないことを理由に、社会参加が制限される得も言われぬ悔しさ」こそが、誤嚥性肺炎の診療をよくしたいと思う原動力になっているのです。しかしこのときは、自分の努力ではどうにもならない壁に、ただただ悔しさを募らせたのでした。
 

英国留学に至るまでの道のり

そこで大学生になるや否や、学業や部活の合間を縫って、短期留学を繰り返しました。語学留学、ホスピス研修、質的研究目的での訪問、交換留学、臨床研修、病院見学、学会参加など、形は様々です。緩和医療にとくに関心があり、より文化に根付いている欧米の専門家に出会うことで、診療や進路のあり方を模索しました。海外医療や留学に関する日本国内のワークショップにも参加し、海外旅行も繰り返しました。研修医になれば日本の診療を学ぶことに打ち込み、呼吸器内科を経て緩和医療を専門にしようと決めていたので、そう簡単には海外へ行けないことを覚悟し、必死になっていたのでした。
 
就職後は忙しい研修生活で海外へは行きづらいものの、夏季休暇を利用して国際学会や途上国でのボランティア活動に参加するなどして、なんとか海外の医療との接点を持つようにしていました。呼吸器内科を専攻し、緩和医療の視点が誤嚥性肺炎の診療にこそ必要であることを感じたことから、誤嚥性肺炎についてもっと学び、研究をしたいと思うようになりました。そこで研究成果を毎年のように国際学会に出させてもらったり、スペインの大学院にハイブリッドで通って嚥下障害の修士号を取得したりと、理解ある上司や同僚たちのおかげで、機会を見つけてはあちこちへ学びの場を求めていました。
 
そしてついに昨年より念願の英国へ場を移し、臨床研究フェローとして、英国の診療を学びながら誤嚥性肺炎の研究に従事しています。回り道をしているようでもあり、しかし振り返ると、それぞれの点と点が線で結ばれたような気がしています。そしてまた、今は孤立した「点」に感じられる研究や勉強も、いつか努力が実るとき、「線」そして「面」となることを、信じて突き進んでいるのです。
 

英国での現在の活動

現在はロンドンの大学と病院の両方に所属し、自由に行き来しています。普段は市中の救急病院の老年科や関連各科で診療を学びながら、誤嚥性肺炎に関する臨床研究を行ったり、若手医師や他職種の研究を一緒に行ったりしています。大学ではリハビリテーションや慢性疾患の部門に所属し、研究ミーティングに参加したり、互いの研究に協力しあったりしています。
 
臨床一筋の私にとって、研究中心の立場でもこうして臨床現場に入り浸りながら、自分自身のライフワークともいえる誤嚥性肺炎に関する学びや発信を続けさせてもらえている今の生活は、とてもしっくりきています。
 
 

noteで共有したいこと

順調そうに聞こえるかもしれませんが、ここまで決してトントン拍子に来たわけではありません。医局にも入っていなければ、英国につながりがあるわけでもなく、現地の医師資格を持っているわけでもありません。
 
医療従事者として留学する際の情報は未だに整備されているとは言えません。いま海外にいる人は紛れもなく、模索を重ねて、教えを乞うて、回り道をたくさんしています。留学に向けてどんな準備をしたらよいのか、履歴書の書き方やメールの送り方、ビザなど諸手続き、現地でどう地位を確立していくのか。不安や孤独を感じやすい過程です。そんな疑問にも私なりの経験やたどり着いた道をお伝えし、なるべく壁は小さく、みんなで乗り越えていければというのが私の思いです。
 
というのも、私が今ここにいるのは、導いてくださった方々のおかげにほかなりません。指導者として教え、励ましてくださった方だけではありません。これまで留学をされた先輩方、一緒に目指している同志たち、励ましてくれる同僚、そして快く送り出してくれる家族や友人のおかげでもあります。海を渡ると一層、感謝という言葉が身に沁みます。
 
私にとっては留学できたことがゴールではなく、今もこの先の歩み方を、模索し続けています。まだ旅の道中ではありますが、支えてくださる方々への心からの感謝を込めて、そして今まさに一歩を踏み出そうとしている皆さまへの応援歌として、このnoteを始めることにしました。
 
これまで、書籍やSNS(@yukiy0105)では、誤嚥性肺炎の診療に関して発信することが中心でしたが、留学という思い入れのあるテーマについてまとめる場を探していました。

これから留学をしたい、あるいは海外の学会に行ってみたい、という方からよく相談をされます。方法論で躓いて、せっかくの夢をあきらめてしまうことのないように。そんな仲間の相談に乗っている感覚で書いていければと思っています。
 
たとえばこんなことを、ご紹介していくことを考えています。
・医療従事者が留学する様々な形
 (交換留学、研修、見学、大学院、研究・・・)
・英語の勉強法
・ビザの申請や奨学金
・国際学会への参加や発表
・英国での医師資格取得
・英国の医療の現状
 

皆さまもご参加ください

こんなことを聞いてみたい、こんなことで悩んでいる、などぜひコメント欄を活用してください。なるべくお応えしたいと思います。
 
また、このnoteや私の書籍や連載でもイラストやデザインを手掛けてくれているのは、私の幼馴染で医療系イラストレーターの Yurika Hirano @eureeka_illust です。イラストのご相談などがあれば、気軽にメッセージを送ってみてください。

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