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「私は産まないからさ。」に返す言葉が見つからない

私の親しい友達の中には、子どもを産まないと決めている女性がいる。
彼女たちに妊娠の報告をしたとき、
「おめでとう。」と同時に、決まって言われた言葉があった。

「私は、やっぱり産まないからさ。」

子どもを産まないと決めていても、どこかに迷いはあるのかもしれない。
でも、それだけじゃない。そうじゃない。

「人として、女性として、生物として、
子どもを産むのが正しいあり方で、
子どもを産まないのは間違っている。
子どもを産まない人は、不完全である。」

子どもを産まないと思っていたかつての私にも、
子どもを産むかもしれないと思いつつ、まだ生を宿していなかった私にも、
しばしばその声の主は耳元で囁いて、姿を見せずに去っていった。

きっとこの声の主は、彼女たちの耳元でも囁き続けている。
彼女たちは、それを虚構と知っている。
でも、その声に向かって「言い訳」をせずにはいられないほどに、心が締めつけられるのだ。

産む選択をした私は、どう返せばいいのだろう。
「子どもを産むかどうかにかかわらず、あなたの生き方、すてきだと思う。」と言葉にしても、
おなかの中に新しい命がある以上、それこそ「言い訳」でしかなくて、
力なく空気に吸い込まれていくのは目に見えている。

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