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産前産後読んでよかった本5冊(ステレオタイプが少なかったり、信頼できたり、心に響いたり)

エビデンス・ベースな本が好き
母性神話はじめ、性別へのステレオタイプにとても懐疑的なほう
なので、読んでみてモヤる本にもけっこう出会った妊娠~産後期。

そのなかで、読んでよかった本5冊をまとめてみました。
はじめの3冊は主に実践面で、あとの2冊は気持ちのうえで、読んでよかったもの。

あとの2冊は、産後読んでよかったものではあるものの、出産しない世界線の私も大好きだろうなと思う本です。

米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト

妊娠、出産関係のブログで、「タイトルや帯は、なんかちょっと……というかんじなんだけど……」という言葉とともに、よく紹介されていた本。笑

原題は、「Cribsheet: A Data-Driven Guide to Better, More Relaxed Parenting, from Birth to Preschool」。
Cribsheetは、カンニングペーパーという意味とcrib=ベビーベッドをおそらくかけていて、邦題考えるの難しかっただろうなぁと思います。

この本の魅力は、サブタイトルどおり、「より良く、よりリラックスした子育てを、データドリブンでガイドする」というところ。

子育て本や動画をを見始めて感じたのが、胡散臭い情報に溢れた界隈だなということでした。
著者や発信者の主観と、信頼性はどうなのだろうかという実験のエビデンスが、まぜてそれっぽく語られていることが、本当に多い。

この本では、諸説ある育児のこうすべき論について、論文を参照しながら、これは本当っぽい、これはエビデンスとされる実験のサンプル数が少なすぎるなど、冷静に紹介しています。

一方で、研究者で母である著者の個人の経験も、フランクに書かれています。
目の前の子供との関わりや様々な情報に、混乱したり、本当に~?とモヤついたからこそ、研究者としてのプロフェッショナリズムを活用して、「より良く、よりリラックスした子育て」を提案する著者の姿勢も、いいなと思います。


わが子ちゃん

『アラサーちゃん』の著者、峰なゆかさんが妊娠、出産、子育てを描いたエッセイ漫画。
つわりからはじまり、お腹の赤ちゃんは大丈夫なのだろうかと日々不安になる気持ちや、妊婦の身体ってこんなになるの!?という驚きまで、コミカルに、シニカルに、赤裸々に、苦しいことも、しんみりせずに描かれています。

ネット上に、赤裸々系妊娠漫画はたくさんあるけど、やっぱりヒット作をだしているプロだから?一番面白く、共感できました。
私はつわりって大変なんだよと夫に伝えるため、夫にも読んでもらいました。笑

日本の伝統的な家父長制、母は強く優しく我慢すべしな母性神話を、ちょくちょくばっさり切る話があるのも、好きです。


ママたちが非常事態!?: 最新科学で読み解くニッポンの子育て

ベトナムで、親&赤ちゃんの集まる場というありがたすぎる場を主催してくださっていた先輩お母さんに、もらった本。

話題になったNHKスペシャルの書籍化で、日本社会の「母の辛さ」を科学的な見地から取材しています。

個人的に心躍ったのは、カメルーンのバカ族に、現地まで行って、研究者の人とともに取材に行っているところ。さすがNHK。
(大学時代、アフリカ地域研究ゼミに所属していて、カメルーンに行ったときに、家族観の違いにカルチャーショックを受けたので)

核家族で、一人で親業を担うことが多く、しかも母になるまで親業をしたことがない人の多い、今の日本女性。
子供から大人まで、母乳までもシェアしながら、皆で子育てをし、さらに子供の頃から子育てに慣れているバカ族の女性達。

この対比が印象的で、自分が母になる前に赤ちゃんと交流した経験を思い出したり、人に頼りまくったりと、ちょっとバカ族を意識しながら子育てをしています。


(後半にでてくる男脳・女脳の話は、個人的には実験含め少し疑問なのと、執筆者プロフィールの順番が、メイン企画者で本の中でも熱く語っている、母当事者の女性ではなく、先輩の男性プロデューサーが先なのに少しモヤ)


ははがうまれる

子どもが産まれる気配はまったくなかった、6年ほど前に読んでいた大学時代の恩師の著書。

そのときから大好きで、妊娠中も子どもが産まれたら、あらためて読もうと決めていた1冊。
紙の書籍は日本においてきてしまったので、キンドルであらためて購入しました。エッセイ集なのだけど、どれも好きで、キンドルはハイライトだらけです。

だからこそ、逆に端的な紹介が難しいのですが。
タイトルの「はは」が漢字ではないことともつながる部分が、特に心に残っているので引用します。

学生に言う。私も昔は子どもが嫌いだったんだよ。でも産んでみるとおもしろい。一つの生命体が自分と別個に存在するの。それがどんどん変化していくの。大丈夫。好奇心で産んでもいいの。おもしろがって一緒にいればいいの。そしたら赤ん坊は応えてくれる。赤ん坊の反応にまたあなたが応えれば、愛着がわいてくる。大変だけど楽しいよ。周りにサポートがあって、心身の余裕が保てていたらね。

『ははがうまれる』「高い出産率」

小さく無防備で、だからこそ信頼して周囲に身を預ける赤ん坊。可能性をいっぱい詰め込んだその存在を、生かすも殺すも自分の手にかかっている。そんな立場におかれたら、母じゃなくても、父でもママ母でもババでもジジでも、赤の他人でも、「母性愛」は引き出され育まれる。子どもはそんな力を持っている。日本は母性愛進行が強い。でも母性愛は育てる中で育まれるものなのだ。母性本能も、育てる中で活性化されるものなのだ。

『ははがうまれる』「高い出産率」


特別子ども好きというわけではないけれど、子どもがいるという状態には関心があって、エビデンスベースの本を一生懸命読んでいる私。
(産後、病室で本の引用をやたらしゃべりながら新生児対応しているので、夫は「この人、母性あるのかな」とちょっと思ったと、あとで言っていた)

もともと子ども好きで、新生児期から「母乳あっていいな」と言うくらいお世話に熱心で、泣き声にすぐ起き、母性的なものに溢れているように見えた夫。


そんな状態だったので、この引用部分はとてもしっくりきて、
なにより「好奇心で産んでもいいの。おもしろがって一緒にいればいいの。そしたら赤ん坊は応えてくれる。赤ん坊の反応にまたあなたが応えれば、愛着がわいてくる。」という言葉に、ほっとしたのでした。

実際、おもしろがって一緒にいると、赤ん坊はたしかに応えてくれ、とても可愛く、しかも日に日に可愛くなってきています。

本のなかでは、産まれる前後だけではなく、保育園に行ったり、もっと大きくなった子どもたちとの話もでてきます。
会話をできるようになったら、動きまわるようになったら、将来の選択を見守る段階になったら。

まだ私の子どもは赤ん坊だけれど、子どもが成長するなかで、何度も読み返したいと思っています。


夏物語

産後2ヶ月くらいのとき、夜間授乳の合間に一気読みした1冊。

風景や思い出の色、登場人物の空気感、現実的で誰しもにありそうな寂しさと謎、ありえるかもしれない幸せ。
そして、「産む」ということに対して、多層的な問いかけを繰り返しされているような気持ちになるテーマ性。

文学の力を最大限発揮するとこういうことができるのか……という一冊です。

赤ちゃんキャラが「お母さん、ありがとう」「お母さん、大好き」と言う、母親向け情報サイトになんだかなぁと思いつつ、言葉にしようとすると、陳腐で暴力的になるかんじがするなと思っていた矢先だったので、なおさら響きました。

文学だからこそ表現できる複雑さや美しさが魅力で、それをまだうまく言語化できていないので……上野千鶴子さんの推薦文を引用しておきます。

生まれることに自己決定はない。だが産むことには自己決定がある。この目も眩むような非対称を、
どうやって埋めればよいのか? 母になる女たちは、この暗渠をどうやって越したのか? どうすれば、そんな無謀で勝手な選択ができるのか? 作者は、「産むこと」の自己決定とは何か? という、怖ろしい問い、だが、これまでほとんどの産んだ者たちがスルーしてきた問いに、正面から立ち向かう。

上野千鶴子(「文藝」秋季号)


▼ホーチミンでの妊娠・出産の日々


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